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僕をマニアにした日本全国珠玉の温泉25選と、五感で温泉を味わい尽くすコツを紹介する

 僕は10年前の学生時代に温泉にハマり、国内外のさまざまな温泉に入ってきた。入浴数は1,500くらい。一時期は旅行は温泉しか行かないってくらい温泉にハマりたおしていた。

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画像:長野/本沢温泉

 どうしてそんなにも温泉にハマっているのか?
 それは、僕が感性をフル稼働して温泉を感じているからだ。

 一体どういうことか?
 突然だが、食べ物を急に好きになった経験はないだろうか? 僕は北海道の港町でウニを食べたときがそれだ。ウニがハーゲンダッツよりも甘かった。そのとき「なるほど、ウニの旨みというのはこういうことか」と、ウニの味の"ツボ"を把握した。一度ツボがわかると、それ以降はどんなウニでも美味しく食べられた。また、ウニの香りや、新鮮な色などもどんどんわかるようになってきた。

 温泉もこれと同じだ。温泉にも「ここだ!」というツボがある。
 そんなわけで、僕が思う温泉のツボと、そのツボを刺激して僕を温泉マニアにしてしまった珠玉の温泉たちを紹介したい。

 なお、あふれる温泉愛のままに書いていたら長くなってしまったので、記事を前編と後編に分けた。
 この記事は、前編の五感で温泉を味わい尽くす方法について。
 後半の想像力を駆使して温泉を味わい尽くす方法についてはコチラ↓

五感を研ぎ澄ませて温泉を観察する

 温泉に行ったら、ぜひ五感を研ぎ澄ませてソムリエのようによーく観察して温泉を味わってほしい。そうすれば、今まで気がつかなかった温泉の魅力に気づくはずだ。

 味わいがいのある魅力的な温泉を、視覚/味覚/嗅覚/触覚/聴覚の五感別に紹介していく。

1.視覚

 好きな人が近くにいたらどうする? ガン見するよね? ガン見したらその人のこともっと好きになるよね? だったら温泉もガン見して好きになろう!
 ということで、温泉の見た目編

 まずは
 僕はマニアになる前は、温泉の色なんて透明か白くらいだろうと思っていたが、いろいろ見てみると実にたくさんの色の温泉が湧いていることがわかった。黒かったり、赤かったり、中には緑とか青なんかもある。

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 黒い湯は「宮城/東鳴子温泉 馬場温泉」のもの。
 馬場温泉のお湯は、数万年前の植物の残骸が溶け込んだもので、モール泉とよばれる。植物由来の成分が黒色の理由だ。

 青い湯は「大分/別府観海寺温泉 いちのいで会館」のもの。
 すっっっごい青い。子供が絵の具で海を描くとこんな感じになるよね。この爽やかな青色は、温泉中の微細な粒子が青い光を反射することによる。ちなみにこれは空が青いのと同じ理由だ。

 白い湯は「宮城/鳴子温泉 東多賀旅館」のもの。
 今すぐダイブしたくなるような白色は、青色と同じく温泉中の微細な粒子による。東多賀旅館はいちのいで会館よりも粒子が大きいため、青以外の色の光も反射して全体として白く見える。ちなみにこれは雲が白く見えるのと同じ理由。

 緑の湯は「宮城/鳴子温泉 西多賀旅館」のもの。
 お湯の色がビビットすぎて初めて見たとき目がバグったかと思った。この緑色の正体は、温泉中の硫黄成分の黄色と、いちのいで会館と同じ青色が混ざったもの。ちなみに、この西多賀旅館は東多賀旅館のすぐ隣にある。隣なのにこんなにも泉質が違うのはほんと驚き。

 橙の湯は「長野/毒沢鉱泉 神の湯」のもの。
 神秘的な毒沢鉱泉の橙色の理由は、温泉に含まれる鉄分が酸化したことによる(ようするに錆)。

 赤い湯「秋田/奥奥八九郎温泉」のもの。
 赤色も鉄分によるもので、橙の湯よりもさらに鉄分が豊富に含まれると赤くなる。

 このような色のついた温泉に入っていると、薬につかってるような気持ちになって、めちゃ身体にいい気がしてきてサイコーなので、ぜひとも色鮮やかな温泉に浸かってみてほしい。

