見出し画像

売上重視だった大きな組織のマインドが変わる瞬間

最近、プロジェクトを進めるなかで、「これが組織が変わる瞬間か!」と感動した出来事がありました。

DXや、新しい技術を用いた取り組みって、何となく「これまでの状態が非効率で、新しい状態が最適なんだ」と考えたり、それをロジカルに訴えようとしてしまいがち。でも、認識を改めました。

非効率に見えるその状態は、これまでその企業が置かれてきた業界の状況や、経営方針、目標設定における「最適な答え」でした。たしかな合理性が有って、そうなっていることがほとんど。

「これまでの最適」から「新しい最適」に移行することは、みんなが非合理と思っている状態から変えるよりも難しいものです。今まで良しとされてきた方法を捨て、新しい方法に移ることには不確実さと不安がつきもの。これまでの目標軸でも一定の成果が出せて、かつ、新しい方法が上手くいきそうだ、という自信も醸成できるプロセスが大切になってくる。

ハルモニアが Harmoniaロスフリー というサービスで解決を目指している「スーパーマーケットの食品ロス問題」でも、そんなシーンがありました。

多めに作ることが、これまでの最適だった理由

ある町のスーパーマーケットを想像してみてください。

スーパーは町の人の食生活を支えていて、お惣菜が美味しいと評判。少しずつ規模を広げて、パートの方をたくさん雇ったり、新店舗をオープンしていきます。不断の努力の甲斐あって、20年連続増収を達成したり。

しかし、数十年も経つと、町も高齢化し、人口もこれからじわじわ減っていくと言われます。競合するスーパーやショッピングモールも出店。以前よりも売れ残りが目立つ日が増え、捨ててしまってはもったいないので、夕方から値引きを行うようになります。お客さんも、値引きされているとついつい手が伸びるもの。お惣菜コーナーは夕方から閉店にかけて賑わい続けました。

このスーパーの目標は、お客さんに沢山来てもらうこと、廃棄が極力でないようにすること、そして、売上を前年よりも伸ばすこと。どれもごくふつうの目標です。

だから頑張って、お惣菜をもっとたくさん作って売り場に出して、廃棄が出ないように毎日値引きをして、ほとんどぜんぶを閉店までに売り切ります。お店も目標達成、お客さんも賑わっている。みんなハッピーです。

これが、「これまでの最適」です。

ただ、人手不足もあって製造数を増やすのも限界。お客さんもこれ以上は食べきれません。

実際に、日本で起きている食品ロスのうち「家庭で発生するもの」は47%。その約半分は手つかずで捨ててしまう「直接廃棄」と推定されています。
家庭で捨てられてしまっている量は「食品小売(スーパーなど)で発生する廃棄」より多いんです。

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html

ほどよく作って値引きを抑える、新しい最適への移行プロセス

スーパーで働く人も、製造と値引きを毎日頑張りつつ、この方法になんとなく違和感を持ち始めていたりします。でも、会社全体でずっとやってきた方法と、高い目標があるなかで、なかなか変えるきっかけって掴めない。

そこに現れたのが、「多すぎる製造を抑え、値引きも抑える新しい方針」を試してみようと言い出したプロジェクトリーダーです。(言い出しっぺは社内リーダーでも、社外からの提案でもいい。ハルモニアはここをソフトウェア+コンサルティングで支援してます。)

実は、こうしたお惣菜の製造→値引き→販売には、「たくさん作って余ったら値引き」の他に、もうひとつの最適ポイントがあります。

この2つの方法を見てください。ちょっと多めに作って値引きする左のほうが「売上」は大きい。でも、「粗利・利益」で見たら作る量も値引きも抑えた右のほうが大きくなります。

「今までは売上重視の左側でやってきたけれど、利益とロス重視の右側にできるんじゃないか?」というのがプロジェクトリーダーの提案です。

でもこれはあくまで計算上の話。大きな組織が「これまでの最適」を見直し、「新しい最適」に改めていくには、様々なステップが必要です。

ざっくりと整理すると、最低限必要なのは次の3つ。

  1. そうなったら良いよね、という理想像の提示

  2. やってみて得られた確信と、成功体験

  3. 多くの店舗、スタッフが簡単に続けられる仕組み

特に2が重要で、まずはアナログな方法からでも良いので、実際の店舗・商品で新しい方式をトライしてみること。その結果は必ずしも仮説通りにはならないけれど、ちゃんと分析することで、お店ごとの特徴や、お客さんの反応などの理解がぐっと深まります。

このプロセスを組織が経験することによって、「新しい最適」のオペレーションを実際にやっていける確信が得られ、他の店舗に広く説明していくときに使える成功事例にもなる。

僕が目の当たりにしたのがこの変化の瞬間です。実験のデータが得られたことで、プロジェクトリーダーだけでなく、組織の皆がポジティブな思考と発言にどんどん変わっていった。「実は前からこうしたほうが良いと思っていたんだよね。」「やってみることで店舗でも学びが沢山あった。」「まだ完璧ではないけれど、まずは進めてみよう。」と、不安ではなく可能性に焦点をあてた議論が重ねられていきました。思考スタイルまでも、アジャイルに、仮説と検証ドリブンに変化しつつあるのを感じました。

ハルモニアのサービスの新たなミッション

今回の出来事があって、僕はハルモニアが手掛けるサービスのミッションを一回り大きく捉え直しました。

これまでは、「値引きをスマートにすることで店舗で発生するロスを削減する」ことだと考えていた。でも本当は、もっと少ない製造数でも利益を出せるという成功体験を創り、組織の変化を促して、「家庭での廃棄含む、市場全体のロスを削減する」ことが、このサービスの最大の可能性でありミッション。

必要よりも多く作りすぎていた、食糧を消費しすぎていた社会から、新しい均衡点にシフトさせていくことが、僕らが小売企業とのパートナーシップを通じて果たすべき新しい役割なのかも。

さらにそこから拡大解釈して、同じ様な「これまでの最適」から「新しい最適」へのシフトは、他の業界でも広く可能なんじゃないかと感じています。規模を見直して、製造数や、場合によっては売上を抑えながらも利益を出していくという離れ業を実現するには、価格設定の巧みさが必要不可欠。

ビジネスの利益と持続可能性が両立する新しい均衡点を、社名に込めた思いから繋げて「ハーモニックポイント」と呼んだりしつつ。これからも、ハルモニアで価格戦略とデータドリブンという2大テーマの探求を続けます。

ハルモニアの採用情報、企業概要はこちら。
副業・フリーランス含む、ダイナミックで多様なチームを形成しています。

この記事が参加している募集

SDGsへの向き合い方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?