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決めつけない人②

次世代を担う小説家を発掘する

深く考えずにエントリーしてしまった私。

青天の霹靂

という言葉が、これ以上ピッタリと
あてはまる出来事は、
人生初めてかもしれない。

全くもって予想外に、二次審査に
通過してしまった自分が、まだ信じられず。
嬉しいという感情よりも、
目が点になったまま呆然としていた。

どうしよう…。と。
だって、確か、二次審査は、
自作の小説を書いて面接だったはずだから。

いや、無理でしょう、書いた事ないから。

落ち着いて現実を受け入れる時間を与えないか
のように、間髪入れずにメールか届いた。

二次審査に向けて、制作のヒントになる
無料特別講座のオンライン開催の案内。

どうやって書いたら良いか全く分からなかったので、すがる思いで見た。

普通に教養講座として有意義な分かりやすい内容で、興味深く、へぇー!なるほど!
と楽しくお話を聞かせて頂いた。勉強になるなぁ…
…って、
楽しんでいる場合じゃない自分を
にわかに思い出して、
また、ちょっと青ざめる。

小説提出期限まで、約一ヶ月。

書いた事がない。
生まれて初めて書く。
何も浮かばないまま時間だけ過ぎた。

二次審査に残るとは、想定していなかったから、
個展やイベント、ワークショップなど、
いつになく予定がぎっしり詰まっていて
休みが全くなかった上に、
全くもって初めて挑む事が加わってしまった。

受け入れるのに、しばらく時間がかかったけれど、
腹をくくり、開き直って、アイディアが浮かぶのを
ただひたすら待った。

じっくり取り組む日。
を作ろうとしたけれど、どんなに頑張って
時間やスケジュールをやりくりしても、
難しかった。

考える余裕もなかったので、目の前にある事を
ひとつ、ひとつ、丁寧に行うという
日常の繰り返し。
全く何も変わらず過ごしていた。

ある日、一つの名前がふと頭の中に浮かんだ。
記憶に無い名前。
何だかよく分からないけど、
小説の登場人物の一人にしようかな。
この時、締切二週間前を切っていた。

浮かんだ名前をメインにして、他
に何か絞り出そうと試みたものの、
何一つ繋がらない…。
その割に全く焦る事なく、忙しく過ぎる日々を
懸命にやり過ごす毎日だった。

締切一週間前。
何となく、浮かんだイメージをメモに書く
という行動をしていた。

時代、場所、世界観。
何一つ具体的に浮かばずにいた。
ただ、浮かんだ単語だけ、書いた。
ストーリーを作ろうとしても、
何も浮かばないまま、また数日が過ぎる。

またある日、名前が浮かんできたので書き連ねる。
もう、締切一週間を切っていた。

締切三日前。
何のアイディアもストーリーも浮かばないまま、
パソコンに向かいキーボードに手のひらを置いた。

浮かんだ単語がタイトルに収まった。
二行書いて手が止まった。

締切二日前。

自分でも初めての不思議な体験だった。
浮かんだ名前の人物達が、勝手に話し始めた。

言葉に付属して、情景が開けてきた。

目で見ているのか、頭に映っているのか、
わからないけれど、浮かんだものをただひたすら
文字に落としていく作業。

映画を観ているような感覚。

どこまで行くのか?
止まるのか?
分からない状態で、締切当日。

一瞬だけ、自分に戻った瞬間があった。
書かされた世界を客観的に読み返してみる。
短いストーリーで完結する世界ではなかった。

現れた人物達は、
まるで違う時間軸で今、まさに
生きているように映る。
何故か、私もそこに、ほんの少し迷いこんで
一緒に立っているような氣になっていた。

一応、区切りの着いたような場所で
手が止まったので、そこまでを提出作品としてみた。

とにかく、何か、ストーリーめいた代物が書けて
送り出せたことにまずは安堵した。

数日経ってから、その人物達がまだずっと、
違う時間軸で生きている臨場感が
生々しく感じられる事に氣づいた。
不思議な体験だった…。

ひとつ、またクリア出来た。
でも、もう、想像を絶するエネルギーを使っていた。
運動したわけじゃ無いのに、とにかく、
とてつもなく消耗した。

そして、まだ
面接というミッションが残っている事を思い出して、すぐに未知の緊張に襲われた私だった。(③に続く)
https://note.com/may_syo_kaori/n/nebf0ccc64a4d?sub_rt=share_b

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