引っ越すことを放棄した日。
夏の暑い朝、セミの鳴き声で目が覚める。
扇風機の風を気持ちよく浴びながら、また寝たいという慢心を抑え
顔を洗い、ヒゲを剃り、服を着る。
家から徒歩3分のバス停からターミナル駅行きのバス乗り、
コロナなんて忘れたかのような満員電車に揺られ渋谷へ。
気がつけば、オフィスでmac book airを開いている。
ふと、車窓を見ながら感じる。
「社会に染まってしまった」
毎朝同じことをして、毎日同じ場所に行って、毎日同じ家に帰る。
実になんてつまらない人生を歩んでいるんだ、と思ってしまった。
話は遡るが、4ヶ月前にこんなことを書いていた。
「ハコから解放されたい」
結局、シェアハウスも「ハコ」だったな、と。
ある日、決心した。このシェアハウス、巨大都市Tokyoという2つの「ハコ」から解放されようと。
では、どうするのか。
アドレスホッパーやればいいんじゃね。
ここから僕の新しい暮らしが始まった。
決めたからには馬鹿みたいに行動が早いのが僕。
翌日には管理会社に電話し、解約を申し出た。
会社にもしれっと「9月からアドレスホッパーするんすよっ!」なんて言いながら(ほんといきなりですいません)
8月末にはバタバタとあらゆる家具・家電を捨てた。お気に入りの服も、思い出のために残していたグッズも捨てた。
自分が手に入れたかった生活ってここまでしなくちゃいけないのかな、と思ったほど。
そして8月末。僕はハコを、そして引っ越すことを放棄した。
9月からは定額住み放題サービスの「ADDress」を使いながら暮らしている。
このサービスいいのが、「泊まり放題」ではなく「住み放題」なのだ。
何が違うのか。
ホテルの連携拠点など一部例外はあるが、基本的にベッドメイキングや滞在部屋の清掃、食事は全て自分。基本的には何かしらの問題が発生しても「当事者同時で解決」なのだ。
ホテルのようにルームクリーニングがあったり、一方的なホスピタリティを期待するものではない。
つまり、その土地に入り、その土地で暮らすのだ。
事実、ADDressの契約は定期建物賃貸借契約となっている。ホテルのように宿泊契約に基づくものではない。
だから、その日住む家ごとに暮らし方が変わる。
誰かにサービスしてもらい過ごす、のではなくてその拠点で自分が土地に入り暮らすのだ。
会社の先輩で、地方に移住した人も「(地方移住で)与えてもらうだけではなく、自分も与えることが重要」と言っていたが、まさにADDressの暮らしにも通ずるところがある。
訪問者は泊まりに来た観光客ではなく、そこで短期的に生活をする「関係人口」の一人となるのだ。
拠点の近所の住民の人との関わり方も非常に特徴的で、これまで僕が行った拠点では、「地元の人」をすごく大切にしているし、地元の人も逆に「生活者」を歓迎してくれている。そこに双方向の関係性が成り立っているのだ。
だから、近所を散歩しているおばちゃんとも普通に挨拶して世間話をするし、家守の人に教えてもらった地元の商店で買い物や食事をする。そこで、今ここの拠点に泊まっていて〜なんて話をしながら酒を飲んだりもする。
そしてこの暮らしがいいのは、いろいろな地方を見ることができることだ。
今でも月1〜2週間は東京に滞在しているのだが、その他は基本的に全国をホッピングしている。その中で、各地方でお客さんを訪問することもできるし、実際に観光地に足を運ぶこともできる。
今、僕は地方創生をロケーションビッグデータとテクノロジーの力でサポートする仕事をしているのだが、東京のオフィスから画面越しに偉そうに仮説を並び立てるよりも、実際にその土地に入って暮らしながら、お客さんと一緒にディスカッションしながらサポートしていく。
「お客さんのために」
なんて言葉の達成の仕方は人それぞれだと思うが、「リアル」が実際にどうなってるのか、そして「データ」ではどうなっているのかを知り、伝えることができる。そして、いろんな地方を見てるからこそ知っている他のエリアの「リアル」を共有することで、真のお客さんのパートナーとなる。これは「生活者」であるADDressユーザーの僕だからこそできることだと思う。
実は、ADDressの生活をしていると、「あー疲れたな」と思う時もあったりする。でもその疲れも「暮らし」をしているからこそ感じられるリアルであるし、同じADDressのユーザーと共有したり、少しだけ暮らしのスタイルを変えてみるだけで大体のことは解消できる。
今振り返ると、これまでの日々の生活には無駄な選択肢がたくさんあったことに気付けたし、「本当に自分が大切にしている物が何か。」を考えながら暮らすようになった。
その命題に対する回答が自分の価値観の中にない時、「疲れ」が発生するのだが、先の行為で大体は解消するし、フラストレーションは自然と溜まらない。
開始して2ヶ月。この暮らしを通して、様々な分野で価値観が広がったし、知識も増えた。例えば、興味のなかった歴史も「知りたい。」と自ら調べるようになった。
ADDressでのアドレスホッパー生活は、新しい生活様式だからこそ成り立つ新しい暮らしの形式なのかもしれないが、人間の根幹的な「暮らし」の形式はここにも根付いているのかもしれない。
次はどこで暮らそうか。
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