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好きが薄っぺらい

空っぽになった心をどこかの誰かが手繰り寄せては
そっと口付けをした。

誰かが云う、私への愛の言葉は、
私にとってはあまりにも薄っぺらいものであった。

好き」という言葉は呪いだ。

そのセリフを吐かれるたびに、私は複雑な気持ちを抱いていた。
本当に、受け取り難い言葉だ、とつくづく思った。

受け取ってしまったのならば、それに値する受け答えをしなければならなかった。
だからこそ、受け取り難かったし、受け取りたくなかった。

私が出した返答により、その人との仲が裂けてしまうのなら、
より一層、辛いものだった。

想いを伝えた側は、その想いが相手に届かなかった時、自滅する。
でもその感傷に浸っては人に慰められ、時間により傷は癒える。

想いを伝えられた側は、予期せぬ出来事に困惑し、悩む。
そして、その想いに応えられなかったとき、
一人の友達を失ってしまうに等しいのだ。
心にポッカリと穴が空いたようなそんな感覚であった。

想いを伝えた側はずるいな、と心底思うし、恨めしい。

あなたが想いを伝えなかったら、
今でも私たちは仲の良い友達でいられたし、
日々楽しい会話を繰り広げていただろうに、
それを一種の感情によって、
崩れてしまうだなんて、あまりにも悲しすぎる。


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「あなたの気持ちにこたえられなくてごめんね。」

「でも、私は、友達でいたかったよ。」
「友達で…いられると思ってた。」

(「やっと、男女の友情は成立するって思えたのに。」)

「・・・・・」

「好きにさせて、ごめん。」

「もう、私からは、連絡しないね。」

相手からの好意を知ってしまった以上、
これ以上、私から連絡なんてできるはずもなかった。

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皆が言う、私への「好き」と言う感情やその理由は、
いつも似たようなカタチをしていた。

嗚呼、またこの手のパターンか。」と
今まで何度思ったことだろう。

その度に私だって、
私だって………って。

毎度のことながらに少しばかりは傷付いて、
でも知らないフリをして、
驚いた顔をして「ありがとう。」って言うんだよ。

そしていつも返答に困るんだよ。

君は知らないだろうね。

私の気持ちも。
苦労も、心の傷も。

全部あなたのような人のせいなのに。


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