Meemawみたいになりたい
小学生の次女の身に悲劇が起きた。
彼女が取り組んでいるスポーツがあるのだが、大会当日の朝に高熱を出した。これまで数ヵ月、怒鳴られ、しごかれ、泣きながら練習してきたのに。衣装もメイクも完璧に整え、持てる力の全てを発揮するはずだったのに。
早朝4時、私たちは棄権の連絡をした。
その後メディカルセンターで抗原検査を受け、コロナ陽性が判明。
その週は楽しみにしていた小学校の宿泊研修の予定があったが、そちらも欠席となった。
本当に、なぐさめる言葉もない。
「来年は修学旅行があるよ」「次の大会で頑張ればいいじゃない」なんて言葉、聞きたくもないだろう。
口を開けば余計なことを言ってしまいそうで、私はただ泣いて荒れる娘を見ていることしかできなかった。
子育てしていると、しばしば大変な目に遭う。
夜中にコンビニに墨汁を買いに行ったり、真冬に上履きを洗わされたり、例のスポーツのために徹夜で衣装をつくったり。なんで私がこんな目に?と思うこともあるが、それで我が子が助かるならと、文句を言いつつも頑張ってしまう。
本当につらいのは、私がどんなに頑張っても助けてあげられないときだ。
今回のように子どもが傷つき悲しんでいるときは、親は無力だな、と思う。
幼児のころならお菓子やゲームで気を紛らすこともできたが、年齢が上がるとそうはいかない。幼く見えても、心の傷に向き合い、癒せるのは本人だけなのだ。
まあ、自分に置き換えて考えてみれば当然のことだ。若いころはそれなりにつらい思いや悲しい思いもしたが、親になんとかしてもらおうとは思わなかった。というか、傷ついた私を親が見て心を痛めているなんて考えたこともなかった。子どもって勝手な生き物だ。
私の好きなSitComに、Big Bang Theoryがある。
天才物理学者で超変わり者のSheldonと友人たちの物語だ。
Big Bang TheoryにはSheldonの子ども時代を描いたYoung Sheldonというスピンオフシリーズがある。
この中でいい味をだしているのが、Sheldonのおばあちゃん、Meemawだ。MeemawはBig Bang Theoryにも登場するか、キャラクター設定が少し違っている。本家ではSheldonを溺愛するタフなおばあちゃんという感じだが、スピンオフではタフさに粋が加わる(俳優はDesigning WomenのAnnie Potts。歳を重ねても可愛い)。
あるエピソードでSheldonの双子の妹Missyが、脚が毛深いことを同級生に笑われて自己処理したところ、ひどいカミソリ負けを作ってしまう。
痛さと情けなさで泣きながらMeamawのもとを訪れるが、このときの会話が面白い。
Meamaw: Anything wrong?(どうかした?)
Missy: Everything!(もう最悪)
Meamaw: Is anyone dead?(誰か死んだの?)
Missy: No.(ううん)
Meamaw: Then we can fix it.(じゃあなんとかなる)
人が死ぬこと以外はなんとかなるなんて、頼もしい言葉だなぁ、と思う。究極を言えば、その通りだし。でも簡単なようで、「この子は躓いても立ち直れる」という確信と「私はその様子を黙って見守る」という覚悟がなければ言えない台詞だ。私がこれを言えるようになるまでには、あと20年くらいはかかりそうだ。
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