「人権侵害に関する取り組みを求める請願」について その2 ~請願文からみる問題点~

前回の記事では、請願という制度についてと、今回の請願の背景にあった「千葉県警の交通啓発動画への全国フェミニスト議員連盟による抗議」について、ごくごく簡単に説明いたしました。今回の記事では、私が考えるこの請願の問題点について、具体的に述べていきたいと思います。

そもそも請願者は「フェミニスト議連が抗議を行った理由」を誤って捉えている

今回の請願では、フェミニスト議連側の抗議理由を「Vtuber キャラクターが性犯罪を誘発している」からとしているという前提で書かれています。

その公開質問状には理由として性犯罪を助長や誘発とあるものの、根拠は刑法の個別具体性の確認に基づくものではなく、検証過程や証拠も挙げず協力する松戸市民を原因と断定するものであった。

請願文

しかし、そもそもフェミニスト議連の抗議文において、削除を求める理由は次のように書かれています。

私たちは、啓発動画に「ご当地VTuber 戸定梨香」を採用した千葉県警、松戸警察署・松戸東警察署に強く抗議し、当局の謝罪、ならびに動画の使用中止、削除を求めます。本動画は、女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長しています。

 「ご当地VTuber 戸定梨香」を啓発動画に採用したことに対する抗議ならびに公開質問状

「性犯罪誘発」という言葉は、質問項目の文章の中で1回だけ書かれています。

2、女児を性的な対象として描くキャラクターを採用することは、性犯罪誘発の懸念すら感じさせるものですが、採用決定過程においてどのような検討をされたかお答えください。

 「ご当地VTuber 戸定梨香」を啓発動画に採用したことに対する抗議ならびに公開質問状

これは「性犯罪誘発の懸念すら感じさせるものだけど、採用決定過程はどういう検討したの?」という質問であって、「性犯罪誘発するから削除しろ」と言っているわけではありません。

具体的に何をしてほしいのかが分からない

「行政に対して何を要望している」点が不明であることも、この請願の致命的な部分のように思います。

この請願の「請願内容」は次の4点です。

・交通安全啓発動画は、市民の人命を守る目的によるものであるため、市民を犯罪の原因と断定する資料1(※公開質問状)の公開質問状の不当性を調査し、その結果を今後の人権侵害対策に反映するよう求める。

請願文「請願内容」

・当事者は現在非常に繊細な配慮が求められる状態である。公開質問状の大々的な公開をきっかけに松戸市内での経済活動に対する不当な妨害や名誉毀損の横行が客観的に確認可能な状況となっている。その実情の確認には適切な配慮を求める。

請願文「請願内容」

・市民を人権侵害から守る役割の再確認と表明を求める。

請願文「請願内容」

・市民に向け、根拠の無い不当なレッテル貼りや表現活動や経済活動に対する妨害行為が人権侵害であるという理解を啓発(人権啓発活動)するよう求める。

請願文「請願内容」

このうちまず、「公開質問状の不当性を調査」については、何を基準にして「正当/不当」を判断すべきとしているのかがよく分からないですし、そもそも役所がそのような権限があるのかがまず疑問があります。

また、「根拠の無い不当なレッテル貼りや表現活動や経済活動に対する妨害行為が人権侵害であるという理解を啓発」というのも意味が分かりません。

この請願の目的は「批判する自由への制限」なのか

「根拠のないレッテル貼り」が「人権侵害」となるかどうかはケースによるでしょうし、「表現活動や経済活動に対する妨害行為」も、法令違反となるようなものは「人権侵害」と言っていいかもしれませんが、本請願はフェミニスト議員連盟の抗議を例に挙げて、「表現活動や経済活動に対する妨害行為は人権侵害だと啓発しろ」と述べているわけで、これは単に「行政機関の広報活動を批判するのは人権侵害だと言え」と要求しているに過ぎないようにもみえます。

言い換えれば、「批判する自由を制限しろ」と言っているに等しいことになるわけで、ここの部分は注意して扱わないといけない部分でしょう。

この点については、明日の委員会審査以降に更に詳しく言及したいと考えております。また、この請願の紹介議員となった岡本ゆうこ議員に対する疑問点もいくつかあるので、その点についても記事にしたいと考えております。


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