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【怖い商店街の話】ファーストフード店

駅で友達と別れた後、時間潰しに寄ったファーストフード店。
夕暮れ時の店内は空いていて、一階のカウンターにはおひとり様の若い男性が二人と、テーブル席にはパソコンで作業をしている女性が一人いるだけでした。
店内には心地よいBGMが流れていて、快適に時間を過ごせると思っていましたが、私がレジで注文をしていると後方の自動ドアが開いて一気に騒がしくなりました。
見れば、高校生らしき男女五人が大きな声で談笑しながら入店してきたのでした。

 私はアイスコーヒーとポテトを受け取り、一階の空いているテーブル席に座りました。
サクサクのポテトを一本口に咥えながらスマホを手に取り、友人から届いた未読のメッセージを読んでいました。

 すると、その五人組はあろう事か私の並びのテーブル席に座ったのです。
大きな笑い声と話し声が騒がしくて、苛立った私はバッグからiPodを取り出しました。
そして、耳にイヤホンをはめて再生ボタンを押したのです。
音量も少し大きめに。
それでも隣の笑い声は聞こえていましたが、さっきよりはマシになって、ようやく自分の時間が過ごせる気がしました。

それから少しして、隣に座っていた女の子が席を立つと、そのまま移動をして通路に出ようとしました。
その時、女の子は私の席のテーブルに腕がぶつかり、衝撃で私のiPodが床に落ちました。
同時に私のイヤホンまでもが、耳から外れて落ちたのです。

「あ、すみません」

女の子はそう言って私に軽く頭を下げましたが、拾ってくれることもなく、そのまま御手洗に行ってしまいました。

私はため息をつきながらテーブルの下を覗き込み、床に落ちた自分のiPodに手を伸ばしました。 

その時でした。
誰かの視線を感じて、私はそちらに顔を向けました。

すると、二つ隣の席から同じようにテーブルの下を覗き込んでいるスキンヘッドの中年男性がいたのです。
中年男性は無表情のまま、私の事を凝視していました。

しかし、”きっとあの人も何か落としたのだろう。”

そう思いながら中年男性の足元を見てみましたが、特に何か落ちている様子はありませんでした。
それに私のことをじっと見つめているだけで、落とし物を探す素振りすら見せなかったのです。
私は気味が悪くなり、床に落ちた自分のiPodをさっと拾って頭を上げました。

そして、私はちらりと中年男性が座っている席の方を見ました。
すると、その席に座っていたのはスキンヘッドの中年男性ではなく、高校生らしき黒髪の男の子だったのです。
しかも男の子は周りの友人らと談笑していて、その奥にも中年男性らしき姿はありませんでした。

 私は戸惑いながら、ふと自分の足元に目がいきました。
すると、そこには床をゆっくりと這いずるように近づいてくる、いかつい大きな手が見えたのです。

その瞬間、私は全身に鳥肌が立ちました。
そして、逃げるように店を出たのでした。 

店の外に出てから、私は自分が座っていたテーブルの下を見てみました。
しかし、そこには誰もいませんでした。

あの中年男性は一体何者だったのか、私にはわかりません。
友達にその話をしてみても、ただの見間違えだよ、と言われ笑われてしまいました。
しかし、私はあれ以来テーブルの下が気になって仕方がないのです。

また誰かが潜んでいるような気がして……。

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