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科学という宗教が考える「あの世」とは?

偉い科学者によると、138億年前にビッグバンが起こり宇宙が始まったらしい。じゃあ、宇宙が始まる138億年前のビッグバンの前は何があったのか、気になるところだけれど、偉い科学者によるとビッグバンで時間と空間が一緒に爆発して始まったので、それより前は時間も空間もないらしい。とても不思議だ。私は不思議なことをぼんやり考えるのが割と好きだ。理論的でもオカルト的でもなく、ただぼんやり考えるだけ。

今読んでいる本は田坂広志著
「死は存在しない ― 最先端量子科学が示す新たな仮説」

私は死後の世界とかそういうものにほとんど興味がないのだけれど、最近読んだ「量子革命」で量子力学が生まれたころの話を興味深くよんだのと、最近見た映画「すずめの戸締り」にでてくる扉の向こうの世界:常世とこよは「すべての時間と場所が存在し、私たちの魂の数だけあるが、それは同じもの」という世界観と量子力学とのつながりに興味を惹かれた。

「常世」というのは新海誠の作り出した世界観ではなく、日本古来の世界観。浦島太郎が行った竜宮城も常世にあったらしい。そんな常世と量子力学にどんな関係があるのだろうか。

「死は存在しない」で一つの仮説として提示される「ゼロポイントフィールド」。そこには過去、現在、未来(のあらゆる可能性)の全ての情報が波動情報として記録されており、それは量子真空の中にあるという。そもそも138億年前に量子真空のゆらぎがビックバンを引き起こし、今の質量をもつ私たちが認識できる宇宙の構造が生まれたということだ。

日本古来の世界観や様々な宗教の世界観と量子力学的仮説の類似点はとても面白い。田坂氏はそもそも科学が一つの宗教であり、現代文明は、科学という宗教を信じないものを魔女のように扱う世界になっているという。私は科学の信奉者だけれど、田坂氏が言っていることもわかる気がする。

話は戻ってゼロポイントフィールド。そこはあらゆる波動情報がビッグバンの始まりのころから残っている。なぜ残っているかと言えばゼロポイントフィールドでは減衰が起こらないから。周波数を合わせれば聞こえるラジオは波そのものだ。湖面の波と同じように空間の広がりとともに波の密度は薄まる(減衰する)。空間の広がりの概念のないゼロポイントフィールでは減衰が起こらず、過去から現在までのすべての波動情報がそのまま残っているということだろう。そして、未来とは、現在の波動情報に起因して発生するあらゆる可能性のことだ。過去から現在までのすべての波動情報がすべて残っているということは、そこには未来の情報もそのまま丸ごと含まれているということになる。

この世界のすべてのことは、138億年前の量子真空の揺らぎから始まって、それ以降のあらゆる情報は、ゼロポイントフィールドという場所(?)に残されているという仮説。科学という宗教を信じるものとしては、天国とか地獄とか輪廻という考え方よりも真実に近い気がして、興味深かった。



2022年のノーベル物理学賞は「量子もつれ」の研究者である、仏サクレー大学のアラン・アスペ博士、米クラウザー研究所のジョン・クラウザー博士、オーストリア・ウィーン大学のアントン・ツァイリンガー博士が受賞した。私はそれを説明できるほど詳しくないので気になる方のためにリンク。

簡単にいうと、量子力学では、粒子は非常に小さなミクロの距離においては粒子が相互作業を起こして量子のもつれが起こり、距離が離れた後でも相互に作用するという不思議な現象だ。それが実際に生じることが証明され、発見者はノーベル賞を受賞し、成果は量子コンピューターに応用されている。

相互作用は距離が離れると減衰が発生し、すぐに壊れてしまうということだけれど、138億年前にはすべての粒子は1点に凝縮されていたわけだから、その時点では、この世界を構成するすべてのものは強い相互作用を持っていたはずだ。そうすると減衰の起こらないゼロポイントフィールドにおいては、今でもすべての事象は密接な相互作用を保っている、ということになる。


きっとそれを感じることができないだけで、私たちは、すべてのもの、すべての空間、すべての時間と相互に作用しながらこの瞬間、この世に生きているのだろう。そう考えると、死んだらすべてはおしまいで、あとはすべてが無になるというほうが荒唐無稽こうとうむけいな考え方なのかもしれない。

すべての時間とすべての場所があるという「常世ゼロポイントフィールド
どんな世界か想像もつかないけれど、もしかしたらこの世と全く同じ世界なのかもしれない。

私たちが認識できないだけで、私たちは過去、現在、未来のすべての時間、すべての人、すべての場所とが相互に作用しあう世界に生きているのかもしれない。そんなことをぼんやりと考える平和な休日。




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