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新校長への提言(日本教育新聞2015年4月27日号)

学校からの情報発信―保護者は何を求めているか

「地味でベタな内容」を丁寧に

校長の経営への思いも伝えて

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「新校長への伝言」の4回目は、愛される学校づくりの在り方や学校ホームページの改善策を著書などで発信している斎藤早苗・前愛知県小牧市立小牧中学校PTA会長にこれらの具体策を提案してもらった。小牧中のPTA時代には丸3年にわたり同校ホームページの「PTAの部屋」を担当。多方面から注目を集めた。

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◇情報なければ保護者は不安

新年度が始まると、子どもたちは「新しい担任」「新しいクラスメート」にドキドキワクワクする。
こうした新しい環境にドキドキしているのは子どもだけではない。保護者も同じように、期待と不安を感じている。特に新1年生の保護者は、学校環境について子ども以上に不安を抱えている。
そんなときに保護者が頼りにするのは「学校ホームページ」だ。これを見れば、昨年度までの学校の様子やさまざまな行事について知ることができる。
しかし、「学校HP」がコンスタントに更新されている学校は、実はかなり少ない。新年度になったというのに、最新記事が、前年度の運動会のままだった、という笑えない話もよく聞く。
保護者は、自分の子が通う学校のことしか知らないので、そうした「存在するだけ」のHPの学校に通っていれば、「学校HPなんてそんなもんだ」(どうせあてにならない)と思い、期待もしないだろう。これは、頻繁にHPが更新される学校の保護者から見ると、とても気の毒なことだと思う。
今や多くの学校が設置しているHPだが、活用しないのは本当にもったいない。新校長の皆さんには、ぜひ「学校HPの活用」について、すぐにでも検討していただきたい。

◇配布文書はアップして

活用方法を考えるとき、情報発信の内容の選別は重要なテーマだ。そこで、保護者の立場で、知りたい情報をお伝えする。周囲の保護者の意見を集約すると、大きく次の五つが挙げられる。
1.学校の様子
2.特別活動の様子
3.部活動の様子
4.配付文書
5.PTA活動
1の「学校の様子」とは、日常の子どもたちの様子のことだ。普段の学校での子どもたちの姿は、保護者は見ることができない。真剣な表情やにこやかな笑顔の子どもたちを見ると、心が和む。
2の「特別活動の様子」は、主に宿泊を伴う特別活動のこと。修学旅行やキャンプなど、現地からの発信があると、学校HPのアクセス数が飛躍的に増える。それだけ望まれている記事といえる。
3の「部活動の様子」は、中学校の保護者に要望が多い。特に、運動系の部活動については、試合の結果にも注目が集まるので、子どもたちもよくアクセスする。
4の「配付文書」は、いわゆる「紙のお手紙」のことである。学校からのお手紙は、子どもが成長するにつれ、保護者の手に渡らなくなってしまうことも多い。中学生の保護者の多くが、これを実感している。そうした「お手紙類」も学校HPにアップしてくださると、とても便利だ。
5の「PTA活動」は、周囲の役員から寄せられた要望である。自分たちの活動が記事になり発信されていると、やはりうれしいものだ。それがPTA活動へのモチベーションになっているという声もあるので、ぜひ作っていただきたい項目である。
このように、保護者が学校HPに求めていることは、「地味でベタな発信」であり、それを「続ける」ことを期待している。難しく考える必要はない。

◇すれ違い減らす契機に

最後におすすめしたいのが「校長からの発信」である。
昨今、「学校と家庭、地域との連携」という言葉は、どこの学校でも聞かれる。この「連携」のためには、学校のことをよく知ってもらうことが重要だが、学校の顔である校長を知ってもらうことも大切だと思う。
ほとんどの保護者は、校長との接点はない。「名前も顔も知らない」というのも珍しくないだろう。新校長であれば、なおさらである。
学校HPに、校長の「思い」を載せることで、保護者は校長を身近に感じ、学校も身近に感じることができる。
学校現場は多忙だと言われ、中には、HPの更新に時間を割けないという教育関係者もいることだろう。私自身、PTA活動を通してさまざまな教職員と触れ合う中で、その多忙さを目の当たりにしてきた。しかし、情報が適切に発信されていれば、保護者の学校への信頼が高まるきっかけになり、学校と保護者のすれ違いも減らしていけると考える。
「学校ホームページを活用するためのヒント」については、校長を含めた4人で、「思いを届ける学校ホームページ」(プラネクサス刊)を著した。皆さんの実践を充実させる参考にしていただければ幸いである。

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「日本教育新聞」の「新校長への伝言」というコーナーに寄稿した原稿です。

保護者から、新しく校長になる先生方にエールを送るつもりで書かせていただきました。
保護者はこんな風に学校を見ているよ、こんな情報を欲しいと思っているよ、という視点に気づいていただけるきっかけにしてもらえるといいなという思いです。
本文末にある「思いを届ける学校ホームページ」(プラネクサス刊)は、校長・保護者・ホームページのデザイナーの4人の共著です。それぞれの立場で学校ホームページに対する思いを書きました。


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