心地いい、お風呂でのボティケアの模索・後編
前回の続きです。
【前回までのあらすじ】
時折発作のように「ボディケアせな! お風呂時間の充実がいい女への近道!」という焦燥に駆られ、ボディケアアイテムを色々買ってみるものの、継続できない女、それがわたくし。
作業項目の増加が云々と言い訳してみるも、そもそも「なんでいい女はボディケアしないといけないと思ってんの?」という元も子もない疑問にぶち当たり、今一度、いい女とボディケアについて考えてみることとなる。
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私は一体いつ、ボディケアという概念を獲得したのだろう。
特別肌が弱いわけでもないので(ありがたい)、何もしなかったら「あぁなんだか踵がカサカサしているねぇ」とか、「妙に腰のあたりがザラッとしているじゃあないか」とか、気にはなるけど生きる上では障りはない程度だ。誰かから「やりなさい」と指示されたわけではない。
だからここは、私の中でボディケアと強く紐付いている「いい女」について先に考えたいと思う。
私にとっての「いい女」原体験は、映画や漫画の中の美しい女の子達だった。
思春期から20代前半、特に高校では部活に入らなかったので、私は一人で映画(特にミニシアター系)や海外アニメ鑑賞、漫画を読むことに明け暮れていた。
(『ラン・ローラ・ラン』、『バッファロー’66』、大学に入ってからはもちろん『アメリ』などなど…。そして矢沢あいや楠本まきの漫画! 歳がだいたいバレるね!)
物語に登場する女の子たちは、貧しかったり裕福だったり普通の子だったり様々だが、とにかくとびきり美しく、魅力的で、時に蠱惑的であった。地味で高校時代はお化粧もほとんどしていなかった私は、彼女達の圧倒的な存在にクラクラしながら
「あぁ、私もこんなふうに魅力的になりたい…!」
と強い憧れを抱いた。そりゃ創作だから美しくて当たり前でしょ、と突っ込まれるかもしれないが、中学生までの私は主にドラえもんとゲームと音楽(たまに怪獣)で構成されており、なおさら「美しさを遺憾なく発揮する」ことに馴染みも免疫もなかったので、世界観が変わる勢いで衝撃を受けたのだ。
しかし、彼女たちのように美しくなる方法がわからない。友達も少なく、インターネットによる情報収集も今ほど身近ではなかった2000年代初頭。私は具体的な美容の How To を、主に雑誌から得ていた。
もちろん雑誌には、ボディケアはもとよりスキンケア、メイク情報もたくさん載ってる。だけどその中でも私が強く惹かれたのは、ボディケア特集だった。雑誌に乗るようなボディケアアイテムは、紙面で映えるように美しいものが多い。美しい佇まいのボディケアアイテムは、私が憧れた映画や漫画の女性たちの部屋に、恋人の家に、置いてあって然るべきもののように思えた。
あの美しいものを使えば、自分も美しい世界の一部になれるのではないか?
いい女=美しいボディケアアイテムを使ってる=それを使えばいい女になれる!
私の中で、かように単純な方程式が爆誕した。
元々オタク気質ということもあり、バイトが許されるようになってからは稼いだお金を美容に注いだ。メイク道具や美容院代にも使ったけど、購入して一番テンションが上がるのはボディケア用品だった。周りからも「きれいになったね」と言われるようになったし、わかりやすく肌がすべすべになったり水々しくなるのは、楽しかった。
しかし前回書いたように、私は基本的にズボラである。新しいアイテムに対して新鮮な気持ちで盛り上がっているときはいいものの、ケアを習慣化するのはなかなか努力を必要とした。
最初はワクワクしながら使っていたアイテムの存在が、徐々に「これをやらないとまたガサガサになっちゃう」「美しくなくなってしまう」「せっかく買ったんだから」という脅迫になってくる。苦しくなって、ある時から急に手に取ることすら嫌になる。そして、そのまま使わなくなる。
「それなりのお金を出したのに、自分のズボラさでお金も資源もムダにしてしまった…」
しばらくは反省して、ボディケアアイテムの新規購入は控えるのだけど、また素敵なものを見つけては
「お風呂時間の充実こそが(前回冒頭参照以下略)」
この繰り返しである。
この頃の私は、映画や漫画に登場する美女という漠然とした「いい女」に憧れるものの、憧れの「いい女」を、現実に落とし込めていなかったのだ。
勉強で例えるならば、自分にとっての「良い学校」とは偏差値が高い学校なのか、もしくは自分がやりたいことができる学校なのか。それもわかってないけど、とりあえず良い学校には入りたい。自分の得意/苦手科目もわかってないけど、評判の良い参考書読んで問題集を解いてるいれば、良い学校に入れるのでは? でも志望校の傾向と対策も考えてないから、やる気が続かないし、模試の成績もぱっとしない…といった感じだろうか。
そりゃ続かないし、なにを目指してるのかわからなくなるよ!
この不毛なループに、30歳直前になってやっと気付いた。
当時の私は恋愛も仕事も、特別大きなものを求めてるわけじゃない(と自分では思っている)のに全然ぱっとしなくて、どうしたら他人に選んでもらえるのか、考えあぐねていた。
自己啓発書も読んだし資格の勉強をしたし恋愛テクニック的なものも調べた。だけどなんだか噛み合わないし、面白くもない。成果も思ったほど出ない。それでも無理して、疲れ切って、最終的に
「人間どうせ灰になるんだから、もうどうでもいいや。誰にも選ばれない人生ならば、自分の好きなようにやろう」
とすべてを諦めた。(急かつ雑)
自己啓発本も過剰なコスメも男ウケが良さそうな服も、そして使ってないボディケアアイテムも全部手放した。憧れの「いい女」になるためではなく、自分には最低限何が必要なのか、何が好きで心地よいのか、徹底的に見直した。
見直した結果、やっぱり自分の身体がつるつるだったりすべすべだったりすると嬉しいし、自分が美しいと思うもの、かわいいものがドレッサーやキャビネットに並んでいると、とても幸せなのだ。
お風呂上がりに「つるつるになったー」と身体を自分でなでてみたり、「今日は我ながら透明感があって、頬もほんのり上気したようになっているなあ!」と鏡を見て思うのは、とても嬉しくて楽しい。
でもそのために、新しいボディケアアイテムや口コミを必死にチェックしたり、不相応に高級なものを使ったり、一刻も早く寝たい日に「ボディケアしなければ…」と無理をするのは、なんか違う。
他者や社会から見た自分の価値を高めるためでもない。ほかならぬ私自身が自分をいい女だと感じるために、ボディケアをする。そして自分が美しいと思うものを厳選して集める。めんどうだと思うことはやらない。ゆるく続けられる方法で、そして続かなくても自分を責めない。
この塩梅が、今の私にとっての「心地いいボディケア」であり、「いい女」である。
というわけで、今使っているものや方法は、わりと1つ1つに思い入れと愛情を持っている。ついでに紹介しようと思ったら、愛ゆえに膨大な文章量になってしまいそうだったので、今後ぽつぽつ思いついたときに、美容以外の話題もはさみつつ紹介できたらと思います。
とにかく、ゆるゆる続けるボディケアは楽しい!
毎日完璧じゃなくても、自分の美しさを自分で見いだせる人は美しい!(私は身体も性自認も女なので、記事では便宜上「いい女」と書いているけれど、これは男女関係ないことだと思う!)
思考錯誤した結果、たどり着いた結論は今のところそんな感じです。