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ブランドって何なの?(統合版)

今できる限りほぼ毎日で「ブランド」をテーマについて書いてます。初めて読まれる方や、まとめて読まれる方は、ぜひこちらからどうぞ。

ブランドって何なのか?

ブランドについて仕事や授業で教える機会が多いのですが、最初のこの質問「ブランドって何ですか?」という問いが一番難しい気がしている。

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「ブランド」って聞いて思い浮かぶことは何ですか?なんでもいいので教えてください。とMBAの学生たちに聞くと、もちろん色んな要素が上がってくる。例えば上がってきたのはこのような要素です:「名前、会社名、ロゴ、スローガン、ファッション、個性、品質、付加価値、標準化、知名度、ステータス、大手、企業の象徴、安心、信頼、値段が高い、整ったシステム、スタバ、キヤノン、シャネル、ハイエンド、高いだけじゃない、価値の見える化、意味付け、広く知られている、信頼性、差別化、粗利、無形資産、デザイン、贅沢品を使うとき他人がどう思っているのか、色、会社の価値観、価値あるもの、高価、製品の価値を高めるもの、関心、モノやサービスの価値、代表となるプロダクト、会社を代表する製品、高くても欲しいもの・・・」

さすがMBA学生たち、色々な連想が出てきます。これは大体授業の最初にやっているので、どちらかというと世の中一般的な連想と近いのではないでしょうか。ブランドと聞いて思い浮かべることは本当に多種多様ですよね。そして、これはただ単に連想を聞いているだけなので、この段階でどれが正解とか不正解とかはないのですが、これを見てもブランドというものには色んな側面があるということが感じられますよね。

これが正解というわけではないのですが、フィリップ・コトラー教授はこのように定義しています。

「ブランドとは、名前、用語、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらの組み合わせであり、ある売り手グループの商品を競合の商品と差別化する目的でつけられたものである。」 "Brand is a name, term, sign symbol (or a combination of these) that identifies the maker or seller of the product"

この定義を見ると、ブランドの言葉の起源を思い出します。諸説あるようですが、ブランド(Brand)という言葉はもともとは牛などに焼印をつけて自分たちの牛を他の牛と差別化するBurnedから派生しているということがよく言われます。コトラー教授の定義は、ブランドの起源で紹介されている内容とほぼ同じだけあって、ブランドに関する最低限の考え方かもしれません。

一方でデヴィッド・A・アーカー教授は、ブランドエクイティについてこのように定義しています。

ブランドエクイティとは「ブランドの名前やシンボルと結びついたブランドの資産(あるいは負債)の集合であり、製品やサービスの提供価値を増大(減少)させるもの」 I defined brand equity as a set of brand assets and liabilities linked to a brand name and symbol, which add to or subtract from the value provided by a product or service.

アーカー教授の考えでは、マークで差別化するだけではなくて、それと結びついた資産があって、それによって製品やサービスの提供価値が変わってくると定義しています。こちらのほうがしっくりくるかもしれませんね。先ほどの自由想起の中にも、「製品の価値を高めるもの」という言い方がありましたが、いいブランドであればそういうことなのかもしれません。

アーカーは、ブランドエクイティには4つの側面があると元々言っています。

1つめは、ブランド・ロイヤルティ(忠誠心)です。顧客満足度を背景とした商品の継続購入などです。ロイヤルティというだけあって、どれだけ忠誠度の高いファンをつくれるか、そういうことです。そのブランドが好きで、継続購入をしたいと思うだけじゃなくて、他の人にオススメしてくれたり、宣伝してくれるような人がたくさんいるブランドは強いブランドですよね。

2つめは、ブランド認知。これは、そのブランドをどれだけの人が知っているかということ。好きとかファンになる前にまずは知ってもらわないとなりませんよね。なのでこれはけっこう基本かなって思ってます。基本なんですけれど、一番ベースとして大事なところでもあります。どんなにいいブランドでも知られてなかったら始まらないですからね。

3つめは、ブランド連想(ブランド・イメージ)。ブランドに結びついた特定の連想・イメージのことです。先ほどの自由想起には、「ハイエンド」とか挙がっていましたが、そういうのもイメージだと思います。ブランドの名前を聞いて、想起するようなイメージ、形容詞、ファクト、など、ブランドを聞いたら連想するもののことです。

