錬金術師と狂犬症候群(レイビース・ナイト):12
遠巻きに『クレッセント』の玄関を見下ろしながら、ビルの屋上で充琉はため息をついていた。
店の灯りは消えておらず、客足も衰えが見られない。あんなことがあった後にもかかわらず楼亜は店の営業を続けると決め、心配する自分の忠告を無視していつも通りに振舞うことにしたのだ。本当に、頑固が過ぎる。つくづく安心の出来ない男だと思った。
「あの、バカ」
消え入りそうな声で小さく呟く。自分がどんな思いで彼のトラブルに首を突っ込んでいるのか、果たして気付いてくれているのかどうか。気付いていても