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【ショートショート】 #35 失ったもの達へ

しばしば期待される。いつだって期待される。待ち望まれている反応がある。決まりきった流れがある。

「それって私じゃなくても良くない?」

 学生時代に教室の窓から外を眺めて。自由な鳥を見ていると、みんなと同じがとても嫌で、みんなと一緒に違和感を感じる。

「私は私の道を歩きたい」

 そう思うようになって・・・

「それからそれから?」

 だから私は違う道を歩いた。みんなが不可能だって、みんながやらないような場所で自分の価値を出そうってやり続けた。

「それは大変だったんじゃない?」

 舗装されている道じゃなくて、悪路でもなくて、そこには道が全くない場所。そこをふらふらと夜の街を歩いている酔っぱらいよりも頼りない千鳥足で。

やっとつかんだこの世界。

「でも、それを捨てようとしてるでしょ?」

私は声のする方を見れなかった。

自覚はあるんだ。自覚はある。

これをやったら今までの事が取り返しのつかないことになるってことは知っている。でも私は涙を流してこう言い放つ。

「頑張ってて偉いねって言葉には勝てなかったよ」

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