4つめは、知覚品質です。品質面で優れていると顧客が感じているかということです。本当に品質がいいかという事実よりも、顧客が品質についてどのように感じているか、そこが大事なポイントです。そういう意味では、先ほどのブランド連想の中にも入るかもしれないという気もします。

いまは、5つめの構成要素として、「その他のブランド資産」というものも挙げられています。特許とか商標権、著作権などの知的所有権や、独自のノウハウや技術など、ブランドの価値を支える無形の資産のことです。

個人的にこの5つのレベル感があまり揃っていないような気もし的になるところではありますが、あくまでもアーカー教授が提起しているブランドエクイティの構成要素として参考までにベースを覚えておきましょう。

どんなものでもブランドである

「ブランドって高級品ですよね」とか、「贅沢品のことをブランドと言いますよね」とかもよく聞くことだと思います。それは、いわゆる「ブランドもの」と呼ばれる高級ブランドを想起している人が多いのだと思います。ただし、基礎的なことではあるのですが、ブランド=高級品ブランドではないということは抑えておきましょう。完全に間違っているわけでもないのですが、ブランドというのはもっと広い意味があるので、ブランドといっても高級品ブランドのことだけをいうのではないということです。

ブランド>高級品ブランド って感じですかね。あえて書けば。

どんなものでもブランドになるわけなのですが、例えばどいうものがあるでしょうか。アップル、スターバックス、ルルレモン、日産、こういう企業及び企業が提供している商品やサービス、これはブランドですよね。まずこの段階で、高級品ブランドだけがブランドではないということはわかると思います。

グーグル、フェイスブック、ツイッター、TikTok、アマゾンプライムこういうネットのサービスとかスマホアプリ、これもブランドですね。名前を聞くと、もちろんサービス内容も思い浮かびますが、サービスがいいとか使いやすいとか、いろんなイメージも浮かびますよね。

他にも、広島東洋カープ、マンチェスターU、のようなスポーツチーム、関サバとか、大間のマグロ、松坂牛、陽澄湖の上海蟹などの海産物や農産品、はたまた、落合陽一さんやNiziUさんなどの著名人、芸能人もブランドになります。もちろん名前を知っているし、名前を聞いただけでも、いいイメージや品質を想起しますよね。そういった意味では、これらはすべて成功しているブランドと言えるでしょう。

でもブランド、という観点で言えば、あなた自身もブランドです。あなたの名前を聞いて、あなたの所属している組織やコミュニティの中で、どのように思われているか。名前を聞いただけでどのようなイメージが想起されるか。強いブランドかどうかは人によるでしょうが、あなた自身もブランドであるということは覚えておくと良いでしょう。

このあとブランドというものはどのような要素で構成されているのか、どうやって作っていくのか、などもご説明したいと思いますので、その要素や手法は自分自身のブランド構築にも当てはまりますので、是非ご参照してみてください。

ブランディングとマーケティングの違い

よく受ける質問の一つとして、ブランディングとマーケティングって何が違うんですか?という質問があります。

もちろん領域的には近いところとかかぶるところもあるかもしれませんが、同じ意味ではないので、その違いを少しまとめてみたいと思います。

ブランドとかブランディングは、前に書いた(ブランドって何なのか?)ように、「他者と差別化するための名前やシンボルとそこに結びついたイメージや価値の資産」だとすると、一方のマーケティングとはそもそも何でしょうか。

「マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセスである」(コトラー&ケラー)

「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・流通・交換するための活動、一連の制度、プロセスである。」(米国マーケティング協会)

この定義を見ると、「プロセス」ということが強調されていると思います。ドラッカーはこのように言っています。

「マーケティングの狙いはセリング(売る行為)を不要にすることだ。マーケティングの狙いは顧客を知り尽くし、理解し尽くして、製品やサービスが顧客にぴったりと合うものになり、ひとりでに売れるようにすることである」(ドラッカー)

ここでは、「顧客をよく知って理解する」ということが強調されています。さらに、もう一つ定義を見ると、このようなものもありました。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」(日本マーケティング協会、1990年 )

