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二次創作の世界で見た「推し活競争」~「推し活」で本当に大事なことを考える


そもそも「推し」ってなんぞや?


近ごろ、その言葉を聞かない日がないほど世に氾濫している「推し」という言葉ですが、正確な意味を答えられる人ってどれくらいいるんでしょうか。

わたし自身は、「好きなアイドル」「好きな芸能人」「好きなアニメキャラ」「好きなスポーツ選手」などなど、自分の「好きな対象」をざっくりまとめて「推し」というんだと思ってましたが、じつはこの言葉にはちゃんと定義があるらしいのです。


ファイントゥデイ資生堂(現在は「ファイントゥディ」)の定義によると、推しとは、「好きな人やもの、応援したい人やもの、人に勧めたいほど気に入っている人やもの」を指すそうです。
(ちなみに「ファイントゥデイ資生堂」とは、2021年5月に資生堂の日用品部門を引き継いで設立された会社)

人によって感じ方はさまざまだと思いますが、わたしはまあ納得の定義だと思いました。
というか、「推し」にしろ「推し活」にしろ、その概念や活動自体は昔から存在してましたし、これらの用語はそれを簡潔な新語にしただけなんですが、これはやはりSNSで呟くときに便利だってのが大きいと思います。
たとえば昔は「わたしの好きな○○の追っかけしたりグッズ買ったりしてます」と言ってたのが、いまは
「〇〇の推し活してます」
半分以下の文字数で済むわけですから。


推し活で得られるもの、失うもの


オリジナルグッズ製作サイト「マイシュミ」の説明によれば、推し活で得られるものは次のようになります。

● 人生を豊かにする楽しみ
● 心身の癒やし
● 仕事や勉強・自分磨きのモチベーション
● 同じ趣味を持つ友達


イラストAC様より拝借

これにも異論はないです。わたしの周りでも、
「推し活が自分の人生の活性化に繋がっている」
そう感じている人が多いと思います。

わたしも11歳の頃から「三国志」が大好きで、
ゲームや読書はもちろんのこと、
より深く彼らのことを知りたくて中国に留学したり、
そこでの語学学習の結果が現在の仕事にも繋がっています。
なので特に
「仕事や勉強・自分磨きのモチベーション」
の効果は感じています。

このようにいいことずくめのように見える推し活ですが、
反面、推し活をすることで失うものもあります。
その最たるものがお金です。
みずほ銀行の調査によると、『推し活をしている人の約80%は「お金に不安を感じている」』というアンケート結果もあります。


イラストAC様より拝借


二次創作を「推し活」とは思わなかった


前置きが長くなりましたが、わたしは昨年末まで約3年間、
人生初の二次創作(字書き)をしておりました。
ジャンルは某飛翔系漫画で、推しは某NLカプとだけ言っておきます。

二次創作については、始めたときから「2~3年で辞める」と決めてました。
なんでしょうね、自分でもよくわからないんですけど、先にゴールを決めてやったほうが楽なんですね、気持ち的にも体力的にも(なんたって若くないからな!(笑))

とはいえ、活動中はメチャクチャ楽しかったです。二次やったことある方なら共感してもらえると思いますが、自分の萌え愛を込めまくった作品をpixivにアップすると、すぐさま反応(いいねやブクマ、コメント)がもらえますから。
そのたびにテンション爆上がりだし、興奮して脳内アドレナリン大放出状態だし、もっと反応が欲しくてどんどん創作にのめり込んでいく沼落ちした二次創作者の誰もが経験する初期症状に、わたしも見事にかかっちまったわけです。


いらすとや様から拝借

そのうち少しずつ、最初の異常なテンションは下がっていきましたが、
pixivに最初の作品をアップしてから3か月後に初めての同人誌を出し、
その後もコンスタントに本を出していきました。
活動開始から3年で二次創作を辞めるまでに計13冊の本を出し、
ビックサイトのイベントに3回、Webイベントにも4回ほど参加しました。
イベントは毎回リア友と参加し、SNSでも本当に仲の良い方としかやりとりしなかったこともあり、3年のあいだ対人関係で嫌な思いをしたことは一度もありませんでした。

