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3歳児、初サッカー観戦記

久しぶりのグリーンスタジアムは赤だった。

5部 VS 7部

栃木県サッカー選手権決勝戦、つまり天皇杯の県予選決勝(勝った方が天皇杯に出場できる)。今年は「FC CASA FORTUNA OYAMA」対「栃木シティフットボールクラブ」という対戦カードだった。

FC CASAは栃木県社会人1部リーグ所属、栃木シティは関東サッカーリーグ1部。J1を頂点(1部)とすると、7部と5部のチームである(合ってる?)。

詳細は割愛するが、5部(地域リーグ1部)と4部(JFL)の間にはとても大きな試練があり、栃木シティは昨年ここにあと1歩のところで届かなかった。それほど強いチームである(前身である「栃木ウーヴァ」はJFLに8年間在籍)。また、CASAの選手は基本的に他の仕事をしながらの複業であることに対して、栃木シティはプロ契約が基本。ということで、CASAにとって栃木シティは「格上」なのである。

CASAは小山市を本拠地にするチームだ。そして、栃木シティは栃木市という隣町を本拠地にしている。小山市と栃木市は「下都賀(しもつが)」という同じ地区なので、下都賀ダービーと言ってもいいかもしれない(今思いついた)。

この日のグリーンスタジアムは赤だった。CASAが「スタジアムを赤く染めよう」プロジェクトを企画しており、来場者にTシャツを無料配布していたのだ。「黄色」のイメージがある「グリスタ」を赤く染めたチームが第7部というのは圧巻だった。

息子のデビュー戦

ようやく本題。この試合は、3歳になったばかりの息子のサッカー観戦デビューとなった。デビュー戦が「CASA対栃木シティ」とは、なかなか渋い3歳児である。

普段は僕がDAZNでサッカーを見ている横にいて、10分も経つと「ちがうのにして!」と怒り出す。それでいて「サッカー観に行く?」と聞くと「かっさーかっさー!」と喜ぶので思い切って連れていくことにした。

入口でTシャツをもらいご満悦な息子。入場料:僕は1,000円、息子は無料でTシャツを2枚ゲットできてしまった。お得すぎる。

グリスタ特有の客席に続く石橋をてこてこ歩いていくと、急に目の前に広がる緑のピッチ。

「わー、かっさーだー!」

と喜ぶ息子だが、まだ試合1時間前でボールも転がっていない。このピッチを見るだけで「いつもテレビの前で見ていたものが目の前にある」と大興奮なのだ。

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やがて選手たちが出てきてウォーミングアップを始める。僕たちは13時からのキックオフに備えてコンビニで買ってきたパンを食べる。

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選手たちが気合いを入れる声に毎回「なんだ!?」と反応する3歳児。そしてボールを使った練習が始まると釘付けでパンを落とす。

ウォーミングアップが終わり、一度選手が引っ込んだあとに衝撃の一言。

「おわった!かえる!」

終わった!息子のなかで今日のサッカーは終わってしまったのだ。笑

3歳児にとっては試合も何もわからないだろうし、今回は無理せずでいいかなと思っていたが、それでもさすがに少しは試合を見たい。何とかつなぎ止め、試合開始。栃木シティの選手が右サイド裏に何度も侵入しつつも、CASAは圧縮して真ん中をこじ開けようとする。そして逃げ出そうとする息子。

30分くらいで限界に達し、とりあえずオムツ交換にトイレへ。この日は若い家族が多いようで、同じくらいの年齢の子やもっと小さい子も見かけた。CASAの関係者が多くきたのだろう。とても温かい雰囲気だった。

前半を終え、0-0。息子を繋ぎとめるためにじゃがりこを出す。じゃがりこを食べている間に後半戦開始。後半5分、じゃがりこを食べつくし逃げ出す息子。

後半はほとんど試合展開を見ることはできなかった。「おうちかえる」と言う息子と通路をうろうろしつつ(ごめんなさい)、同じように飽きてきたのであろう子どもたちやそれに付き合う親御さんがうろうろしていてホッとする。なんか本でも持ってくればよかったかな。

後半30分くらいから少しずつ雨が降り始めたので、試合は見えにくいが屋根のある後ろの方まで下がる。息子は雨に濡れるのが少しうれしいようで、手を出しては引っ込めるのを繰り返しつつ、ポルノグラフィティの「愛が呼ぶほうへ」を歌い始める。「償う人の背に降り続く雨」という歌いだしに、息子にとっては「雨の歌」という覚え方になっているのだ。(余談だが、僕は高校生の頃からポルノグラフィティのファンで、大学からのファンクラブ歴は12年にもなる。)

後半を終えても0-0で決着はつかず、延長戦に突入することになった。CASAにとって大健闘、というのは失礼だろうか。

最後まで見届けたい気持ちもあったが、「試合開始前から」帰りたいと言っていた息子にフルタイム付き合ってもらったし、雨も降っていたので、帰路につくことにした。

このサッカー観戦を、将来息子がどのくらい覚えているかはわからないが、帰ってからママに向かって「あかいのもらった」とか「おなじのいっぱいいた」とか言っていたので、サッカー観戦とそれによる一体感という、貴重な体験ができたのだと思う。

※試合は延長戦でCASAが先制しつつも追いつかれ、120分で決着がつかずPK戦3-5で栃木シティの勝利となった。

見落としてしまう景色

余談。息子と2人で歩いていると、いろいろなものが目に入るようになった。花、石ころ、空、飛行機、挙げればきりがない。僕も子供の頃は、こういった当たり前のようにあるものに感動して、いつまでも遊んでいられた。ただ、今ではその存在にすら気づかなくなったなと思う。

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そこにあるものと、「そのこと自体」を気づかせてくれる息子。

ゆっくりとした時間は本当にかけがえのないものだ。

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