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アメリカ社会に見る「部族的優越意識」の深刻化

現在アメリカの政治風土を語る上で欠かせない言葉に、tribalism (トライバリズム)という単語があります。tribe というのは「部族」とか「種族」というような意味で、受験英語で必須の単語です。”tribalism” は部族社会というような訳し方をすることもありますが、「部族的優越意識」とでも訳した方がニュアンスが伝わりやすい単語です。このコラムではとりあえず、トライバリズムというカタカナ語で統一したいと思います。

トライバリズムってなんだろう?

ではこのトライバリズムがどんなものなのか説明しましょう。現在のアメリカは右と左に大きく分断されています。ざっくり言うと右派はトランプ・サポーターで、クリスチャンが多く、中西部から南部に数多く住んでおり、人工中絶と銃規制に反対です。ゲイやレズビアンといったLGBTQの人権保護についてはあまり熱心ではありません。また、小さな政府を標榜し、健康保険から学校教育に至るまで、市場の原理に任せるのが正しい解決だと考える傾向にあります。金儲けは良いことであり、極端な累進課税制度には反対です。また、移民にはあまり寛容ではありません。

逆に左派の人々はその多くが東西沿岸部に住んでおり、人工中絶は女性の権利と考え、なんらかの銃規制がなされるべきだと考えています。クリスチャンもたくさんいますが、無神論者は他の宗教を信じる人もたくさんいます。また、LGBTQの権利保護に熱心です。どちらかと言えば大きな政府を標榜し、ユニバーサル・ベーシックインカムであるとか、教育の無償化、あるいは国民皆健康保険に賛成です。収入格差を問題視しており、今よりも塁審率の高い累進課税制度に賛成です。白人優生主義に敏感な人が多いのも左派の特徴の1つと言ってもいいでしょう。

さらに特徴的なことをもう1つ挙げると、高等教育機関と報道とテック系企業は左側一色といっていいほど、左派で固められている点です。もちろん右派で高等教育機関やテック系企業に勤めている人がいないわけではありませんが、極めて少数派です。

そしてこの右と左は、それぞれ自分たちの部族の方が優れていると感じており、反対側の部族は基本的に「敵」だと考えています。そして、反対陣営の誰かが失言すると、その人の人生が台無しになるまでフルボッコします。たとえその失言や行動が30年前の出来事でもです。過去のツイートを掘り返したり、はたまた高校の卒業アルバムまで持ち出して、相手側を攻撃します。

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