ぼくたちの、たった一度のさよならを。
さよならを、ずっと先延ばしにしている。
そのことが、光のこころのどこかに巣食ってし
まっている。
滉も同じ思いの中にいるのか光は確かめる術も
ないし、そうすることがどこか、まだ早いのか
もしれないと言い訳のひとつにしてしまってい
た。
会社の制服の胸元についている名前のプレート
を見る度に、どうしてじぶんの名前が光と書い
て、「あきら」と読ませたかったのか、生後10
か月で死んでしまった自分の父親と母親に聞き
たい気持ちが湧いてきて、心がくもる。
じぶんがあきらじゃなか