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特別講座「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは」~第1回~

みなさま、こんにちは。
食の6次産業化プロデューサー(高知大学土佐FBC特任講師)の松田高政です。

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今日から新しい年に向けて、「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは」というテーマで講座情報を発信します(全11回を予定)。

普段、私は食の6次産業化プロデューサーとして、農家や食品会社の商品開発・販路開拓のコンサルティングをしながら、高知大学土佐FBC(フードビジネスクリエーター)で社会人向けに食品ビジネスを教えています。この講座は高知大学土佐FBCで教えている授業内容の一部をテキスト情報で公開する形で発信します。

はじめに:新商品・サービスを生み出すために必要な能力とは?

コロナ禍で変化の激しい時代に、新たに商品またはサービスを生み出し、それを徐々に軌道に乗せ、最終的には売上向上・雇用創出、地域への誇りやブランド化といった成果を出すためには、どうしたら良いでしょうか?

まずは、全体的に商品・サービスをプロデュースするという観点から、企画開発、販売プロモーション、連携・コーディネートなど、幅広い知識や実践的スキルが必要となります。

ここでは、食の6次産業化プロデューサー・レベル6(最高段位)の私が、新たに商品・サービスを生み出す際に求められる能力として、一般的な理論・手法を解説するとともに、実際に私が農林水産省の6次産業化プランナーとして、企画から販売まで総合的に関わった商品「のむジュレ」(1年目で全国流通・10万個販売)を事例に、私が考えたこと、実行したことを詳しく説明します。

【のむジュレとは】
高知県産の果汁(文旦・柚子・生姜)と北海道産のてんさい糖、国産の寒天のみでつくる、国産原料100%・無添加の飲むゼリーです。
味の好みが違う家族が一緒に飲めるように、①さわやかで香りのいい柚子、②ほのかにピールの苦みがある土佐文旦、③かなり強烈な辛みがある燃焼系の生姜と、3種類の「のむジュレ」シリーズとして同時に商品開発しました。

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写真:のむジュレ

この経験・プロセスが、新たな時代(コロナ禍)や他の業界にそのまま通用するわけではありませんが、ビジネスにおいて普遍的な考え方や大切なポイント、応用できる点など多いと思います。皆様の今後のビジネスや新たな挑戦の参考になれば幸いです。

また、ここで求められる能力は、国家検定「食の6次産業化プロデューサー(食プロ)」のレベル認定の審査項目に沿ったものなので、自分の知識と実践スキルがあるかどうかの確認にもなります。審査項目はレベル2(20点以上)からレベル5(80点以上)まで共通なので、自分の知識・スキルの確認のために、関心のある方はぜひ、チャレンジしてみてください。

食プロ・レベル認定プロセス(公式HPをご覧ください)

https://www.6ji-biz.org/process.html

【今後の講義の予定(全11回講座)】
◇テーマ「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは」
第1回:商品の企画・設計・開発が主体的にできるか?
第2回:商品の開発にあたり自社の強みを活用できるか?
第3回:市場ニーズや成長性を正確に捉えられるか?
第4回:最終消費者と消費・利用シーンを想定できるか?
第5回:競合相手に対する優位性を客観的に確認できるか?
第6回:商品の価格・事業の損益分岐点を計算できるか?
第7回:商品の多角化のために最適な方法を選択できるか?
第8回:連携パートナーの経営上のメリットを創出できるか?
第9回:事業の発展のために後続の商品開発ができるか?
第10回:商品特性に見合った販路・売り方を選択できるか?
最終回:販路開拓・売上目標を達成し事業を成功に導くことができるか?

では、いよいよ第1回目をスタートします!

第1回:商品の企画・設計・開発が主体的にできるか? 