 続いて建物の外観や浴室

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 外観が美しい「群馬/四万温泉 積善館」の建物
 積善館の本館は江戸時代に建てられたもので、しかもなんと宿泊可能!泊まると文豪気分を味わえるよ。

 息を呑む美しさの「岩手/鉛温泉 藤三旅館」の浴場。
 温泉好きにとって、浴場の扉を開く時は最高にワクワクする瞬間だ。中でも、藤三旅館の浴場との出会いはこれまで一番の感動だった。ぜひ実際に宿泊して、浴場の扉を開けてみて欲しい。

 温泉成分の析出物も見どころの一つだ。温泉は、時間が経つとお湯に含まれる成分が固形物になって出てくる。この固形物のことを析出物とよぶのだが、温泉によってはこの析出物自体が美しく、見ごたえがある。

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 析出物が圧巻の「島根/温泉津温泉 薬師湯」の浴室。
 薬師湯の浴室は、床一面が鍾乳洞みたいにコテコテになっている。これは温泉成分が濃い証で、薬師湯と名がつくだけある。

 レトロな作りと析出物が歴史を感じる「長野/加賀井温泉 一陽館」の浴室。
 レトロな浴場+長く蓄積した析出物=歴史が作り上げた芸術
 写真に写っている桶はもともと黄色い桶(ケロリン)だったもの。析出物でコーティングされて原型がわからなくなっている。

 ちなみに、僕はお湯から出て浴室で涼んでいるときは床の模様を眺めていたりする。

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 「山形/赤湯温泉 近江屋旅館」の美しいタイル四重奏と「岩手/国見温泉 石塚旅館」の鮮やかな色の絡み合い

2.味覚/嗅覚

 温泉に行ったら舐めるし嗅ぐよね? え、嗅がない? じゃああなたの顔についてるそのパクパクするやつとクンクンするやつは一体、いつ使うの?    
 温泉は舐めるし嗅ぐものだ。ただ入るだけのものではない。舐め、そして嗅ぐことによって温泉の世界は広がる。
 というわけで温泉の味と嗅い編

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 「群馬/草津温泉 ペンションはぎわら」のレモン味のお湯
 草津温泉のお湯は、とても舐めがいのあるお湯だ。舐めるとレモンみたいに酸っぱくて、歯がキシキシする。これはお湯が強い酸性だから。酸性の理由は理科の実験で使った塩酸・硫酸が溶け込んでいるためだ。だから歯は溶けるし傷口は殺菌される。昔の人は、刀傷とかを治すために草津に消毒に来たんだとか。

 「静岡/伊東温泉 梅屋旅館」の塩味のお湯。
 梅屋旅館のお湯は塩辛い。この塩は海水からきている。梅屋旅館の塩味は美味しいので飲みがいがある。

 「鹿児島/妙見温泉 秀水湯」の鉄味のお湯。
 鉄ときくと錆の香りを思い浮かべるかもしれないが、湧いて間もない新鮮な鉄の温泉は錆とは違った良い香りがする。こればかりは「新鮮な鉄の香り」としか表現できないので、ぜひ実際に嗅ぎに行って欲しい。この妙見温泉はザバザバと新鮮なお湯がかけ流されている施設ばかりなので、鉄嗅ぎスポットとして非常におすすめだ。

 「新潟/月岡温泉 浪花屋旅館」の石油のにおいの湯。
 月岡温泉のお湯からはなんと石油のにおいがする。それもそのはずで、月岡温泉は石油を掘っていたら湧いた温泉なのだ! よく見るとお湯の表面に油が浮いているのが確認できる。

 「三重/長島温泉 松ヶ島共同浴場」の芳香剤のにおいの湯。
 長島温泉はオーガニックのフレグランスの香りが特徴。ここも馬場温泉と同じくモール泉なのだが、成分がやや薄くちょうど美しい琥珀色になる。この琥珀色のモール泉は本当に良い香りがする。各地のモール泉の芳香剤とか売ってないかな〜。

