小説「金・金・愛」 #1

第1話:これまで。


普通の女の子だった。

 初恋の人は、スポーツができて明るい少年。ずっと片想いしていたが、学校一のかわいい人気者の女の子と男の子は付き合う。がっかりしながらそれでも片想いをしていた。

 高校入学からお金を強く意識するようになる。
どんな人がお金持ちでどんな格好の人がお金を持っていないか。社会性はあるか?どんな人が稼いでいるのか?
 大学生時代は合コンで知り合った不動産勤務の25歳男性と付き合う。
男性は大手企業で働いていると言い、確かにそれに見合ったお金の使い方が見えたので嘘をついていないことがわかった。
 お金を持っている彼は、代官山のおしゃれなカフェに連れて行ってくれたり、土日は箱根の旅館に1泊2日の旅行、余裕があり、目黒の高級なラブホテルにも連れて行ってくれた。そんな新しいキラキラ輝いた世界に連れて行ってくれる彼の事をどんどん好きになっていった。

 お金を持っていないことがわかる彼女は、大学の男子のことは眼中にもなく、大学の一途な男の子から告白されるが、『貯金はいくらなの?』と聞き、ビックリして黙った男の子を振る。

 付き合っていた男性には女の影が見え隠れする。どうせだったら、そこも判断できたら良かった。当日にLINEで家に行きたいと伝えると拒否されるが、いきなり呼ばれることはある。そんな事は何回かあったが、断らなかった。家で夕食の鍋を作り2人で囲み、コンビニで買った缶ビールを呑み、食べた後はお皿も洗わずにヤった。一晩で5回はヤる事もあった。次の日も仕事の彼は、朝早くに私を起こして家を出る様に促した。もちろん合鍵はまだ持っていない。まだという表現が正しいのかはわからないが今はこう言っておきたい。仕事のできる彼は、家を出るときには昨日の鍋のお皿は綺麗に洗い終わっていた。そんなところは嫌いだった。他の女の匂いを消すことさえも上手くやっていることと同じことに思えたから。
私はその日の午前中の授業は家で寝るために休んだ。夕方からのカフェのバイトは3時間働いた。彼からのLINEはいまだに返ってこないが、いつものことだから気にしない。

 生理の日に呼び出されることもあったが、拒否せずヤった。彼をがっかりさせたくなかったから。血が出るのも当たり前だが、彼を満足させることが出来るのなら、そんな事はどうでも良い。
 急に呼ばれてやるセックスは何故か激しい日が多かった。仕事で何かあったのだろう。楽しく話している様だったが、そんな日は仕事の話だけはする事はなく、仕事の話を聞いてみても上の空で「う〜ん。」と言うだけ。
 次の日は膀胱のところが痛くなる事もしばしばあったが、それはそれで昨日の事を思い出させて1人でニヤついた。彼をそばで感じられる様な気がした。
彼はたまに遠い目をして何を考えているかわからないことがあった。
それも彼の魅力であり、惹かれるところでもあった。

 そんな事ばかり考えている私は、友達が増えることはなく、入学時に仲良くなった、地元が一緒の子とその子の仲の良い4人で行動していた。
輝いている大学生活ではないが、彼がいたから満足していた。そして依存度も高くなっていた。
 別の女の影はわかっていたが、知らないふりをしていた。私が尽くせば、気づいて私を選んでくれるとその頃は本気で思っていた。今思えば私を選ぶはずがないのに。
そして、LINEで「別れよう。」と一言だけ。何度もLINEしたが、返信は返って来ず。彼が住むマンションで待っていたが、話しかけても無視。私達はその日から赤の他人になったのだ。

 それからは、心の穴を埋めるようにクラブや合コンに行き、ワンナイトを発情期の猿の様にヤリまくった。その中で見つけたものはお金が全てという事。そして、『幸せはお金で買えないが、お金が無いと幸せにはなれない。』




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