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【ショートショート】#19 光の倒し方


 かつての昔、この国には勇者が居たらしい。その勇者は光の魔王と呼ばれる存在を打ち砕き、この地に平和をもたらした。

「それも一時的なね」

 俺はこの国に生まれて、この話を何回も聞いてきた。けれどもおかしい話になっている。
普通は逆じゃないのか?悪魔が闇で正義が光。そういう事に決まっているんじゃないのか?その疑問を自分の彼女にぶつけると、彼女は不機嫌な目で俺に言う。

「簡単じゃないの、勝った方が勝手に光を名乗り出れば、そっちが光になるのよ」

 光の強さは驚異的。だけど、長く続く方は実は暗闇の方。

だって、暗闇はエネルギーがいらないじゃん?押し入れに入ってごらん。そこはずっと暗闇の中。例えば懐中電灯をもって入れば明るいけど、でも電池が切れれば暗闇。

「だから、魔王が光ってのは間違ってないのかもね。光は一時的なモノだから。エネルギーが必要だから」

勇者は闇属性でいいのかもしれない。そっちの方がエコでしょ?最近流行りの地球環境にも優しいじゃん。

そうか、と俺は考え直して、つけて来たゲーム機の電源をオフにした。

これで、闇の勇者が勝つだろう。

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