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地域のみんなで取り組んでいるプロジェクトだから、ここまで来れた |「スマイル山雅農業プロジェクト」インタビュー vol.2 障がい者福祉サービス事業所・小野澤ハレルさん

2018年に立ち上がった、松本山雅FC(以下、山雅)のホームタウン活動「スマイル山雅農業プロジェクト」


青大豆「あやみどり」の栽培を通じて「遊休農地の活用」・「地域住民の交流活性化」・「青少年の育成」に貢献できるよう取り組んでいます。


このプロジェクト内で、あやみどりの収穫・選別・在庫管理などを担当してくださっている、社会福祉法人 長野県知的障害者育成会 ドリームワークス 施設長の小野澤ハレルさんに、このプロジェクトに関わっていく中で感じていることや期待することをお聞きしました。

小野澤ハレルさん プロフィール

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社会福祉法人 長野県知的障害者育成会 ドリームワークス 施設長。ドリームワークスから徒歩5分圏内にアルウィンがあるのだから、なにかお手伝いできることがないかとずっと考えていた。「スマイル山雅農業プロジェクト」において、重い障がいのある方の「仕事」としての位置付けができることを期待している。

ーー今回はインタビュー出演ありがとうございます!それではまずはじめに、ドリームワークスさんはどのような施設なのでしょうか。

小野澤:比較的障がいの重たい方々が通う日中活動場所です。生活介護と就労継続支援B型という福祉サービス事業所です。事業所には現在32人の利用者さんたちが通い、アート活動、音楽活動、ウォーキング、旅行、お菓子作り、資源回収、受託作業などの活動をしています。重い障がいがあっても地域の中で社会の一員として笑顔で毎日が過ごせるよう一人ひとりの障がいの特性に寄添いながら時間を共有しています。毎日、利用者さんからパワーをもらっています。


ーードリームワークスさんが「スマイル山雅農業プロジェクト」に関わることになったきっかけを教えてください。

小野澤:フィールドドリームプロジェクトがきっかけで以前から関わりがあった、「スマイル山雅農業プロジェクト」担当の渡邉はるかさんにお声がけいただき、プロジェクトに参加することになりました。

フィールドドリームプロジェクト:
2014年に松本山雅FCが始動したプロジェクト。さまざまな領域の人たちと夢をかなえようという意味であり、障がい者手帳をお持ちの方、お持ちでない方でも環境の配慮など、何らかのお手伝いがあることで試合観戦ができる、夢をかなえたい方を抽選で試合観戦にご招待するプロジェクト。


重い障がいを持っている人々が地域社会に参加することの難しさを感じていました。障がいがあることを理由に地域で取り残されることがないようにしたい、地域と”つながりたい”という願いをずっと持っていたので、とてもありがたいお誘いでした。

ーー地域社会との接点は人と人とのつながりがないと始まらないですもんね。山雅だけでなく、畑を管理している農家さんとの直接の交流も生まれたという話も耳にしました。

小野澤:農業委員会の小林会長には事業所で作るクッキーの原材料として、この数年間で20kg、会長の畑で育てた小麦粉を譲っていただくようになりました。国産の小麦粉にこだわっているので、地元で作られた貴重な小麦粉をいただけて嬉しかったです。


ーーこのプロジェクトにおいては、具体的にどのような関わり方をしてくださっているのでしょうか。

小野澤:主にはあやみどりの畑管理、収穫、選別、在庫管理を担当しています。
利用者さんは、毎日長い時間働くことが苦手なので、このプロジェクトでは短い時間の中でも利用者さんが楽しく仕事をし充実感を感じることができています。事業所の利用者、スタッフだけでは、農業にチャレンジすることはとても厳しい現実がありましたが、山雅の力を借りてトライすることができています。

ーーこのプロジェクトにおいて、小野澤さんが課題に感じることはありましたか?また、関わるなかでどんなことを感じていますか?

