留守番電話のメッセージ

ある朝、スマホを見ると一件の不在着信と留守番電話の通知が表示されていた。
常に音が鳴る設定で、これまで寝ていたとしても着信音に気づいて出ると言うのに、この時は疲れていたのか着信にまるで気づかなかった。
着信履歴を見るとそれは夜中の二時過ぎにかかってきた、”発信者不明”の番号からだった。

【一件の留守番電話があります】

 誰だろうか。
私は何の疑いもなく、その留守番電話を再生した。

 
……ﾄｩﾙﾙﾙﾙ……。

短い呼び出し音の後、無機質な女性の声でアナウンスが流れると、その留守番電話のメッセージが再生された。

 

キャアアアアアアアアアアアアアア！！！

 

少しの沈黙の後、突如聞こえたのは耳が裂けそうなほどの女性の悲鳴だった。
思わず、私は耳からスマホを遠ざけた。
すると、電話の向こうで”ドスッ”という鈍い音が聞こえた。
同時に女性の悲鳴が消えた。

私は怖くなり、そこで留守番電話の再生を止めた。
私の心臓の鼓動は、動揺して激しく高鳴っていた。
あの悲鳴と音を聞けば、どんな状況なのかは見なくても想像ができた。

 ただ職場では誰一人として欠けておらず、家族や友人もみな元気そうだった。
特定しようにも発信者不明で番号はわからず、私にはどうすることもできなかった。
もう一度聞く気にはなれず、私はその留守番電話のメッセージをそっと削除した。

数日後、また深夜に一件の発信者不明の不在着信と留守番電話が入っていた。

恐る恐る再生すると、声も周囲の音すらも聞こえないまま時間だけが過ぎていった。
私はイタズラだと思った。
けれど録音時間の終わり際、ほんのわずか音が聞こえて切れた。

 私はその音が気になり、今度は音量を最大にして再生した。

 すると聞こえて来たのは、耳障りなノイズと苦しげな誰かの息遣い。
遠くに救急車のサイレンらしき音が聞こえ、”痛い”というか細い声が聞こえた。

 それが何回か続き、霊感のある友人に相談をしてみた。
すると、友人からは『関わるな。その電話には絶対出るな』と言われ、私は近くの神社でお祓いをしてもらい、スマホも番号ごと変えた。

 

今でも時々、発信者不明の不在着信がある。
ほとんどがイタズラで、稀に留守番電話が入っている。

けれど、私は聞かずに消去している。