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【ショートショート】 #36 大げさファクトリ―

 「重大発表」とか「○○ヤバいです」とかそういう言葉はある国の工場で作られている事をご存じでしょうか?本日はその工場に行って社会見学をしたいと思います。社名は「大げさファクトリー」創業者は虚栄心という人です。

大げさな表示は自然の生成物ではなく、人の感情が生み出した怪物表現の一つでその効力は結構あります。何故このような表現を生み出しているのか、それを作っている現場にいる人にインタビューしてみましょう。

「こんにちは。事前に伝えておいた社会見学の者ですが」 

「ああ、これはこれは」 

 現場で作業する人たちは大きなマジックペンや蛍光ペン。黒ペンキや白ペンキを持って看板にいつもの文字を塗っていた。

「この作業は大げさな表現を作っているのでしょうか?」

「そうですね。人目に付くこと。それをしなければ社長の虚栄心は満足しないので(笑)正しい情報であるかよりも、こちらの事を本当に見て欲しいかどうかをわかりやすく伝えるには必要なことです」

 そう言いながら笑う現場責任者の「見栄張る」さん。35歳はこの仕事に就いて8年目になる。

「当初は反対されました。親とか友人とかにね。でも今はこの仕事に誇りをもってやっています」

「一番の喜びは何ですか?」

「そうですね・・・中身が無いのに外見だけ衝撃的であれば大抵色んな注目を浴びることが出来ます。これは動画とかの内容を考えてる虚栄心社長よりも我々の方が力があるという事ですね」

「つまり、この会社も長くは続かないという事ですよ」

見栄張るさんは今年の秋にこの会社を退職し、別の会社に行くことが決まっている。

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