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半分で二倍_ハーフカメラが写すもの
久しぶりの東京の夏。とにかく暑い。
東京ってこんなに暑かったっけ?と思うけれど、社会人一年目に行った記憶の中の大阪はさらに暑かった。事務所のドアを開けると熱風が吹き込んでくる。意を決して外の世界に飛び込む未知の世界。そんな新社会人生活だった。
東京で働くのは15年ぶり。15年前はリーマンショックも震災も起こる前の、なんとなく始まった21世紀の世界。
そんな20代。私はなぜかカメラにハマっていた。デジタルカメラもフィルムカメラも何種類も持っていて、出かける時もデジカメとフィルムカメラを両方持っていき、写真を撮りまくっていた。大した写真ではないけれど、おかげで20年経ってnoteのトップの写真にだけは困らない。
ゼンザブロニカの中判カメラを筆頭にニコン、コニカ、ポラロイド、オリンパス、コンタックスに富士フィルム。
ありとあらゆるメーカーのカメラをいくつも持ち歩いては、何かに追い立てられるかのようにシャッターを切り、21世紀初め、20代の自分の周りの世界の光をフィルムに焼き付けていた。特に好きだったのは右下に日付がオレンジ色で刻印されるデート機能と普通のカメラの半分のサイズで撮影するハーフカメラ。
数えきれないくらいのフィルムカメラを持っていたけれどほとんど手放して、今も手元にあるのは、リコーのGR1sというとてもよく写るコンパクトカメラと、これまたリコーのオートハーフというハーフカメラの二台だけだ。
GR1sは、コンパクトなのに本当によく写るカメラで、デート機能もあるお気に入りのカメラ。
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そしてリコーオートハーフは、ゼンマイを巻いてシャッターを押すと自動でフィルムを巻いてくれるギミックの50年以上前のカメラ。
ハーフカメラは36枚撮りのフィルムで72枚撮影できる、コスパ全盛の今でもヒットしそうなコンセプトのカメラ。ドイツで標準化したライカ判と呼ばれる36㎜×24㎜のフィルム枠に、無理矢理18㎜×24㎜の写真を縦に2枚写すという昭和日本の貧しさと工夫を体現するような涙ぐましいフォーマットのカメラだ。
このカメラで撮影した写真をフィルムスキャナでデジタル化すると、二枚の写真が縦に並んで一枚の画像データになる。フィルムカメラは事前に確認できないのでどのような並びになるのかはスキャンしてみないとわからないのも面白い。二回シャッターを切る間の時間が、黒い枠となって映り込む。それは数秒だったり、数年だったりする。
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写真は、私たちの人生のある瞬間を焼き付ける。
デート機能で記号的に焼き付けられたり、2枚の写真の並びの中に焼きつけられる、わたしたちの人生。
かつては街中にあった現像するお店もほとんどなくなり、フィルムも現像代もプリント代も絶句するくらい高額になってしまった2020年代。
そして、フィルムが手に入り、それを現像もできる時代はもうすぐ本当に終わってしまうのかもしれない。
まだ手元にあるフィルムカメラと古いフィルム。それで写すべき人生の瞬間。
そんな瞬間が、まだ残っていることに感謝。
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