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翻訳者のリレーブログ

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映像翻訳者が仕事のこと、語学学習のこと、趣味のこと、フリーランスの働き方、在宅ワークなどについてシェアします。
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記事一覧

電子書籍とアガサ・クリスティー

M.S.さんがオーディオブックの話題を取り上げていたので、私も電子メディアの話を少し。 と言っても超アナログ人間な私はM.S.さんとはレベル違いで、去年、ようやくKindleを手に入れたに過ぎない。 去年の夏、長女が誕生日プレゼントに『薬屋のひとりごと』という漫画をリクエストしてきた。 すでに10巻まで出ていて、この先も増えていく見通しだ。 私は漫画を読まないが、シリーズものを揃え始めれば全巻揃えることになるのは予想がつく。 これ以上モノを増やすのは嫌だな…と思った私は、以

オーディオブックと書籍の使い分け

音声メディアの成長が目覚ましい。 私自身は、10年以上前からAudible.comユーザーで英語の本を聴いてきた。日本語の本は過去1年、audiobook.jpを使って聴いてきた。昨年12月からはさらにAudible.co.jpも使っている。どのサービスも以前は月に1冊ダウンロードできるシステムだったが、今は聴き放題の本が無数にある。 オーディオブックは時間の有効活用という意味では神レベルだが、実際どれだけ理解できているかは眉唾だ。そのため、オーディオで聴いていいと思った

タルコフスキーの『ノスタルジア』

渋谷のbunkamura le cinemaにアンドレイ・タルコフスキー監督の『ノスタルジア』を観に行った。 1982年制作の伝説的な映画で、今回は4K修復版でより美しい映像が楽しめるとのこと。 私が初めてこの映画を観たのは十代のころ。 当時はこのような単館系の映画を独りであちこちに見に行ったものだ。 自由が丘や高田馬場にマニアックな映画を上映するミニシアターがあったっけ。 大人になり、小難しい映画はほとんど観なくなった。 十代のころはあれほど「難解さ」「深遠さ」に惹かれ

在宅ワークで良かったこと

完全に在宅で翻訳をするようになってから18年ほど経ちます。 在宅ワークの主なメリットは、通勤時間の節約と対人のストレスがないことだと思います。反対にデメリットは、自己管理の難しさや人と話さなくなること、収入の不安定、運動不足などでしょうか。 私は去年から体調不良で、しばらく仕事を休んでいます。 家でのんびり療養する中で、改めて家にいることの意味を考えるようになりました。 16年前、結婚を機に都心を離れ、郊外で暮らすようになりました。 翌年には長女が生まれ、保育園の空きを待

「エッセイストのように生きる」を読んで

昨年は時間がたくさんあったので本をたくさん読みました。凝りもせず、また書こう(ブログを再開しよう)と思わせてくれた本の1つが松浦弥太郎著「エッセイストのように生きる」でした。 第1章 エッセイとは何か 第2章 エッセイストと言う生き方 第3章 書くために、考える 第4章 書くために、読む 第5章 エッセイの書き方 という全5章構成になっており、おおざっぱに説明すると 第1章、第2章→著書の考えるエッセイとエッセイストの定義 第3章、第4章→書くためのヒント 第5章→具体

映画『Perfect Days』を見ました

1月2日(火)にTOHOシネマズ日本橋で、1列目以外満席の劇場で『Perfect Days』を見ました。以下はネタバレを含む感想です。 関係者の方からファーストリテイリング取締役の柳井康治氏が始めた“トイレプロジェクト”の一環で、ふだんはCMを作っているチームが製作した映画だと聞いていたので、もう少し商業的な映画を想像して見に行ったのですが、むしろドキュメンタリーに近い映画的な映画でした。中盤から涙が止まらなくなり、最後まで主人公平山の生活に引き込まれました。 平山は、渋

ことばを尽くす

新しい年がスタートしました。皆さんはどんな年にしたいですか? 私はことばを尽くす年にしたいと思っています。 先日父と価値観の違いで衝突しました。父とは歳がほぼ30違うので価値観が違うのは当たり前なのですが、親と衝突するといまでも寂しい気持ちになります。自分は認められていない、理解されていない、という卑屈な思いが沸いてきます。 いつもならわだかまりを残したまま諦めるのですが、お正月の帰省直前ということで、もやもやを解消しようと長いメールを書きました。自分がその価値観を持つ

Do They Know It's Christmas?

