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『転生しても憑いてきます』#11

 時計のチクタクしか音がしないほど沈黙の時間が続いたが、ビーラが「なるほどな」と腕を組んだ。
「つまり、お前には前世に禁じられた物に手を出したせいで呪われて、その呪いが転生しても続いているっていう事なんだな?」
 この質問に僕はコクンと頷いた。
 僕の返しにビーラは納得した様子で何度も頷いていた。
「呪いの解除の魔法とかはしたのか?」
「いえ……でも、その幽霊と戦った事はあります」
「幽霊と?……それで?」
「基礎的な魔法は試してみましたが、駄目でした」
「そりゃそうだろ。倒せるのはせいぜい雑魚モンスターぐらいだよ」
 ビーラは頭を掻きむしった。
「もしお前がかかっているのが、ゴースト系の魔物に取り憑かれる呪いならば、白魔術師に頼むしかないな」
「白魔術師?」
 初めて聞いた言葉だった。
 家庭教師にも教えてもらえなかったし、本にもその単語が載っていなかった。
 ビーラは僕がキョトンとした顔をして、少し困惑した様子で、「もしかして白魔術師を知らないのか?」と聞いてきた。
 僕が教科書にも書物にも無いことを伝えると、ビーラは「この国には存在しないのか……」と独り言のように呟いた後、僕の方を見て教えてくれた。
「白魔術師というのは、光魔法しか使えない魔法使いの事だ。
 呪いを祓ったり、魔物を追い払ったり、身体の傷を回復させたり――まぁ、聖職者に近いな」
 なるほど。
 白魔術師になれば、もしかしたらアイツを追い払えるかもしれない。
 やっぱり、光魔法が大事なんだな。
「じゃあ、ランタンドル学園に行けば、アイツを倒せる事ができますか?」
 僕が期待を込めた眼差しを向けながら尋ねると、ビーラは「学園……あぁ、そうかもな」とややぶっきらぼうに返していた。
 それよりもとビーラは話し出した。
「アタシの知り合いに呪いに詳しい人がいるんだけど、会ってみないか?」
 この提案に僕は開いた口がふさがらなかった。
 まさか呪いの専門家がいるとは――もし会って事情を話せば、アイツを倒せる方法が見つかるかもしれない。
「ぜひ! お願いします!」
 僕が何度も頭を下げてお願いすると、ビーラは「分かった。明日、転移魔法で連れてってやる」と僕の頭を撫でた。
 そのまま就寝の挨拶をして、眠りについた。
 だけど、僕の眼はギンギンだった。
 九年ぐらいにまで及んだアイツからの呪縛が解き放たれるかもしれないと思うと、楽しみ過ぎてしょうがないのだ。
 アイツさえいなくなれば、僕は自由に行動できるし、気持ちが軽くなる。
(あぁ、明日が待ち遠しいなぁ)
 そう思っていると、不気味な視線を感じた。
 起き上がるとアイツが見ていた。
 いつにも増してうめき声が大きくなっているような気がした。
(ふん、お前とはもうこれでさらばだ)
 僕は舌を出してアイツを嘲笑すると、スカッとしたからか、気が緩んで眠たくなった。
 そして、そのまま眠りについた。

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