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【ショートショート】#18 ソシャゲのキャラクター

 私の名前は「リオネグレス」私がこの世に生まれ落ちたのは簡単な理由で、今流行りのソーシャルゲームのキャラクターとして作られた。

強さ的にはいわゆる「玄人向けの微妙なキャラ」という立ち位置であるが、仕方がない。ストーリー進行には必要なキャラで、私は主人公に「魔法の杖」を授けるという役目がある。しかもこれはまだ公開されていないが、ヒロインの幼馴染であり、ひょんなことから生きる道を間違えて悪の道を歩くことになったのだ。

「というキャラだからスキ・キライが別れてしまう」

 別段強くも無いが、弱くも無い。しかし、使えるキャラと金額は同じ。そこだけは平等だ。

「どうなの?そういう気分は」

 話しかけてきたのは「人気第2位」のキャラクター「レトリア」絵も性能も段違いで初心者からガチ攻略している人たちを含めて必ずパーティーに編入されているし、彼女を取るためにリセマラまで奨励されている。

「同じ金額で、同じ性能。これが理想。でもそうじゃない。同じ金額で性能差が出る」

私はふふっと笑ってレトリアを見つめた。

「気にしてませんよ?別に。不公平だなんて思ったことも有りません」

 しかし、ネットではせっかくのガチャチケットでリオネグレスを引いてしまった人たちの苦痛の声が響いていた。

「・・・そう、気にしてないならいいけど」

「気にしていない理由はですね、人は絶対に平等なんか作り出せない。ってことを知っているからですかね」

今日もどこかで人の世界は「不平等」で誰かが殺されている。

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