クリスマスも近いこのシーズン、クリスマスソングを耳にすることも多くなる。 定番のクリスマスソングの1つに、Do They Know It's Christmas? という曲がある。1984年にイギリスの人気アーティストたちが集まってレコーディングしたチャリティソングだ。飢饉に苦しむアフリカの人々への支援を目的とし、この曲が生み出した莫大な収益は全額寄付された。 かの有名なWe Are the Worldの影に隠れがちだが、こちらが元祖。アーティストのコラボレーションによる

プロの翻訳者が「ChatGPT翻訳術」を読んだ感想

いつ自分の仕事がChatGPTに乗っ取られるのだろうと戦々恐々としている皆さま、こんにちは。翻訳をなりわいにしているm.s.です。 翻訳者仲間に勧められ「ChatGPT翻訳術」という本を読みました。言うまでもなく、ChatGPT4の驚異的な技術は、翻訳者にとっては脅威であります。 本書はひと言でいうならば、ChatGPTを使って日英翻訳をするためのプロンプト集。多くのビジネス雑誌でも頻繁にプロンプトの重要性が取り上げられていますが、この本には日本語を英語に翻訳するために有

発音記号は大事!

私が中学生の頃、学校の英語のテストには必ず発音とアクセントの問題があった。私は特に発音問題が苦手で、よく間違えたのを覚えている。 当時はALTなどいないし、視聴覚教材も充実していなかった。英語教師が自ら発音して教えてくれるのだが、恐らくあまりクオリティの高いものではなかったと思う。 だから発音問題をクリアするには発音記号を覚えるしかない。実際、授業でもよく発音記号が使われた。 それぞれの「正しい」発音は分からなくても、発音記号を覚えればパターンは見えてくる。基本的なパターン(

初!内視鏡検査

病気になってしまった。 2ヶ月ほど前から食べると胃痛がして、あれよあれよと悪くなり、とうとう何も食べられなくなって、病院に駆け込んだ。 早速、内視鏡検査。胃カメラだ。 普段ほとんど病気をしない私は、これまで定期検診さえ受けてこなかった。内視鏡検査なんて一生受けることはないと思っていた。でもこうなったらイヤだの怖いだのと言っていられない。とにかく自分の胃の中がどうなっているか見てもらいたい。 前夜9時から絶食。検査は朝10時からだ。 喉に痺れるスプレーをして、液体の薬を飲み

NG案件

NG案件、なんて偉そうなことを言える立場にはない。 映像翻訳を始めて20年以上、スケジュール以外の理由でお仕事を断ったことはない。いただける仕事は何でも挑戦してきた。 とは言え、できることなら避けたい素材はある。 私がよくお受けするのは、自然・動物関連の番組だ。 動物関連と言うと、まずライオンやゾウを思い浮かべるかもしれない。確かに、セレンゲティとかクルーガー国立公園あたりを舞台にした番組は定番だ。 しかしそのあたりは出尽くした感もあり、動物番組も徐々にレアな題材を求める

Meemawみたいになりたい

小学生の次女の身に悲劇が起きた。 彼女が取り組んでいるスポーツがあるのだが、大会当日の朝に高熱を出した。これまで数ヵ月、怒鳴られ、しごかれ、泣きながら練習してきたのに。衣装もメイクも完璧に整え、持てる力の全てを発揮するはずだったのに。 早朝4時、私たちは棄権の連絡をした。 その後メディカルセンターで抗原検査を受け、コロナ陽性が判明。 その週は楽しみにしていた小学校の宿泊研修の予定があったが、そちらも欠席となった。 本当に、なぐさめる言葉もない。 「来年は修学旅行があるよ」「次

【リレー】あなたの好きな映画は?

最も聞かれて困る質問が、”一番好きなアーティストは?”と”一番好きな映画は?”だ。どちらも口頭で聞かれたら何となく相手に合わせて答えてきたが、今回『翻訳者のリレーブログ』で“好きな映画”がテーマとして回ってきたので、ちょっと自分なりにガチで考えて書き記しておこうと思う。 と言ってもやはり迷うものだ。「スタンド・バイ・ミー」には思い出がたくさん詰まってるし、「リアリティ・バイツ」も大学生だった私はかなりの刺激を受けた。でもやはり私にとって最も大切な作品は、映画好きの原点を作っ