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農業に”本気で”取り組み、チケットに並ぶ収益を目指すJリーグクラブ(#1/2)

Jリーグクラブは、それぞれの地域に根ざした社会連携活動を活発に行っており、“Jリーグシャレン!アウォーズ”では特に社会に広く共有したい活動を表彰しています。2021年にパブリック賞を受賞したのは、福島市を中心に県全域をホームタウンとするJ3の“福島ユナイテッドFC”。サッカークラブでありながら、福島県産農作物のPR・販路拡大を事業にしています。

既に多くのメディアで取り上げられていますが、改めてどういった活動がビジネスとして成り立っていて、地域に貢献しているのか。福島ユナイテッドFCの事業方針とあわせて調べてみました。

(#1/2)

Jリーグクラブが“自分たちで”農作物を育てる意味

福島ユナイテッドFCは、2014年から“農業部”を立ち上げました。原発事故の風評被害を受けて農作物が売れないことや、後継者不足などの地域課題に何かできることがないかと考えたことが始まりです。特徴的な点は、ただ単に農家から仕入れたものを販売するのではなく、コラボという形で選手・スタッフが生育していることです。最初、りんごからスタートした生育は、桃、お米、ぶどう、ルレクチェ、アスパラガスの6品目まで拡大しており、桃であれば木を1本単位で、米であれば田んぼを1反単位で購入し、年間を通して生育を行っています。一例を挙げると、桃の収穫は夏の猛暑のなかでの作業となります。収穫を行い、そのまま選別作業、箱詰め、夕方の出荷まで、丸半日を使ってのハードワークとなります。

広報・仕入・販売だけではなく、わざわざ生産まで手掛ける理由は何なのでしょうか。

1つ目は地元との繋がりを大切にすることです。実作業中にたわいもない世間話をしたり、作業後に一緒にお茶をしたりと、地域住民とコミュニケーションを取る機会が増え、その中で知り合った方が試合を見に来てくれることもあるとのこと。純粋に福島ユナイテッドFCの濃いファンを増やす活動にもつながっています。

2つ目は、この形態での農業部を「長く継続」していることで、農家の「温度感」に合わせながら農作物の魅力を発信できるようになったことです。ただ仕入れて販売するだけではないからこそ、長く深く関与する意味が生まれています。これからは、単に農作物の種類を増やすのではなく、いま育てている野菜や果物への知識や経験、地元農家との繋がりを深めながら、福島産の農作物の魅力をより多くの人に発信していくことを目指しています。

そして3つ目は、選手の育成です。競技力という意味での育成ではなく、人間としての育成です。地域の農家の方々とのコミュニケーションを取り、ほかの仕事がどういうものなのかを知ることで、「サッカーだけをやっていればいい」のではなく、社会人としての経験を積み、人として成長できます。福島ユナイテッドFCは新卒の選手も多いため、特に有効だと言います。

「自分たちで育てる」ことで、地域との繋がりも、事業の理解や想いも、人としての成長にもつながっている農業部。さらに、今回「シャレン!」で取り上げられたことも含め、クラブのブランディングにもつながっていると言えます。

それでは、生産したものを具体的にどう販売して「福島県産」のPRや事業拡大につなげているのでしょうか。

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