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運動音痴こそパーソナルトレーニングへ行こう

パーソナルジムに通い出して8ヵ月が経った。別人のように痩せたとか、腹筋が割れたとか、目立ってわかりやすい変化はない。けれども、通って良かった。月謝は決して安くないが、悪くはない出費だと思えるくらいは満足している。

パーソナルジムといえばボディメイクへの意識が高い層、あるいは既に筋肉ムキムキな人が更なる高みを目指して通う場所、というイメージが強いかもしれない。しかしながら、私は「これ以上太るのは嫌だけど、別に腹筋を割りたいわけではないし、運動も苦手で嫌い」な意識低い系だ。日頃の私をよく知る友人に「実はジムに行き始めたんだよね」と申告した時も「柄にもないもないことを始めたね」と言われてしまった。私自身もそう思うのだから況やである。

学生時代、授業を真面目に受けて、ペーパーテストはしっかり点数を取っても、私の保健体育の成績通知表は5段階中3だった。「スポーツテストの結果も評価に入るからね。運動が苦手な人には申し訳ないけど」と先生は宣った。学年でワースト10に入る運動音痴の私には絶望的な評価基準であった。

瞬発力がない、持久力もない、柔軟性もない、力も弱い。だからスポーツは何をやってもうまくいかない、楽しくない。中学時代、親友に強く勧誘されて2年半だけソフトテニス部に入っていた以外は運動を避けて生きてきた人生であった。別にそれで良かった。

ところが、寄る年波が私を許してくれなかった。体力の低下である。私は年に何度か京都の街を訪れ、四季折々の景色を見て歩きまわるのを楽しみとしている。昨年の春、9泊10日の滞在期間中、疲れで起きられない朝があった。折しも桜が最も美しい頃である。その日は早起きして嵐山の天龍寺でも拝観して、午後から仕事をする予定だった。しかし、二度寝し、三度寝し、私ってこんなに体力がなかったっけな……と落ち込みつつ、11時頃にようやくノソノソと布団の外へ出た。貴重な滞在中の半日を潰してしまった。

また、もっと切実な話が体型である。まず20代の終わりぐらいから痩せにくくなってきた。元々痩せ型だったのに、緩やかに増量し、今やごく普通の体型になってしまった。昔はちょっとお菓子を食べなくなったらすぐに体重が減ったというのに、どうも問屋が卸さない。加齢による新陳代謝の低下である。普通体型が維持できるのであれば良いのだが、これ以上太ってしまうのは困る。今、着ている服が着れなくなってしまう。買い換えるなんてとんでもない出費だ。お金も服も勿体ない。

やばい、このままでは絶対にやばい。ヒシヒシと危機感を感じだしたある日、マンションのポストに入っていたパーソナルジムオープンのチラシが目に入った。なんと我が家から徒歩10分圏内。徒歩20分圏内にスポーツジムがあるのは知っていたが、今まで運動を避けて生きてきただけあって、どうやってジムの器具を使うのかわからないし、定期的に自らジムへ通っているイメージが持てずにいた。ただ、パーソナルトレーニングならどうだろう。私のレベルに合わせて指導していただけるのではないか。個人レッスンゆえに、通わなくなるという選択肢がないのではないか。しっかり課金すれば私の性格ならば勿体ないオバケが出て、嫌でもジムへ足が向くのではないか。

少し悩んだものの、体験レッスンを申し込んだ。先生は柔道→ボクシングからのトレーナーというだけあって大変ガタイが良かった。独立前は大手ジム勤務というだけあって接客スキルを感じるおにいさんで、運動音痴な私にも理解を示してくださり、嫌な感じがなかった。月謝の高さには躊躇いはあったものの、本当に懐がしんどくなったらやめたら良いと言い聞かせて、月に8 回通うことにしたのだった。

パーソナルトレーニングの良さは、自分のペースにあわせてメニューを組んでもらえることだろう。トレーニングにおける自分のペースというのは難しい。負荷が軽すぎると鍛えられないし、負荷が重すぎると怪我の元だ。プロに客観的に見立ててもらい、今の自分に合った負荷でトレーニングをする。疲れ具合を見て負荷を変更してもらう。付きっきりなので、万が一危ない時はすぐに補助に入ってもらえる安心感。これは一人では出来ない。

人の目がないのも良い。周りと比べてできない自分を恥ずかしいと思うことがない。胸筋を鍛えるトレーニングとして代表的なベンチプレスという種目がある。台(ベンチ)に寝転んでバーベルを持ち上げるあれだ。例えば、女性で体重が40キロの人は、筋トレ未経験で8キロ、筋トレ1ヵ月程度で18キロ、半年程度で32キロ、2年程度で50キロ上げられるのが平均なのだという。だが、非力な私は筋トレ半年にしてようやく筋トレ暦1ヵ月の重さを上げられるようになった。多くの人の目があるジムでは、勝手に出来る人と比べて肩身の狭い思いをしていただろう。

そういうわけで通い出して8ヵ月。始めに記したように、別人のように痩せたとか、腹筋が割れたとか、目立ってわかりやすい変化はない。健康診断では去年より2キロ痩せて、腹囲が1センチ減ったとあったが誤差の範囲だ。そもそも私の目的は体力向上と体型維持であり、減量ではないので食事制限はしていないことから、月に8回程度ジムに通ったからといって大きく変わるものではない。

けれども、最初は出来なかったメニューが続けていくことで出来るようになり、それに伴う筋肉が付いてきている実感は、運動音痴コンプレックスを少しずつ溶かしていく。30歳を過ぎて長年の心の澱が昇華されていくとは。実に心地が良い。また、トレーニングの中で得た思いがけない気づきだったが、どうやら私の背中の筋肉はトレーニングをしていない人に比べると鍛えられているという。背中がパックリ開いたドレス(持ってないけど)を着こなせるポテンシャルがあったのだ。運動が苦手でも、実は良いところもあった。嬉しい発見だった。

よって、運動音痴で意識低い系でもパーソナルトレーニングならばいける。柄ではなくとも「ジム通ってるんですか!凄い!」と言われる側になれる。すぐに目に見える変化はなくとも、確実に筋肉はついてコンプレックスも解消される。自分のことも好きになれる。運動音痴こそパーソナルトレーニングへ行こう。

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