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2022年6月の記事一覧

無常の審美性と倫理性

無常の審美性と倫理性

「ゆく河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」で始まる「方丈記」は、滅びに力点を置く無常を描く。作者はそこに美を見出していて、だからこの無常描写は文学作品となる。これは「審美的無常観」である。

「祇園精舎の鐘の声、諸行事の響きあり」からの「平家物語」も無常の文学だ。しかし「おごれる人も久しからず」とあるので、この作品は審美的であると同時に倫理的でもある。無常描写を通して「人間は驕ってはならぬ

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事物は生成すると成長しては衰退し消滅する

事物は生成すると成長しては衰退し消滅する

無常とは「事物は生成し変化し消滅する」という在り方をいう。そして変化には「成長と衰退」があるので、先ほどの言葉を言い換えるならば、「事物は生成すると成長しては衰退し消滅する」となる。生成と成長に着目するのが儒家であり、衰退と消滅に力点を置くのが仏家である。いずれのみでも偏りそうである。

無常は普遍的現象である。この世には無常ならざるものなんぞないのである。ゆえに、無常の観念は古今東西を問わずに多

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