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#08「コンテンツの核となる『何を伝えるのか?』のお話」

「誰に伝えるのか?」を整理することで、主人公のキャラクターとエンディング、そこに至る大まかな道筋などの “あらすじ”が定まりました。
次は、そのあらすじに沿って、「何を伝えるのか?」を決める番です。

「何を伝えるのか?」とは、ようするに「ターゲットに、何を見せれば、何を知らせれば、気持ちが動くのか?」を考えるということ。

いわゆる「訴求ポイント」だとか「訴求要素」に関する話です。

クリエイティブの使命は、訴求ポイントをいかに効果的に表現するか(伝えるか)ということだといえます。
料理に例えるならば、訴求ポイントは肉や魚や野菜などの「素材」で、クリエイティブは「調理法」に相当します。そして、素材の善し悪しが料理の味を大きく左右するように、「何を伝えるか?」をどう定めるかによってコンテンツの訴求力は大きく変わってきます。

たとえば、訴求したい商品・サービスに絶対的な魅力があれば、もうそれだけでOK。極端な話、「どう伝えるか?」なんて考えなくても、訴求すべき要素をバシッと目の前に置くだけで、強力なコンテンツになります。
肉でも魚でも野菜でも、素材が良ければ、余計な調理はいらないし、味付けだって塩だけでいい。それと同じで、商品やサービスに絶対的な魅力があれば、余計な演出も説明も必要ないのです。

でも、まあ、実際のところは、そんな絶対的な魅力を持った商品・サービスなんて多くはないので、いろいろな訴求ポイントを打ち出しながら、ターゲットの目により魅力的に映るよう、あれこれ工夫することになる。そして、そのあれこれ工夫する役が、クリエイティブなわけです。
で、うまいこと工夫するには、うまいこと調理するには、素材である「何を伝えるか?」とか訴求ポイントをしっかり理解してないと、おいしいものはできあがらない。だから、「何を伝えるか?」をちゃんと考えましょう。というのが、今回の話の主旨になります。


ちなみに「何を伝えるか?」についてちゃんと掘り下げることなく、一気に制作に着手するケースが、けっこう多かったりします。
「誰に伝えるのか?」の話と同じく、「何を伝えるのか?」に関する話はプロジェクトの一番最初に出てくるのですが、簡単なオリエン資料と商品パンフレットだけが唯一の情報源で、あとは手探りでコピーやデザインなどを考える……といったことががよくある。
しかも、これまたターゲットの話の時と同じく、プロジェクトの進行とともに「何を伝えるのか?」ということも、いつのまにか忘れられてしまったりする。表面的なデザイン処理とか言葉の言い回しなどをこねくりまわし続けるうち、なんとなくカッコいいけど、何も伝わってこないものが出来上がってしまったり、そんなことがよくあるのです。


繰り返しになってしまいますが、料理にとって「素材」が重要なのと同じく、コンテンツ制作において「何を伝えるか?」はとても重要です。

だから、みんな、手を動かす前に、訴求する商品なりサービスなりのことをもっとよく知るようにしましょう。
オリエン資料と商品パンフだけでなく、クライアントにヒアリングしたりすることで、その商品・サービスの魅力を腹の底から知って感じてから手を動かすようにしましょう。
と、僕は切に思います。
そうすれば、手さぐり状態はずいぶんと避けられるし、コンテンツの訴求力も高められるはずだから。


さてさて、話をもう少し前へと進めましょう。

訴求ポイントを考えるにあたって、僕は「具体性」と「ユーザーメリット」という観点が大事だと考えています。
(クライアントにヒアリングするときは、だいたいこの2つの観点を軸に、いろいろ情報を得るようにしています)

例えば、「このウォーキングシューズは衝撃吸収性が高い!」とだけ言われても、みんなピンとこないですよね。
そこで登場するのが「具体性」です。
「どのくらい衝撃を吸収するのか?」「なぜ、そんなに衝撃を吸収できるのか?」など、具体的な数値や具体的な事実を明らかにすることで、納得感を高めようというわけです。

商品やサービスの説明には、「高い品質」「優れた機能性」「確かな信頼性」などの言葉がよく出てきますが、「大きい・優れた・確かな」など、いわゆる「形容詞」はすべて要注意だと考えています。
形容詞はあくまで枝や葉であって、具体的な「数値」や具体的な「事実」こそが根であり幹。具体性を持った訴求は、説得力がまったく違ってきます。


商品やサービスの具体的な特徴が明らかなになったら、次は「ユーザーメリット」の出番です。

一口に「ユーザーメリット」と言っても、大きく2つの方向性があると僕は考えています。

一つ目は「期待が膨らむ」という方向でのメリットです。
ユーザーが持っている何らかのニーズや課題に対して「この商品なら、役に立つ!」「この商品なら、望みを叶えてくれる!」と思わせる要素のことで、まあ、一般的に「メリット」といえば、きっとこのことが頭に浮かぶと思います。

二つ目は「不安が解消する」という方向でのメリットです。
ユーザーが抱く「失敗したくない」という心配を解消し、「この商品なら、大丈夫だ」と思わせてくれる要素のことで、不安とか心配という、いわばマイナスの感情を埋め合わせ、ゼロもしくはプラスへて転じさせるという意味での「メリット」です。

訴求ポイントを考えるにあたっては、具体的な特徴を洗い出すとともに、それらがこの二つのメリットにつながるのか?(ユーザーの「期待」と「不安」に対してどのように貢献するのか?)というところまで理解しておくと、納得感とか共感とかに満ちたストーリーが描けるのではないかと思います。

ウォーキングシューズの例で説明するならば、「高い衝撃吸収性」というだけでなく、以下のようなことまで深堀りできたら、訴求ポイントの整理としては十分かと思います。

・この靴は足への衝撃を50%軽減する
・この衝撃吸収性は独自開発のソールとクッションによって実現した
・このソールとクッションは、衝撃を吸収するだけでなく前方へ進む力も生み出す
・この力が働くことで、自然と足が前へ出て、歩くのが楽しくなる
・歩く楽しさは、ウォーキングを習慣化するために大事な要素
・歩くスピードも上がるので、理想的な強度(心拍数)でのウォーキングが可能になる
・スピードアップには、歩行時のカロリー消費の増加という利点がある
・衝撃吸収性と推進力の向上は、20年以上ランニングシューズを製造する経験に由来する
・そのランニングシューズは、市民ランナーを中心に10万足の販売実績がある

いかがでしょう?
具体的な機能説明にユーザーメリットを掛け合わせることで、点と点がつながり、説得力のあるストーリーが浮かび上がってきたように感じませんか?

こういったストーリーができたら、「何を伝えるか?」の考察はほぼおしまい。最後に、「どこを重点的にアピールするか?」といった優先順位を決めればOKです。

「何を伝えるか?」を整理することで、目的地へと至る道筋がずいぶんとはっきりしたと思います。

さあ、ここまで来たら、いよいよ実制作の番です。
次回は、3つ目のポイント「どのように伝えるのか?」のお話に進みます。

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