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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

2022年映画・個人的ベスト5&ワースト5の話

2022年も残り僅かとなりましたが如何お過ごしでしょうか。
今年は前数年と比べて各種コロナ関連が緩和され、気軽に映画館に行ける時間がかなり戻ったように思います。

そんな中、今年観た映画達の中からお気に入り&好きになれなかったものの話をして一年を締めくくろうと思います。

「ネガティブな感想を書く必要あるのか?」と思われる方(並びに、もし自分のお気に入り作品がネガティブな事を言われてたら嫌だなと感じる方)はこの時点で記事を読むのをやめることをおすすめします。

私のスタンスとして
・芸術鑑賞において、好きも嫌いも同等に大切な感想である事
・好き、嫌いどちらも、その作品に出会えたからこそ持てた心の動きである事
・上記二つの感情は(特定個人の人格否定や誹謗中傷でなくきちんと作品批判の上で)すべての人間が各自の感性で持っていい自由である事
があります。
この考え方が合わないなって人も回れ右が吉。

タイトルに“個人的”と書いたのも、あくまで私が観た範囲の作品において、という事なのでそこはご注意下さい。
(ちなみに恋愛・国内コメディ・新海誠監督作品・TVアニメの映画版等は観ないので、某戸締まりや某ワンピが無いのは単純に観てないからです)。

あと、サブスクではなく、公開期間に映画館に行き映画料金を支払って観た作品に限定しています(大好きな『呪詛』が入ってないのはこのため)。

つまり「私が今年映画館に足を運び、正規料金を支払って鑑賞したもののうち良かったものと気に入らなかったもの」というクソ狭な番付なので、先に上げた注意含めそれを了承の上でご覧ください。
(尚、「それがワーストかよ!俺的にはベストなんだが!」という人がいても全然いいし、その面白さが映画鑑賞の醍醐味なので。異なる意見は攻撃でも誰かの否定でも何でもないよ、それが面白さです)

それぞれの内容に軽く触れた感想も書くので、ネタバレ注意!

ではベスト5から行きましょう。

第五位『ブラック・フォン』
サイコ殺人鬼スリラーに、ホラー、子供の成長や友情といったジュブナイルを精巧に盛り込んだ黒い幕の内弁当のような傑作。
難解さもなく分かりやすいストーリーも魅力的。
犠牲となった個性豊かな子供達のゴーストが見せる無念や感情といった「ホラー要素」、主人公の少年との交流「友情要素であり修行や作戦パート」が、地下室からの脱出という挑戦を大いに盛り上げる。
並行して描かれる主人公の妹との絆、最終的に父親が己を改めたであろう描写も良かったし、殺人鬼にヘンに“悲しい過去や謎を持つ可哀想なヤツなんです~”という要素を盛らなかったのも、主人公の脱出劇に集中して観られる良さ。
密室の暗闇シーンが多いのに見づらさがなく、照明やカメラアングルにもストレスが無かった。

第四位『紅い服の少女』
台湾ホラーブームの火付け役とされる記念碑的な映画をスクリーンで観ることができたのは本当に嬉しい経験。
私のお気に入りポイントは、伝説の妖怪的な存在を大真面目に現代ホラーの中にしっかり恐怖として描く、という、日本ホラーが最近走りがちな“都市伝説茶化し”みたいな、観る人がガチでは怖くないと解ってて作り、チープな題材とB級感と演者人気で話題性狙う、的な観客ナメが一切感じられなかった所。
正々堂々都市伝説と妖怪をやってる。
大真面目にこんなに怖く妖怪映画を作れるのか!というシンプルな感嘆。CGに古さを感じるが、それも全くマイナスには感じられなかった。

第三位『マッドゴッド』
ストーリーなど無い!と言わんばかりに地獄描写乱発で突き進む暗黒ストップモーション。
混沌として、しかし何かを憶測させる描写を散りばめながら、そこには救いも美辞麗句も無い。
“徹底された映像世界を楽しむ”という作品としては、ファンタジックな作品の中に現実の社会問題への主張をひけらかした『アバターWoW』より遥かに上だと思えた。
間違いなくフィル・ティペットにしか作れない世界。醜悪でグロテスクな暴力に満ちたキャラクター達にもどこか愛嬌やかっこ良さがあり、愛着が持てる。唯一無二。