そのように、創作やイベント参加はとっても楽しかったんです。
でもわたしはその間ずっと、自分がやっていることが「推し活」とは違うと感じていました。

なんでかというと、自分の好きなキャラのグッズをまったく買わなかったんです。コラボカフェにも誘われたけど一度も行きませんでした。

話は「三国志」に戻りますが、わたしが「三国志」で買ったのは人形劇三国志のクリアファイル一枚だけ。
代わりに、英雄たちが戦った戦場や城、埋葬されているお墓など、いわゆる聖地巡礼はたくさんしました。劉備終焉の城・白帝城や、孔明終焉の地・五丈原に辿り着いたときは号泣しました。
でもそれを「推し活」と呼ぶのは、わたしの中では抵抗があるんです。20年以上昔の話だからSNS投稿だってしてません。「彼らが好きだから行った」それだけのことだと思ってます。

話は戻って、その某漫画の二次創作では必要に迫られてX(旧twitter)をしてましたが、当然のごとくバンバン流れてくるんですね、「『推し』のグッズ買いました♡」報告ポストが。

推しのグッズ購入はまさしく「推し活」の王道です。
わたしはコレをいっさいやらなかったので、自分がやっていることが「推し活」とは違うと感じていたのです。


二次創作の世界で見た「推し活競争」


先述のように、わたしは二次創作に没頭しながらも、
わたしのしていることは「推し活」じゃないという自負(?)があったので、Xで「グッズ買いました♡」ポストがバンバン流れてきてもさほど気になりませんでした。
当時、一番仲の良かった相互さん(Aさんとします)がたいへんリッチで、グッズ欲も凄まじい方で、彼女のポストは半分以上が「グッズ買いました」か「コラボカフェ行きました」でした。
でも人間、自分の興味ないことには嫉妬しないものだし、何より彼女の人柄が好きだったので、グッズには興味ないけど微笑ましく眺めていました。

でも、同担のなかには、彼女のポストをメチャクチャ気にする人がいたんです(この人をBさんとします)。
これは私が二次卒業後に聞いた話ですが、BさんはAさんと相互で、時々オープンに萌え語りを飛ばし合う仲でありながら、彼女のことを裏でボロクソに言っていたそうです(あまりに酷い罵詈雑言なので割愛します)。

Bさんは30代後半ですが、実家暮らしのアルバイトで、金銭的な余裕もあまりなく、推しのグッズを思う存分買えないとのこと。
そこにAさんのポストを見続けたので、嫉妬心を煽られまくり、ついに憎悪の感情まで引き出されたようです。
いまではBさんからAさんをブロックし、交流は完全に絶ったようです。お互いのためにも、それでよかったとわたしは思っています。

Bさんに限らず、いまや「推し活」とは、「『推し』のためにどれだけお金をつぎ込むか」ととらえている人が多い気がします。いわば「推し活競争」です。
同列に語るのは少し憚られますが、ホストや地下メンに大金を貢ぐ女性と似たような発想になってる気がします。

でもそこまでエスカレートしてしまうと、推し活自体が楽しくなくなってしまうかもしれないし、Bさんのように同担で自分よりリッチな人を憎悪することにもなりかねません。
そしてこの問題は、次々と新しいグッズを発売する企業側の姿勢にも問題があるように感じます(収益向上や会社存続のために必要だということは理解できますが)。

好きなものや応援したいものがあるって、それ自体は本当に素晴らしいことだと思います。
「推し活=お金をかけること」と考えず、たとえば、推しの絵を描いたり小説を書いたり、推しのやっている活動やスポーツについて勉強したり、カラオケで推しの歌をうたったりダンスを踊ったり……その「時間」こそがいちばん大事だと思います。

時は金なりです。
わたしも20代のとき、「三国志」聖地巡礼のためにバックパックを背負い、大阪から船に乗って上海に渡り、汚い安宿に泊まりながら中国大陸を放浪したあの時間が、いまでもかけがえのない財産です。
もう二度と味わうことのできない、あの時だけの濃密な時間だったと思います。

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二次創作の世界で見聞きした出来事を小説にしました。
ぜひご高覧のほどを!(アカウントは別です)










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