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【必要な能力】
商品・サービスを開発する場合、どのような方法で企画・設計・開発を行う必要があるか。

【理論・手法】
商品・サービスの企画・設計・開発を進めるためには、まずはどんな商品・サービスを作りたいか、商品であれば製品概要書、サービスであれば企画書、最終的には事業計画を作成し、理念・目的等と併せて解決したい課題を開発メンバーと共有しなければなりません。

事業計画に必要な要素としては、特に定義はないですが基本は5W1H(2H)で整理するのが網羅的で分かりやすいです。

事業計画は基本・5W1H(2H)+αで整理する
①目的:なぜ(Why)
②市場・顧客:だれに(Who)
③期間・期限:いつ(When)
④商品・価値:何を(What)
⑤販売チャネル:どこで(Where)
⑥プロモーション:どのように(How)
⑦価格・数量:いくら(How much)
⑧その他(資金計画・実施体制・地域貢献等)

何を作るといった物のコンセプト要素だけでなく、誰と開発または連携するかといった人的要素、収支予測や開発予算の金銭的要素、さらには競合と差別化してどのように販売するかといった戦略的要素を整理し、仮説として計画の検証・評価ができるようにします。

【実際の事例】
6次産業化プランナーの初の仕事として、商品開発「のむジュレ」の立案(事業計画)のために、市場調査、クライアントの強み・弱みの整理をして、強みを活かした形で全国に誇れる商品コンセプト立案しました。

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商品の具体的な規格設計・デザインなど、すべての開発プロセスに関わり、具体的な選択肢・判断根拠を示しながら、従業員の人材育成も含めて指導・助言を行いました。

この商品は、初めは女性社員の発案で試作が始まり、第一弾は透明なチューブタイプで、原材料も女性の美容も意識してコラーゲン入りでした。

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高知県アンテナショップのテストマーケティングや取引先・バイヤーの評価もまずまずでしたが、容器の吸い口が太く、女性が最後まで吸えない点や、コラーゲンは「おいしい・あんしん」を企業理念とする岡林農園にとっては「らしくない」ということで、原材料・パッケージも含めて全面改良という仕事でした。

まず、全面改良にあたっての商品企画書及び事業計画を作成するにあたって、市場調査が絶対に必要ですが、予算がなかったため、別の仕事・出張のついでに、大阪・東京の複数の店舗を調査し、類似商品・競合商品を調べ上げました。

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そして、高知県産柑橘果汁を活かした国産原材料100%・無添加の飲む寒天ゼリー「のむジュレ」のコンセプトを提案し、その結果、初年度で10万本を超える大ヒット商品を生み出しました。

参考:当初想定した商品企画・コンセプト

①開発商品
高知特産柑橘果汁を使った飲むゼリーの開発(当初は文旦、生姜の2種類)

②コンセプト
ちょっと贅沢な大人のスイーツとしての飲むタイプのジュレ
(これまでの飲むゼリーの概念を変える夏場の新しいスイーツの提案)

③ターゲット
美容・ダイエット・健康に気を使っている30代女性(特に働く女性に)

④差別化要因
国産原材料100%・無添加(天然果汁・寒天・てんさい糖の3種類)
「寒天でジュレ状にする・ゲル化剤不使用」により、消費者の安全・安心志向に対応。

⑤パッケージ案
既存のチューブタイプでなく、中身が見える透明のカップにして、ストローで飲んでもらう。原材料が自然なもの100%なので天然の色を見せる。

⑥商品仕様案
内容量は飲みきりサイズ180ml程度、賞味期限は常温で6ヵ月を想定

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以上で第1回目を終わります。

みなさん、第1回目の「商品の企画・設計・開発が主体的にできるか?」はいかがだったでしょうか。

一般的な理論や手法を知った上で、どう実践・応用につなげるか。実際はやりながら、トライ&エラーの繰り返しです。私も試行錯誤でした。

その時に、自分一人で悩まず、相談できる人やその道の専門家に気軽に質問できればいいですね。

私のnoteでは、将来的には、同じ志の方が集まって、気軽に質問や意見交換ができるコミュニティ(サークル)をつくって、みんなの力で問題解決できる環境をつくっていきたいと思っています。

もしよかったら、次回、第2回「商品の開発にあたり自社の強みを活用できるか?」もご覧ください。そして、コミュニティをつくるために、ぜひ仲間になってください。フォローよろしくお願いします!


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