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出来損ないな小説一覧

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出来損ないな自作小説です。
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2022年12月の記事一覧

The Refugee(音楽小説連作第6章)

彼女の母親は、いつも疲れた顔をしていた。
母親が俯いていない姿を彼女は見たことが無かった。
だから自然と彼女も同じように俯くばかりの姿勢が身についた。
下を見る生活。
地面に向かう人生。
そこには決して空に向けて開けるような明るい兆しなどは、どこにも見当たる事は無かった。
人は社会的な生き物であり、社会はそこに住まう者に対して潤滑油を要求する。
社会の潤滑油、すなわちカネだ。
単純な事実なだけに、

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ゼペットじいさん(未完)

 1

約半年にわたった戦いを終えて、以来僕は心から脱力し、ほとんどここで座り込んでいる。
手にしたモノとはカネと、それに伴う自由と、『無気力感』だ。
ああ、ついでに『ひきこもりになる権利』をそれに加えても良い。

この裁判を経て僕に与えられたモノは正当な権利だったと思う。
僕は会社のために粉骨砕身働き、利益を上げ、求めには誠実に応じてきた。
だからこそ僕が作り上げてきたソフトウェアには正当な対価

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最後の魔女

1 ある会話

少年はまたそこを訪れることにした。
切り立った山の向こうに、その『ほこら』はある。
そこは『禁忌の地』だ。
彼の所属する『集団』には、そこに行くことは決して許されてはいなかった。
少年は身軽に、少しの危なっかしさもなく岩と岩の間を飛び越え、その間に汗もほとんどかかないままだった。
やがて辿り着いた岩山の切れ目に身を滑り込ませる。
陽射しが届かなくなると、そこは完全な暗闇に包まれる。

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