小野澤:育てて収穫した「あやみどり」をどう市場に流通させるかが課題だと感じていました。そのなかで、やさいバスに選別・袋詰めしたあやみどりを商品として納品できたことや、ガン豆くんクッキーを販売できたことは課題解決の1つになりました。神林地域の方、松本山雅レディース、サポーター、神林山雅の会、農業法人サウスの方々と一緒に種をまき、真夏の暑い日に草を抜いて、収穫して、選別したあやみどりを使ったクッキーが「松本山雅FCのクッキー」として市場に出せたことは、事業所として大きな喜びでもありました。事業所からは山雅のホームスタジアムであるアルウィンが徒歩5分のところにあり、「松本山雅の仕事をしているんだ」と実感が持て嬉しく感じています。

流通経路の拡大と販売継続が今後の課題でもありますし、消費者の方に喜んでもらえる商品つくりをしていきたいと思っています。

ガン豆(ず)くんクッキー:ドリームワークスさんが製造、袋詰めを担当している、スマイル山雅農業プロジェクトで育てたあやみどりを使用したクッキー。小麦粉・バターも国産のものにこだわっている。市内の直売所やオンラインショップ、喫茶山雅などで販売。

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ーーひとつエピソードとして、利用者さんのご家族が偶然訪れた居酒屋さんで「農業プロジェクトのあやみどりがメニューに使われている」という張り紙を見て、「うちの子も一緒に作っているあやみどりなんです!」と声をかけてお店の方と盛り上がったというお話を聞きました。実際に利用者さんたちは、どう思っているのでしょうか?

小野澤:それは嬉しいお話ですね!利用者さんもそれぞれ、松本山雅の仕事をしているということにプライドを持っていると思います。みんな、張り切って仕事に取り組んでいますよ!
あやみどりの選別はとても地道な仕事で根気が必要ですが、責任感を持って作業しています。”あやみどり”がいろんな方の知恵や創造性を得て多様性に富んだ商品となるのを楽しみにしています。


ーー取組全体で、小野澤さんが良かったと感じることはどんなことでしょうか。

小野澤:やはり、地域と重い障がいを持つ人たちとを繋げていただけたこと、社会から孤立することなく地域の中で仕事ができたり活動することができること、本当にありがたく感じています。いわゆるハブの役割ともいうのでしょうか、共生社会の実現を一役も二役も果たしていただけたことです。

他の関係者さんたちと一緒に活動する機会はわずかですが、役割分担をしながら、私たちが関われる部分でプロジェクトに参加できています。重い障がいがあっても地域の中で孤立することなく仕事ができる環境を作っていただいたこと、本当にありがたく感謝しています。地元、松本を代表するJリーグクラブの山雅の「仕事をすること」として関わっていることが実感できるのは、利用者さんのご家族にとっても嬉しいことです。 

もう一つは、プロジェクトにおける需要と供給を確立するべく奮闘してくださっていることにこのプロジェクトの未知なる可能性を感じています。作業に対して作業工賃をつけて、ボランティアでもなく”仕事”として位置付けてくださったことです。これも、渡邉さんのおかげです。

農業と福祉を連携させるプロジェクトは多くありますが、収穫量のノルマなどがあって重い障がいのある人たちが取り組むにはハードルが高くドリームワークスでは取り組むことができませんでした。

しかしこのプロジェクトは、孤軍奮闘ではなく地域全体で取り組んでいるプロジェクトだから、ここまで来れたんだと思います。

ーープロジェクトに今後期待することはありますか。

小野澤:小さな小さな一粒の大豆ですが、いろんな人たちの願いを背負い、いろんな人たちの笑顔につながることを願います。「たかが大豆、されど大豆」ではありませんが、このプロジェクトで育てたあやみどりがもっともっと広がればいいなと思います。さまざまな企業から問い合わせがあるみたいなので、たとえば「スーパーでふと手にとった商品で、スマイル山雅農業プロジェクトのあやみどりが使われていた」などというような場面が増えればいいなと思いますね。
ガン豆くんクッキーについても、新しい取り組みをしようと考えているところなので、楽しみにしていてください!

これからもスマイル山雅農業プロジェクトは、地域の課題にチャレンジするプロジェクトであり続けます。

次回の記事では、スマイル山雅農業プロジェクトから生まれたブランド「あやまる」第一弾商品についてご紹介します。


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ライティング:宮本倫瑠
インタビュー・編集:柴田菜々

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