【ショートショート】#7 夢の続きを売りましょう
「成りたいものに成れなかったあなたが続きをするのは?」
RPGのゲームをクリアした後、世界に平和が訪れる。でも僕は既に救った世界のダンジョンの片隅で未だ「何か無いのか」と隠し要素を探すことがある。多分、経験がある人も居るだろう。続きが見てみたい。終わって欲しくないと。
でも、ゲームのシナリオはとっくの昔にクリアして、目的は達成されている。
ふと顔を上げると深夜の電車の窓ガラスにスーツ姿の自分が映っている。このまま、このままが続いていく。思い描いた未来は何だったのか?本当はこんなんじゃない。きっともっとキラキラとした世界に生きていたかったと思うのだろう。
スマホに目を落とす。そこにはキラキラな世界で踊っている人たちが見えている。
「私達を応援してください!あなた達に夢の続きを売ります!」
そういう言葉が聞こえてくる。その時ばかりは何とも思っていなかったが、夢の続き、夢の続きが買える。と思うと何故だかお金を払いたくなってきた。
続きが見てみたい。でもとっくの昔に自分の番は過ぎ去って。とっくの昔に年を取り、くだらない会社に命を懸けて、自分の人生には何も賭けていない。
掛け値なしの人生に、賭けられる商品を目の前に持って来られたら、それは掛けたくなるだろう。
その日を境に僕はその「どこかの誰かに賭ける」ことになる。どこかの誰かをずっと追いかけて、追いかけて。見続けて応援し続けて・・・・。
わずか2年後。その人は目の前から消えていった。
売っていたのは「夢の続き」なんかじゃなかった。買っていたのは「あの時の続き」じゃなかった。
ただ、それは「見たくない未来」を買っていただけだったんだ。
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