やはりここでも「顧客の理解」と市場創造のための「総合的な活動」というのが挙げられています。

私たちのようなマーケターがマーケティングのプロセスというと、一般的にこのような伝統的な流れが頭に浮かぶと思います。

リサーチ→STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)→マーケティングミックス戦略(4P:製品・サービス、価格、流通・チャネル、プロモーション)→実行→効果測定・チェック

ざっくりと言って、リサーチ→分析→戦略策定→実行→効果検証というようなフローを多くの人がマーケティングといえば想起するでしょう。

そう言った意味で、マーケティングはプロセスであるし、分析フェーズでも顧客を理解することというのはとても重要になります。

このように考えると、マーケティングは顧客理解を中心としたプロセスであるし、短期的な取り組みにつながるものが多いかもしれません。どうやって商品やサービスを販促するか、売り上げを伸ばせるか、そのための分析や実行が主にカバーする領域でしょう。

それと比べると、ブランディングは、短期的に特定商品を売るための活動というよりも、中長期的にブランドを好きになってもらうための総合的な活動といえるでしょう。ブランドの価値や信念(ブランドのWhy:後日後述します)を明確にして伝えていく。自分たちの存在目的はこういうことで、だからこういう商品やサービスを提供しているので、良かったら好きになってください。というアプローチです。そう言った意味では、マーケティングが顧客視点なのに対して、ブランディングは自社の存在目的起点と言えるかもしれません。

総合的な活動というのは、お客さん向けにやるだけではなくて、従業員など会内に向けても重要な活動になるからです。自分が働いている会社のブランディングがよいと、従業員のエンゲージメントも上がります。

簡単にまとめてみると、

マーケティング:短期〜中期、販売促進、顧客理解起点、対外活動

ブランディング:中期〜長期、付加価値、自社の存在目的(パーパス、Why)起点、対外対内活動

他にもありますが、マーケティングとブランディングには主にはこのような違いがあるとまとめられます。詳細についてはまた別の章で詳しく解説していきたいと思います。

強いブランドのメリットは?

今日は強いブランドのメリットについて簡単に説明します。

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強いブランドってどんなメリットがあるのか?ぱっと言われると、ファンが多いとか、割引しなくても売れるとか、いろんなメリットが考えられそうです。

一番よくあげられるのは、強いブランドは、価格プレミアムを乗せられるということです。同じコーヒーであっても、何もマークのついていないコーヒーであれば、人は200円くらいしか価値を感じないとしても、スターバックスのコーヒであれば、400円くらい払っても仕方がないと思います。これは、スターバックスに人はブランド価値を感じているからです。中身が同じものであろうとも、もしかしたらノンブランドのコーヒーの方が高級で美味しいかもしれないけれど、それはわからないし、私たちはスターバックスというブランドを信頼しているし、評価しているからこの値段を払ってもいいと感じている訳です。

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このように、強いブランドは、信頼と選択の理由になります。長年の信頼や実績により、日本航空や全日空であれば、安全で品質もしっかりしている航空会社だと思っている訳です。そんな飛行機はありませんが、もし何もブランドがついていない(あるいはほぼ無名の)飛行機会社があれば、それはたとえ激安運賃であろうともできれば乗りたくないと誰もが思うでしょう。

また、真に強いブランドは、一体感とブランド忠誠を生み出します。ブランドを熱狂的に愛するファンは自分をブランドと一体化して、まるで宗教のようにブランドの普及を周囲にまで広げてくれます。ブランドのロゴを自分の体にタトゥとして入れる人などはその強い熱狂の一例でしょう。なかなかそこまでの熱狂を生み出すブランドになるというのは簡単ではありませんが、ブランドの成功として一定のファンを生み出すというのは理解しやすいでしょう。

最後に強いブランドとは、イメージや価格プレミアムに影響するだけではなくて、会社全体の時価総額の評価にも影響します。アメリカの研究では、強いブランドは財務上の成果を出し、株式市場においても強いパフォーマンスを発揮すると言われています。また、市場が経済危機に陥った後にも強いブランドの方が危機から早く回復できると言われています。

強いブランドにはいろんなメリットがあるというのは、それほど想像が難しくないと思いますが、それでは、どうやって強いブランドを作っていけばいいのでしょうか?明日以降はそのあたりを書いていきたいと思います。


自分のブランドをつくる:パーソナルブランディングってどう考えればいいのか?

