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療育という仕事 園庭のパワースポット

小さな子どもたちと接していると、不思議な世界に出会うことがある。

目や耳では捉えられない世界。

私は子どもたちへの療育の仕事に就いる。そんな不思議な世界に触れ、かれこれ10数年になる。

まず、療育とは何か。
心身に障がいをもつ児童の発達を促し、社会的自立を目指すための医療的、教育的アプローチをいう。

私のいる施設では、幼稚園や保育園のように遊びや集団活動をする中で療育をしている。

子どもたちにとって、家族の次に一緒にいる時間が長いのが、私のような現場の先生じゃないかな…

だから、
丁寧に寄り添いたいと思っている。
難しいこと、いっぱいあるけど、
この仕事が好きなので。
私にとってココがパワースポットなので。



子どもたちに人気の樹木が園庭にある。

隅にすっと立っている名前もわからない木だ。実がなるでも花が咲くでもなく、いつも静かに佇んでいる。
人気といっても木登りしたりするわけではない。
木の幹に手のひらを当てるのだ。
それも何人も、何代も。

かわいい指をそろえて、そっと触れている。
初めてこの光景を見た時、虫でも見つけたのかと思った。でも違った。
樹液?穴ぼこ?どれも違った。

私もしゃがんで手を当ててみた。
「ね!わかるでしょ!」と言っているかのような目で、子どもが私の顔を覗く。
私にはまだわからないんだけど、何かあるんだね。
しばらく一緒に手を当てていた。
園庭のパワースポット。
手のひらがじんわり温かくなった。

同じことが他の子でも起こる。
同じ樹木で。


中には私の手の位置や形を直してくれる子がいる。
手を触れる正しい場所があるのだ。
園庭のパワースポット。

ある時、木に触れる子どもたちに共通点があることに気がついた。

言葉をまだ発しないこと。

言葉以外のコミュニケーションを楽しんでいるのかな。
大人は言葉に頼り過ぎてるところがあるからね。
君たちの世界、尊いね。


子どもの世界は大人が思うより広い


この「大人が思う」が曲者だ。
積み重なった固定観念を外し、子どもの本質を感じていきたい。
でも手放すことって本当に難しい。

気づいたら手放すことをコツコツやっていこうかな。
私の内側にも向き合っていこう。


そういえば今年度はあのパワースポットにくる子がいないなぁ、と思っていた。
そしたら先日、現れた。

偶然かなと思って注意深くその子をみていると、指をそろえた手のひらを優しく木に当てていた。
私もそっと隣で手を当てた。

君も知ってるんだね。
園庭のパワースポット。

身体の衝動や緊張が強く、リラックスして遊びや活動に参加することが難しい、そんな特性をもつ君。

でも木に触れているうちに、だんだんと身体の力が抜けていくのがわかる。私と目を合わせることもできたね。

言葉はなくても伝わることってあるね
見えなくてもわかることってあるね
知らなくても知ってることってあるね

やっぱり子どもはすごい。
特に療育の場で出会う子どもたちは本当にピュアで魂が美しい。


園庭の樹木のようになりたいな。

でっかいこと言ったな、私。

一緒にいて、子どもたちがリラックスできるような、そんな存在になりたい。

2023年の風に背中を押されて、そんなことを思う。
でっかいことに向かって、一歩一歩すすんでいこ。

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