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結婚による2度の引越しで2回泣いた話

結果的に年単位で保留にしていたプロポーズを受け入れたのは、「かわいそうだと思わない!?」ととうとう逆ギレされた遠距離恋愛の彼氏に折れたからだった。もちろん、今すぐの結婚を望むなら他をあたるように伝えた上での保留だったが、逆ギレももっともな話だった。

好きな人のプロポーズに二つ返事ができなかった理由の一つが、転居の問題であった。私は自他ともに認める京都好きだ。上洛目的で大学進学し、転職して京都に戻れることになった時は狂喜乱舞した。大好きな土地を離れたくなかったのだ。

とはいえ、別居婚は私の両親も夫も大反対だった。共に暮らすには、全国転勤可能な会社に勤めている私が動くしかなかった。夫に転職してもらう手もあったが、誰もが知っている大手企業勤務で、私の年収の倍を稼いでいる夫にそれは言えまい。

結納後、エリアの本部長に異動願いをし、4か月後、それは叶えられることになった。憧れて移住した何年も住み慣れた土地、そして大好きな仕事で何年もかけて信頼関係を築いた馴染みのお客様を捨てたような気分だった。自分が選んだことではあったが、拠点への最終出勤日や、転居届を出した市役所からの帰り道、涙が止まらなかった。

夫と暮らしだし、新しい拠点で新しい仕事を必死で覚えた。新拠点のメンバーは私を温かく迎えてくれた。新しい居場所を、一刻も自分のものにしたかった。私を指導してくれた先輩は、そんな私にこっそり話をして下さった。

≪実はまだ一部の人しか知らない話だけど、妊娠しているんです。自分の後任をどうしようか本当に困っていたところでした。京都から来てくれて本当に良かったです。仕事ぶりを見て安心しました。本当に心強いです。後を任せられます。これからもよろしく!≫

驚きの告白だったが、新しい拠点で頑張っていこうと私は改めて心に決めた。決めた筈だったが・・・

その数週間と経たぬうち、夫の転勤が決まった。私が転居して3か月も経っていなかった。部門長に相談し、やむを得ないとのことで、夫に併せて1ヵ月後の転勤が確定した。

最終出勤日、短い間であったものの、メンバーへ感謝を伝えながら私は泣いた。もらい泣きしてくれたある女子メンバーが

「寂しいですよね・・・私も寂しいです。まさかこんなに早くお別れなんて・・・!でも大丈夫ですよ、同じ会社ですもんね。本社会議でも会えますよ・・・!」

と抱きしめてくれた。

確かに寂しさはあった。しかし、私の胸中にはそれを上回る悲しさがあった。結婚したことによって、私は自分の人生のかじ取りがきかなくなってしまったように思えたのだ。自ら努力して手に入れてきた大事なものを手放し、夫の人生の従属物に成り下がったような、そんな錯覚を覚えた。とはいえ、そんなことは誰にも言えず、家に帰っても、一人わんわん声に出して泣きじゃくった。

・・・今になって思えば、ただのタイミングの悪さなのだが。

断っておくが、結婚生活はとても楽しい。私を見つけ出してくれた夫にはとても感謝している。ただ、夫への愛情と、私の大事にしたかったものは別物だった、という話である。


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