パーソナルブランディングについて書いてみたいと思います。

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ブランドは、商品でもサービスでも企業でも魚でも牛でもブランドになれるという話を前に書きましたが、もちろん人に関してもブランドになります。菅義偉、大谷翔平、藤井聡太、草間彌生、玉森裕太などなど。名前を聞いたらいろんなイメージを想起しますよね。頭がいいとか、こういう作品があるとか、こんな人柄とか、二刀流とか、いろんなイメージや、情報が人の名前から想起されます。

これは有名人だからブランドになるということではなくて、私たちのような一般人でも自分の周囲の人たちの間ではブランドになるということをまずは覚えておいた方がいいと思います。

もちろん、有名人は、知名度が高いのでかなり広範囲の人から認知をされてイメージも含めて知ってもらえますので、非常に強いブランドと言えるでしょう。私たちは、それほど強いブランドではないですが、それでも知人友人などの間では何かしらのブランドとして存在しています。

例えばあなたの友人のNさんを想像してみてください。どういうことをイメージしますか?例えばですが、スタイルがいい、英語ができる、外資系企業を渡り歩いている、さっぱりとしてクールな人間関係、意外と人懐っこい、実は関西人、などあがるとします。概ねこの人に対するイメージはいい方ですよね。ポジティブなブランドです。

もう一人別の人物も想像してみましょう。仮にOさんとしましょう。うーん、この人は、話が長い、そのわりには物事の実行力がない、性格は優しい、うっかりミスが多い、ゴルフが得意、などというイメージがあるとします。こちらの人はあまりイメージが良くないですよね。どちらかというとネガティブなブランドとも言えるかもしれません。

でも、こういったブランドイメージをマネジメントするにはどうしたらいいのでしょうか?見た目とか、言動や行動を変えていけばいいのでしょうか?もちろんそうでしょうが、それは小手先なものになってしまいます。順番としては、どんなブランドも最初のブランド設計が大事になります。

そもそも、あなたはどういうブランドになりたいのか?

もっというと、あなたは何を信じていて、何をしたいのか?なぜあなたは存在しているのか?あなたのミッションは何か?ということを全ての起点に考えると良いと思います。これがあなたのブランドを作る最初の出発点になります。

でも、これは本当に難しいことなので、またそこを見つけるための具体的なやり方については再度書きたいと思いますが、一度自分のミッション・ステイトメント(自分のミッションを1文に言語化したもの)を定められると、いろんなことがクリアになります。

「自分のミッション」 → 「特徴・経験・スキル」 → 「行動」

こういった構造でしょうか。自分のミッションがクリアになることで、それに基づいた自分の特徴、経験、スキルに意味づけがされる。そして、それらの特徴、経験、スキルに基づいた行動に意味が見えてくる。こういった構造を意識してみるといいと思います。

ご覧になったことのある方は、ピンとくると思いますが、これはTEDでも有名な講演であるサイモン・シネックさんのGolden Circle理論と同じです。

「Why」 → 「How」 → 「What」

「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」という動画において
サイモン・シネックはシンプルで強力なモデルを使って周りを動かすリーダーシップについて説明しています。
シネック氏は、強いブランドには明確なWhy(存在意義・信念)があって、そこから派生する機能や特徴であるHowがあって、それがあるから最終的な商品やサービスがある。強いブランドは、明確なコアがあるからこそ、商品やサービスに共感する人がいるという考えを提唱しています。

ご覧になったことのない方は、日本語字幕もあるので、最初の5分だけでもみてみるとよくわかると思います。

そしてそれを個人に当てはめてみても同じことが言えるので、同じ理論で自分自身というブランドについて考えてみるといいと思います。

「自分のミッション」 → 「特徴・経験・スキル」 → 「行動」

「Why」 → 「How」 → 「What」

これを一度大きなノートにブレストして書いてみる。自分のことを深く考えてみる時間というのは本当に貴重な時間になると思いますよ。ぜひやってみてください。

何か質問などありましたらいつでもご連絡ください*

(つづく)

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