 「群馬/万座温泉 豊国館」のゆで卵の香りの湯。
 温泉のにおいと言えばコレ! のやつ。このゆで卵の香りの原因は硫黄(硫化水素)だ。中でも万座温泉は日本一硫黄成分が濃いので、爆裂卵臭を嗅げる。また、2,3日はこのにおいは取れないので、残り香で温泉気分を延長可能。お得。あ、あと万座のよう硫黄が強い温泉でゆで卵をつくるといい感じに香りがついてゆで卵感がさらに上乗せされて美味しくなるのでオススメ。

3.触覚/聴覚

 温泉を触って聴いて編

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 「大分/長湯温泉 ラムネ温泉館」のシュワシュワのお湯。
 シュワシュワの正体は炭酸。スーパー銭湯にある炭酸泉とは比較にならないほどのアワアワで、お湯に入っているとシュワシュワ音がして、泡が身体を撫でてこそばゆい。ラムネ温泉館の名前はダテじゃない。

 「宮城/中山平温泉 レストハウス星沼」のローションのお湯。
 まじでペ◯ローション。油断すると滑って転ぶ。

 「秋田/玉川温泉」の消毒液の湯。
 玉川温泉は日本一の強酸性のお湯だ。入ると皮膚がピリピリする。傷口は特にしみるので、玉川温泉に入ると、ちょとした擦り傷や虫刺されに気がつく。ちなみに写真は玉川温泉の源泉が湧いてる大噴(だいふん)だ。PH1.2(胃液くらい)の98℃の源泉が、毎分9000L湧いている。ダイブしたら1週間くらいで溶けてきえてなくなりそう。

 「福島/横向温泉 中の湯旅館」。
 中の湯旅館は山奥にある一軒宿で、浴室は湯口から注がれるお湯の音と虫の鳴き声しか聞こえない静寂の空間だ。山奥の秘湯宿に行ったときは、ぜひ浴室の音を聞いてみてほしい。秘湯宿のお風呂で過ごすと日頃の疲れや思考の淀みが洗われる感覚になる。ぜひ一度体験して欲しい。

 「岩手/藤七温泉 彩雲荘」のぷくぷく湯。
  彩雲荘の露天風呂はすごい。温泉が湧き出ているところをそのまま浴槽にしていて、足元から気泡と共にぷくぷく源泉が湧いてくる。大自然の中にある露天風呂でぷくぷくしていると大地の鼓動を感じられる。

温泉と対峙するときは、"凝"をおこたるな

 さて、視覚/味覚/嗅覚/触覚/聴覚と、温泉の味わいポイントを語ってみたが、少しでも伝わっただろうか?

温泉に入る時は感性を研ぎ澄ませろ!

 次に温泉に行くときは、温泉を見て、舐めて、嗅いで、触って、聴いて欲しい。何度かやれば、温泉の多様性がわかってきて、さらには温泉の微妙な違いもわかるようになっていく。
 そうなってくると、「モール泉なら大分の錦温泉の香りが一番好きだな〜、硫黄の温泉ならやっぱ鹿児島の霧島温泉とか? あ、でも毎日入るなら徳島の祖谷温泉みたいな泉質がいいな〜」という話をし始めるのもそう遠くないはずだ。

 最後に、温泉に入るときの僕の心境を改めて書こう。

紫尾温泉 旅籠しび荘

 浴室の扉を開ける。湯気が顔を覆うとともに温泉の新鮮な香りが漂う。シンプルな湯船に向かい、桶でかけ湯をする。かなり熱めだ。 湯船に足をつけ、ゆっくりと入る。全身がお湯に浸かると、冷えた身体が急激に温まる。脱力すると鳥肌が立つのを感じる。

鹿沢温泉 紅葉館

 源泉の湯口に顔を近づけると、源泉の香りが強くなる。ここは鉱物っぽい香りがする。 浴槽の縁に頭をもたげて天井を仰ぐ。山の中の旅館は静寂に包まれている。目を閉じてリラックスして耳を澄ますと、お湯がジョボジョボと注がれる音だけが聞こえる。

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