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【1分小説】2「コンペイトー」(企画参加作)

 スルメをしゃぶりながら釣り糸を垂らす初老の男『吉井』。海岸から突き出た堤防に打ち付ける波の音とカモメの鳴き声が、のどかな田舎を想像させる。
 吉井の背中側で、反対側の海に青年『藤』が竿を振りに来た。缶ビールをプシュと開け、吉井に話しかける。

「どや」
「ボウズや、魚いないんちゃうかぁ?」
「ほんまかい、全部釣っちまったか」
「まぁ、暇じゃけ。糸垂らしとこ」

 いつもは釣れるポイントだから、藤と吉井はよく顔を合わせていた。釣れない日は珍しいようで、欠伸まで出る始末。

「糸動いてへんか? 吉井さん」
「あん? 最近目が悪うなってなぁ」
「居るには居るんやろな」

 のんびりとした空気でビールを飲み、藤は吉井に一缶渡した。

「おお、あんがとさん」

 ほんのわずかに動いた竿が徐々に大きく動く。よぼよぼとしていた吉井が若者のように飛び上がった。

「でっけぇんちゃうかぁ!」
「引くでぇ吉井さん!」

 一本の竿を二人で思い切り引くが、異常な力で竿ごと海へ引きずり込まれた。藤は必死に海面を探す。が、呼吸を乱した。
 あわてて吉井を探し、海面でバタつく吉井の元へ急ぐ。

「よ、吉井さん! かい、怪物だ! 早く陸っ」

 藤が騒ぐ最中に吉井は一気に海中へ引きずり込まれた。
 海は赤く染まらない。
 吉井は丸呑みされたのだ。巨大なマンボウの怪物に。


おわり

今回は僕の開催した企画の作品です。
これくらい短い参加だって大丈夫なんですよ😁

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😲他にもいろいろ創っているので、遊んでいってくださいね😲

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