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自分が仕事をする環境において、「文章の価値」を今一度見直しておく。

※Web Designing誌より

「ウェブデザイン」には2つの視点で文章が必要


「Web Designing」読者の皆様、初めまして、松井謙介と申します。現在ONE PUBLISHINGという出版社でメディアビジネス全般をマネージメントしている者ですが、一方で、20年を超える編集経験を活かし、「文章のつくり方・書き方」のセミナーなども行っています。以後お見知りおきください!

Web Designing本誌の読者の皆様は、その誌名が表す通り「ウェブのクリエイティブ」に関わっている方がほとんどでしょう。「いま一番使いやすいコーディングツールは何か」「SEOやSEMに関する最新トレンドは」—そんな視点でこの雑誌を読んでいらっしゃると思います。

本誌2021年02号の特集「Web制作のリアル2021」での「今後習得したいWeb関連技術は?」というアンケートにおいて、「コピーライティング」「文章作成や編集に関する技術」という項目が、前回実施時よりそれぞれ10ポイント程度アップしているという結果がありました。さらに1位は「総合的なプロデュース」となっており、この「総合的」の中には、「コピー」も「文章」も入ってくるでしょう。すなわち、ウェブクリエイトにおいても、「テクニカルな技術」と同じくらい、「やっぱり『文章』って大切なんじゃない?」という思考が広がりつつあると感じます。

私も編集者・プロデューサーとしてウェブを制作することが多いです。その際、編集者である私と、文章の役割は二つです。

❶サイトオーナー(顧客)の意向を正しく表現し、そのコンセプトを「顧客(クライアント)—編集(文章)—開発者(皆様)」という流れで、誤解が生じぬよう伝達すること。

❷ウェブに掲出される企業・商品・サービスなどの価値を、正しく、美しい形でターゲットユーザーに伝えられるよう、アウトプットを整えること。

クライアントは、きっと編集者ではありません。そして皆様も、素晴らしいクリエイターであると思いますが、編集経験は多くないでしょう。ならば、間にはインタープリター(翻訳者としての編集者)がいたほうがいい。さらにほとんどのサイトが「情報を読み手に伝達する」という役割を担う以上、制作チームにも表現者としての編集者・コピーライターのスキルがあるに越したことはないのです。

「文章の価値」は、いま飛躍的に高まっている

2020~21年、私たちの生活は劇的に変わりました。その理由は言うまでもなく、新しい感染症・コロナウイルス。感染予防の観点から「密な接触を避けること」がスタンダードとなり、多くのイベントが中止に。「会議・会食・会合」のように、「会う」ことを前提とした行為はどんどんオンラインに移行していきました。

このように、「会わないこと」を前提としたビジネスが浸透すると、改めて「文章作成」の価値が強くクローズアップされます。会えない以上、メール、チャット、ブログ、ウェブ、noteなど様々なところに存在する「文章」から、人は信用や価値という目に見えないものをくみ取り、そのくみ取ったものを自分の頭の中で再構築し、イメージをつくり上げるわけです。

何を隠そう本稿も、本誌の岡謙治編集長と一度もリアルで打ち合わせすることなく執筆に至っています。やりとりは、Zoomなどでのオンラインミーティングとメール、チャットツールのみ。ある日のチャットでは、「おせわになっております! こちらこそ進められなくてすみません! やる気とモチベは持ち続けてますので、小さくてもできることをおっぱじめましょう!(原文ママ)」と来ました。全文に「!」です。なんだかもう岡編集長は忙しすぎて、走りながらこのメッセージを打ったのではないかと思わせるような勢いがあります。その後の「おっぱじめる」に至っては、何とも言えないエッチな雰囲気と、私への急激な「親密さ」を感じ取ることができました。きっと人懐っこい方で、誰とでも仲よくなる方なんだろうなあ、と思った次第です。それが、正しい人物評価かどうかはわかりません。大事なのは、「(読み手である)私は、そう感じた」ということ。岡編集長がエッチであるかどうでかではなく、「文章から、私はそう感じた」ということです。

文章は、正しく書いて、適切に伝えることが何より大切です。本連載では、皆様の素晴らしいアウトプットが正しくユーザーに伝わるよう、今一度「文章」というものの価値を、つくり方を見直していきます。次回からの具体的なメソッド紹介により、本稿が皆様の「文章力向上」の助けになればそれ以上の喜びはありません。

なんだかしょうもない日常の雑文ですが、そんなものでも読んでいただけて嬉しい! ネガティブなことを書かず、なんだか安心するようなものをお届けしたいです。