第二位『死刑にいたる病』
近年の邦画最強にして最狂。
サイコパスというものが一般に認知されて久しい(『黒い家』あたりからかなと感じている)が、本作の連続殺人犯・大和は阿部サダヲさんの怪演により忘れられないキャラクターとなった。
大和は社交性が高く魅力的なタイプのサイコパス、に分類されるのだが、
“人として魅力的な反面、残忍な殺人犯”
という「二面性・意外な一面」ではなく
“人として魅力的なのと、人間離れした残忍さ”
が「一体のもの」である
というような質感が物凄く伝わる。上手く表せないけれど。
あまりにも残虐な殺害手口、楽しそうにばらまかれているキレイな花吹雪のようなものが実は……とか、面会室の仕切りに映る顔の演出等、かなり記憶にこびりつく名作だった。
(因みに配信系作品の中ではこの監督の『仮面ライダーBLACK SUN』はワーストオブワーストだったのだけど、監督云々ではなく作品それぞれを見ればこそ、素直にこの結果)
『羊たちの沈黙』に並ぶお気に入りサイコパススリラーができた。

第一位『女神の継承』
よくぞここまで……!と唸る程の嫌悪と恐怖はホラー映画屈指。
「嫌悪」だけ、「恐怖」だけ、なら他にいくらでもネジの外れた作品はあるが、「嫌悪による恐怖」を味わわせるこの感じはアジアンホラーのセンスなのだろうか。
暴言や暴力、止まらない経血、貞操観念の欠落、部屋に隠されて放置された生理用品や使用済み避妊具(と思われるもの)、所構わぬ排泄、赤子や犬を喰う……等の描写を「悪趣味な嫌がらせ演出」としての色物ジャンク表現ではなく「取り憑かれた事で起きている獣性」として描ききった雰囲気と、説明くさく注目させない(映り込ませるだけ等)演出、俳優さんの演技は凄まじいものがあった。
狂乱の儀式から地獄、そしてあのラストシーン。
ホラー映画の映像体験としては最高。


続いてワースト5。
嫌な箇所を上げるだけでは1900円と時間を使った自分が悲しいので、いい所も書いておきますね……

ワースト5『カラダ探し』
暗闇メインの物語なのに暗闇シーンが見づらい。
無限ループをいいことに怪異をナメだす主人公達。幽霊的なものに、終わらないゲームと殺戮の繰り返しに囚われているのに
「どうせ毎晩殺されても終わらせるまで生き返るし!」
みたいに、海に行きはしゃぐ(役者アイドルファン向けシーン)。
無限ループのせいで怪異ナメだと『ハッピー・デス・デイ』が思い出されるが、あの作品ほどおかしみを含めて消化してるでもなく、ただ怪異ナメで青春を行う。全く怖くない、若者のおふざけと青春を観る役者ファン向け映画。
“「IT」のワーナーブラザーズが”といった、配給の威の借り方も謎。

良かった所……容赦ないゴア表現には驚き。ただし画面の暗さの見にくさのせいで“何かよく見えないけど酷い事になってる”止まり。

ワースト4『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』
夢の世界の雰囲気に浸りたくてディズ○ーシーに行って楽しんでたらアトラクションスタッフに
「君は日本人やろ?このクジラのキャラ殺しそうやなw」
といきなりの悪口を言われた気分。

空想世界の話する時でも現実の社会問題やイデオロギーを盛り込むことが大切、という考え方は私には合わない。
よくいるじゃん、久々に会って楽しく盛り上がれる同窓会に、わざわざ思想強めのプリントされたTシャツで来るヤツみたいな。
好きあらば思想主張!場を問わず常に大声で発信してこそ思想戦士だ!みたいな意識の高さは、人としても、(思想テーマの作品ではない)芸術においてもかなり距離をとってしまう。

