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2024年4月の記事一覧

東北三詩人試論

東北三詩人試論

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宮沢賢治、高村光太郎、石川啄木の三文士を東北三詩人と呼ぶことにする。三人ともに東北に縁があるからだ。以下はこれら三詩人の詩歌作品に対する断片的試論だ。矛盾もあろう、曖昧さもあろう、飛躍もあろう、行きつ戻りつもあろうが、それらをスパイスとして楽しんでいただければ幸いだ。

1.ヴ・ナロード
広義では、賢治も光太郎も啄木もヴ・ナロードの徒だった。狭義では、ヴ・ナロードとは、19世紀後半のロシアの

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それからの短歌

それからの短歌

…『若き日の歌』に続く短歌群です。

・学生時代

珈琲の水面に揺らぐ
 我が瞳
語らば語れ熱き悲しみ

書を閉じて震える影にやかん鳴る
 下宿屋の夜に
 吐く息白し

啄木の如くなりたし
啄木の歌となりたし
 暗き一夜は

バイト明け
 疲れた体ひきずって
 あいつは今日も雀荘にいく

 我が脳に
弾けて痛し女の声
真昼の町を高らかに過ぐ

好きという
ただ一言をいうがため
 朝の四時まで費やし

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通わぬ道に(ワーズワース)

ワーズワースの"She Dwelt among the Untrodden Ways"という有名な作品。わびさびの心情が光る。目立たない娘で、人知れず亡くなっている。どこにも華やかな要素がない。まさしくわびさび。

恋は病いよ

サミュエル・ダニエルのLove is a Sicknessという作品。16世紀後半から17世紀初頭のイギリスに生きた。英語固有の押韻を擁護したらしいが、詳しくは知らない。評者によると、内容は凡庸だが表現は流麗とのこと。

女に

かわいい娘、愚行に屈し
知るも手遅れ、裏切られたと
どんなまじない、憂いを解くか、
どんな技なら、罪払うのか?

罪を浄める唯一の手は
世間の目から恥隠すのは
奴を悔やませ、良心を衝く
唯一の手は、死ぬことなのです。

オリバー・ゴールドスミスという詩人の「女に (Stanzas on Woman)」という詩。若い娘さんがろくでもない男に騙され、不倫でもしてしまったのだろうか、罪を得て世間から非難

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