錬金術師と狂犬症候群(レイビース・ナイト):22
日が、暮れかかっている。屋上から見下ろす『クレッセント』の店舗周辺にはまだ人影はない。そろそろ開店の準備のために楼亜がやって来る頃だろう――『やる』のはその前だ。
既に店内のマキナには全て仕掛けを済ませておいた。あの楼亜が他人を疑うことを知らないお人好しだったからこそ、造作もなくその下準備を完了させることが出来た。彼の性格を利用する形になってしまったのはさすがに申し訳ないと感じざるを得ない。
いや。思い返せばそれも今さらだろうか。これまでの犯行もこれからの出来事も全て、