あと、
「俺らがここにいたらこの村に迷惑がかかる……よし、海の部族の村に受け入れてもらおう」
はどうなの?海の部族の村に迷惑かかるとは思わないの?
海の部族が鋼鉄の皮膚持ってるとか不死身とかでないと成り立たない理屈に思えるけども。

良かった所……映像と世界観を構築する技術は、5年先を行ってるんじゃないかってくらい素晴らしい。作品世界の広がりを期待させる次世代の新キャラクターも魅力がある。

ワースト3『貞子DX』
怖くないのは勿論として“連続ドラマの味付けで毎週観るからジワジワ癖になる堤幸彦的な笑い”を、映画の尺、しかもホラー映画に詰め込まれて完全な胸焼け。
『リング』も『TRICK』も好きだっただけに、貞子で堤幸彦イズム丸借りの木村監督による「奇人変人夫婦漫才」をやられて私はとても嫌。木村監督はコメディ刑事モノとか作ったら絶対に面白そうなのにな。
宣伝や近年の貞子のメディア展開からして、最初から怖がらせる気がないですよ~みたいな“逃げ道”があるのをいい事に、貞子がホラーでない、という不満意見を言わせない感じも好きじゃない。

良かった所……呪い回避の推理に終始する、という展開は素直なくらい『リング』の踏襲。

ワースト2『“それ”がいる森』
もはや怖くないから文句を言うとか、中田監督なのにお化けじゃなく宇宙人だから思ってたのと違うとかじゃないんだよ。
ミュージカルでもやらない説明台詞と、整合性以前に明らかにおかしい脚本で、娯楽として楽しむことも出来ない。
人が行方不明→熊に喰われたのかも→熊を狩猟しました→腹の中に人の痕跡なし→「熊の仕業じゃなかった!!ガクブル」
いや熊って一匹しかいないのかよ、そこは普通「他の熊の可能性がある」だろうが!

明らかなUFOを見た子供が
「自衛隊の秘密兵器かな!?」
いや子供がそんなこと言う?あー、シンゴジの特撮のない世界みたく、UFOって概念のない世界なのね!→こひさんのUFOマニア登場
全てにおいて、集中して観る事を許さない粗。感情移入も応援もできない嫌な子供キャラ含め、映画に愛着を持って入ろうとする観客ほど拒否してくる最悪の作り。

良かった所……今この時代に宇宙人は逆に面白くて良い。子供向けとして『天才てれびくん』あたりで放送すれば間違いなく後世に語られる伝説のトラウマ作品になってた。

ワースト1『大怪獣のあとしまつ』
2月から、Jホラー好きの私がJホラーに失望し続ける度重なるショックを味わいながらも尚、不動のワースト1を守り抜いたブレないワースト。こんなことある!?
“人の嫌がる事をわざとしたり、ウンコチンコ言って、ウケると思ってる小学生の男子”
みたいな作品。

良かった所……怪獣の造形はひねりがなくてまあ好き。
あと、この作品が残念だったという愚痴を各所でこぼしてたら『怪獣8号』という面白い漫画を何人もの人にすすめられました。感謝。


……という感じです。
まあ、“なんか味のよくわからないドロッとしたスープ飲まされたけど、具のどれか噛んだら強烈な味がしたり、健康にいい成分か毒の成分かが入ってるんだろ~な~”みたいなA24系はベストにもワーストにも触れない、もはや普遍的な“アート枠の雰囲気作品”ジャンルって事で。

来年もたくさんの映画に出会えるといいな。
面白いも、面白くないも、1900円と二時間をかけて味わった心の経験なので。
すすめたり愚痴ったり、存分に受け止めていきましょう。面白くない映像体験も私にとっては無駄なものではなく、感想を伝える・良かった所を探す、みたいな供養になるのは一つの楽しみだし、それで人と感想を話せたらもっと楽しい。

そんなわけで、また来年もよろしくお願いします。
エスターとテリファーとパールに早く逢いたいぜ!!








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