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【800字 ショートショート】#51あるエンジニアの戯言

「機械は人の設計通りに動いて、人の予想通りに壊れる」ことが多いです。予想外に壊れるのは設計ミスか正しい使用をしなかったからに付きます。大抵の機械。この場合は「人が作ったもの」になりますが、これらは全て壊れます。壊れるからこそ、更新や修理が必要で、そういう物なのです。

「人は神様じゃありませんから、壊れる物を作るんです」

「神様は人ではないので、生きてから死ぬ物を作ったのかもしれません」

 まあ、そんな戯言は置いておいて、私が言いたいことは壊れるということに本質が眠っています。壊れないことを前提にして物を作る人なんかいません。だからみなこう考えるわけです。

「こうすれば壊れにくく、長い年月使えるだろう」

なかなかに壊れない物を作りたいということはいつか壊れてしまう物を作っているということになります。永久に壊れない物は人類にとって夢なのかもしれませんが、そんなものは存在しません。

 ここに木材があります。これが〝このままの姿〟であり続けることは世界にとって良くないようで、これを放置しておくと白アリが寄ってくるか、カビが生えます。でも、それって当たり前の話で、なにせ倒れた木がそのままの形で残ることは不自然だからです。この木材を庭に放置すればすぐに分解が始まります。我々は自然の中にあるものを、不自然に使って世の中を便利に豊かにしてきました。

 だから壊れることは当たり前のことなのです。

「じゃあ、壊れたら交換しましょう」

 さて、人は物でしょうか?それとも生き物でしょうか?

それとも、何なのでしょうね?

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