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自動化か、現場で働く人の幸せか

こんにちは。オプティマインド代表の松下健です。
本記事では、社会課題の解決を目指す方々にとってぶつかるであろう、見つめずには通れないであろう二項対立な事象について書いてみました。主語を何にするか、社会なのか、経営者なのか、現場なのか、で、誰かが幸せになり、誰かが不幸になるかもしれない、という二項対立についてです。

以前「AIは物流現場の仕事を奪うのか」というnoteを書きました。オプティマインドが展開する自動配車システム「Loogia」では、物流会社の配車担当の方が行う「配車計画を立てる業務」を自動化します。配車計画の自動化で配車担当の方の仕事はなくなるのではなく、ドライバーさんとのコミュニケーションや、納品先との調整など人間にしかできない業務にミッションシフトしていくべきと述べました。

でもちょっと待てよ、と。

「自分のやりがいはどれだけ効率の良い配車計画を自分の手で立てられるかだ。ドライバーの体調を聞いたり、関係者との調整がしたくて配車係の仕事をしているわけではない。」
「毎日、自分で運転しながらルートを考えることが楽しみだ。うまく行ったらやりがいになる。」

そう思う配車担当やドライバーの方もいると思います。自動配車システムを展開している以上、私たちは配車担当の方やドライバーさんの仕事の幸せを奪ってしまうかもしれないという問題に対して避けることはできず、やはり、真っ向から向き合って考える必要があります。

人が仕事をする上での幸せはどこにあるのでしょうか。私は「創意工夫」だと思います。もちろん報酬が仕事の幸せと感じる方もいますが、根底には自分の創意工夫によって得られる幸せ、自己実現や問題解決をしたときの喜びがあるのではないかと思います。心理学では「内発的動機づけ」と言われ、報酬などの外的要因は関係なく、自分の興味関心や「これが楽しい」という気持ちが湧き出る状態です。

物流現場でも同様に、配車担当の方の「今日は良い計画が組めたな」、ドライバーさんの「先にこっちのルートを通ったから早く到着できたな」といった創意工夫から得られる喜びや幸せが必ずあります。一方、経営陣からするとLoogiaで配車を自動化することで、配送効率が上がったりベテラン依存から脱却できることで、経営が安定するメリットがあるのも事実です。

まだ自動車が存在せず、馬車が主な移動手段だった時代がありました。そのときには馬を巧みに操り、いかに揺れずに乗客を運ぶかに注力していた馬車の運転手である「御者」の方がいたかもしれません。その御者の幸せを維持するために「自動車なんて反対だ。仮に自動車が浸透しても御者のために馬車を走らせ続けるべきだ」という思考は極端だと思います。

物流現場の方々の業務とLoogiaも、上記と同じ関係性かなと思うのです。そうなったときに、「物流会社の経営はどうなってもいいからドライバーや配車担当の業務をそのまま残すべきだ」は違うと思いますし、「現場の声に耳なんか傾けなくても、ただシステムに合わせて働いてもらえばいい」という考え方ももちろん違います。

極論を言ってしまうのは簡単ですが、大切なのは二項対立の関係にある両者がどうしたら幸せになれるかを考えることです。生死に関わる問題ではありませんが、正解がないという点でトロッコ問題と似ている事象だと思います。トロッコ問題は、自分がハンドルを切ることで一人の方が犠牲になるのか、ハンドルを切ることなく5人の方が犠牲になるのか、という問いであり、正解はありません。ドライバーや配車担当の方の幸せを取るのか、自動化による経営改善を取るのか。これにもどちらが正しいという正解はないのです。

ではどうしたらいいのか。大事なことは、正解がないからこそ配車担当の方もドライバーさんも、経営陣もみんなが幸せになる策を考え続けることです。「オプティマインドのやってることって現場の仕事を奪うよね。どう考えてるの?」と聞かれたとき。「配車担当の仕事なんてなくてもLoogiaを使えばいいですよ」というテクノロジー至上主義的な返答と、「解はまだないんですけど、こう考えていて、僕らもめちゃくちゃ模索しているんです」と言えることは全く違います。

社会課題を解決していくにはテクノロジーによる自動化や効率化は避けられないと思いますが、ギリギリのギリッギリまで、現場も経営も幸せになる最善の策はないのか?を真っ向から真剣に考え続けるべきです。そうありたいです。それは例えば、現場の方が創意工夫できるような仕組みや、AIを育ててもらえるようなシステムにすることかもしれません。

二項対立の関係にある両者を、どうやったら技術で、どうやったら自分たちの力で両立できるのか。オプティマインドの事業には”トロッコ問題”が背景に存在することを心に留めて、両者を救う、両者を幸せにする方法を真剣に模索し続けること。テクノロジーや合理性に傾倒しすぎずに、現場の声を無下にすることなく、とはいえ現場に引っ張られすぎることもなく、真摯に耳を傾け続け、真剣に向き合い、考えて、考えて、考えて・・・考え続けること。
まずは自分たちが温かく人間くさい会社でありたいと思います。

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