【ショートショート】#16 干されアイドル「私の為に」
限界点が近づいてきた。自分の中でもわかっていた。年齢25歳。アイドルとしてやっていくとして微妙なラインに立たされた。そのラインの上で静かに呼吸を繰り返し、ネットの世界の片隅で、いつまでも光らないまま。
「このまま終わるのか?」
そう思う日々はとても苦しくて、苦くて辛い。
動画サイトを開いてみても、SNSを覗いてみても、羨ましくなるようなそんな結果が目の前に広がっていた。
ベッドに寝そべり鬱屈な日々を過ごす。やるべきことは何でもやった。なんでもやったが
「結果が伴わなければ、それを努力と軽率に呼ぶことも出来ない」
自分に名前を付けるのは親だけども、自分自身に名前を付けるのは親ではなく自分。そして自分の結果に名前を付けるのは「他人」
「他人はファンだ」
他人に認められなければどうしたって輝けない。そんなことはわかっている。だから限界点が近寄ってきた。近寄ってくる。昼と夜を越えに越えて、気が付けば早数年が経ち、色んな物が追い付かなくなってきた。
そんなある日の事、私の元へ手紙が届いた。きっと死神からだろう。
「あなたはアイドルに成れません。ですが、アイドル消費は出来ます。うちの事務所に来ませんか?」
私は手にした手紙を握り込み、歯を食いしばって前を見た。
「消費されに行きましょう」
私は部屋を後にした。
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