【実話】 横断歩道の男の子
父が元気な頃だから10年以上前のことだ。
私の両親が市内の大通りを車で走っていた。信号の無い横断歩道を、足で地面を蹴って進む乗用玩具に乗った、3歳くらいの男の子が渡ろうとしているのが見えた。
運転していた母は停止線で車を停めた。しかし一向に男の子が道を渡り切る様子がない。姿が見えないのだ。もしかしたら車の下にでも入ってしまったのかも知れないと、両親は車を降りて確かめた。しかし渡り切るはずだった歩道にも、渡り始めた歩道にも、もちろん車の下にも男の子の姿はない。後ろに停車した車の