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【ショートショート】 #24 てんびん、はかりごと

私は天使でもありますので、生まれたあなたに選ぶ権利がそこに有ります。

 一つは「このままのお父さん、お母さんに育てられる」という選択です。お父さんは年収500万くらい。お母さんはパートで年収100万くらい。合わせて年収600万円の家庭からスタートです。

「ですが少し難儀なことも有ります。あなたが住む場所には大学が有りません。なので将来的に大学に行くのであれば一人暮らしをしなければいけません」

「それにあなたは天才ではありません。秀才の可能性はありますが、受験勉強を頑張らないとなりません。授業を聞いているだけではテストでいい点を取ることは出来ないでしょう」

「だから年収が十分だとしても、あなたはバイトや奨学金を借りなければいけません。さらには受験やスポーツにおいてもあなたが世間一般的に成功できるかどうかは、あなた自身にかかっています」

「ですが、両親の年収。それから祖父母。街の状態。いずれも良好でしょう。もっともその範囲内でやりくりしなければいけないのは明白なのですがね」

天使は私の目の前に天秤を持ってきた。

「いま天使の私が言い並べたことをこっちの右側に置きます」

 天使は後ろの方から別の黒い重りを持ってきて左側に置いた。すると天秤は見事に水平を保った。気になった私はその黒い重りの正体を聞いた。

「ああ、これですか・・・こちらはもう一つの選択肢ですよ」

天使は黒い重りを指さした。

「こっちは貴女の人生を3億円で私に売る。と言う物です」

私は少し、視線を落としてしまった。

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