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大学発スタートアップが直面した研究とビジネスのギャップ

こんにちは。オプティマインド代表の松下健です。

オプティマインドは、大学の研究で出会った技術を実社会に活かしたいという想いからスタートした「大学発スタートアップ」です。大学時代でのアルゴリズム研究を通し、これを実社会に活かすことで世の中の課題解決に繋がるのではないかという熱い想いを抱きながら会社を設立しましたが、起業から今日に至るまで、研究とビジネスの間には大きなギャップがあると常に感じてきました。

研究をビジネスとして実社会に活かすために大事なことは、研究と現場の間で生じるギャップを埋め続けること。そして技術を技術で留めず、価値に変えてお客様の元へデリバリーすることです。今回は、私たちが直面してきた大学での研究とビジネス化の間のギャップについて、3点お話したいと思います。

【本noteの要約】
・研究と実際の現場で必ず生じるギャップを埋めないと研究をビジネスにはできない。
・「研究技術」を「現場で活きる技術」にするには、その技術の周辺開発に投資する必要がある。
・現場ならではの事情が多く、研究での前提仮説は使えない。
・研究では定量的なデータで評価されるが、現場では定性的に判断される。
・研究とビジネスのギャップを埋めて技術を価値に変え、お客様に届けることは社会的意義が高いだけでなく非常に面白い。

論文の技術はそのまま使えない

研究で評価されるようなコアな技術も、そのままの状態では現場で使うことはできません。お客様の現場で使えるようにするには、技術そのもの以外の開発や環境整備を行う必要があります。

例えばオプティマインドでは、コアなアルゴリズムだけが存在していても、インプットするデータや、そのデータを入力する画面、計算した後に結果を見る画面などが必要です。そしてどれも、研究者ではなく現場の方々が使いやすいように設計します。

システム自体も、研究者のローカルで動けばOKではなく、お客様の環境で24時間365日、アクセスできるようにサーバーに乗せ、稼働し続けるように保守運用することが必要です。システム面だけでなく、お客様からのお問い合わせにも対応できる体制を整えます。「研究での技術」を「現場に届ける」ためには、技術以外の周辺環境を作り上げなければならないのです。

また、技術をお客様が使えるよう整えるだけではなく、このコアな技術がどうしてお客様にとってメリットがあるのかを伝えることが不可欠です。研究であれば、専門用語を用いて論文を書き、ベンチマークを基に定量比較した結果を発表するという手順を踏みますが、いくら素晴らしい論文を見せたところで現場の方に技術の良さは伝わりません。そもそもお客様は技術そのものではなく、課題解決などへの手段を求めています。お客様にお金を払って使いたいと思ってもらうには、現場側の言葉に置き換えて、技術の凄さではなくお客様に提供できるメリットを伝えることが重要です。

コア技術を現場に届けるための開発や周辺環境整備を行うことと、お客様にその価値を説明すること。この2点を実現するためには、人材採用やシステム開発などの大規模な先行投資をしていかなくてはなりません。

現場には研究での前提条件が通用しない

アルゴリズム研究を行う学術界では、研究のコア部分を明確化し、それ以外の条件を他の研究と揃えるために、問題設定で様々な前提条件の設定(仮説)を置きます。例えば「全ての2点間の移動速度は時速40kmとする」や「配送先でかかる所要時間は一律10分とする」などです。

当たり前ではありますが、現実世界ではそんなことはないため、これらの前提条件は全て意味を成さなくなります

例えば、例で出した「全ての2点間の移動速度は時速40kmとする」に関して。実際の道路では、大通りや裏道など2点間の通り方は無数にあり、その組合せによって移動速度は異なり、結果として所要時間も異なります。

ルート最適化では、様々な通り方のパターン全てに対して速度推定を行い、結果として「A地点からB地点は最短で10分間」と算出しなければなりません。その上、朝と昼の道路の混雑状況の違いや、渋滞の有無、高さ制限のある4tトラックが通れる道なのかなど、現場では考慮しなければならない条件がいくつもあります。研究上での「全ての2点間の移動速度は時速40kmとする」という前提は実際の道路では通用しないのです。

コアな研究領域である組合せ最適化アルゴリズム部分だけでなく、実際の道路に適応した計算結果を出すために、速度データを解析するデータサイエンティストの採用や、地図を構築する地図エンジニアが欠かせません。もちろん、ベースとなる地図情報(正確には道路ネットワーク情報)を地図会社から購入することも必要です。

技術に対する評価軸が違う

良いアルゴリズムとは何かという評価軸は、研究では確立された指標で見ますが、現場では違います。研究では最小値が出せたアルゴリズムが良いとされる場合でも、現場では最小値を示す結果が必ずしも良いとは言えません。

どういうことかというと、例えば30点の配送先に対してルート最適化をした場合に、総走行距離が100㎞よりも97㎞が良しとされます。また、同じ解が出る場合、計算時間が25秒かかるアルゴリズムよりも23秒で終えるアルゴリズムの方が良いとされます。定量化された共通評価軸を基に学術界では評価されます。

しかし、現場では、定量的な数字ではなく、定性的な評価軸も加味して判断がされます。例えば、そのドライバーさんが通りやすい道か、ドライバーさん同士の業務負荷のバランスが取れているか、など多種多様な観点から良い計算結果かを判断します。

シンプルに研究上での指標だけを追い求めると、現場で評価されるものにはならない」という難しさがありますが、そこはもう現場に足を運び、何が現場では良い計算とされるのかをひたすら聞いて愚直にチューニングしていく。これが、結果として秘伝のタレ的な競争優位性となり、徐々にお客様に受け入れられる技術となっていきます。

マーケティングやブランディングの重要性

少し話は逸れますが、研究技術をお客様に届け続けるためには、ビジネス観点でのマーケティングやブランディングのスキルも上げていかなければならないと感じています。

正直なところ、技術面で疑問を抱きたくなるような会社で、マーケティング力が高く、魅せ方が上手なケースが散見されます。正しいことを正しく行い、誠実に研究開発をしていても、それがお客様にとって魅力的に伝わるかはイコールではない。正しい技術だからこそ、その技術を正しく、そして最大限お客様にとって魅力的に見せ、お客様に導入していただき、しっかりと利益を出さなければ、結果として誠実な研究開発をし続けることはできません良い技術を持っているから発信しなくても気づいてくれるだろう、という傲慢さはビジネスでは通用しないことを起業をしてから学びました。

最後に

ここまで研究とビジネスのギャップを記載しましたが、このギャップを埋めない限り、研究を実社会で活かすことはできないと痛感してきました。だから大変なのです、と伝えたいのではなく、研究と現場のギャップを埋めることに価値や面白さがあることを伝えたいです。

優秀な技術者の方々が日々素晴らしい成果を残し、実社会を毎日支えている素敵な現場の方々がたくさんいらっしゃいますが、それぞれが分離していては非常に勿体ないです。だからこそ技術と現場の架け橋になることは、社会的意義の高いことだと思います。研究とビジネスのギャップを埋め、技術を価値に変えてお客様にデリバリーする。オプティマインドの使命であり、ここに面白さがあるのです。

弊社では技術と実社会の架け橋となり、社会課題の解決に貢献する仲間を募集しています!社会的使命とやりがいをお約束いたします。カジュアル面談も大歓迎ですので、気軽にお声がけください。

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