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【鳥取県】で、登山初心者が日本一危険な国宝に挑戦する旅

突然だが、私はめちゃくちゃ運動が苦手だ。物心ついた頃には体が硬すぎて前屈は足首にも届かないレベル。小中学生の体育はダメすぎて、他の科目は比較的真面目に授業を受けていたこともあって5が多い中、3以外取ったことがない。最近は肩の痛みが地獄すぎてジムには行くようになったが、運動という運動をしてこなかった人生である。

そんなどう考えても運動とは無縁の私だが、リスクを冒してでも行ってみたかったところ、それは「三徳寺投入堂」である。

三徳寺投入堂は、「世界一危険な国宝」で有名で、鳥取県の深い深い山の中の、切り立つ崖に造られた謎の建造物。私がこの存在を知ったのは、大好きな現代アーティスト山口晃さんが日本建築集中講義というエッセイ集で実際に訪れていたということから。

投入堂はこの単行本の、第4回に登場する。建築家の藤森さんと一緒に訪問する珍道中をエッセイ形式でまとめた本なのだが、国宝を見るまでにわらじを履かないといけないとか、切り立つ崖を登らないといけないとか何やら様子がおかしい。そしてその最終地点である投入堂が本当に素晴らしいということを聞き、これはぜひ行かねばということで鳥取旅のハイライトとして訪問を決めた。


訪問難易度が高すぎる国宝

この投入堂、訪問難易度がとにかく高いのが1つのポイント。
まずそもそも東京から鳥取というのが心理的距離が遠すぎる。飛行機で2時間ちょっとではあるものの、なかなか旅行先に選びにくい。そして、意を決して鳥取に降り立ってからもめちゃくちゃ長い。鳥取空港から倉吉まで50分ほど電車に揺られ、さらに倉吉駅からバスで40分三徳山の山奥に入ることでようやく入り口に着く。(レンタカーで行くのが一番賢そうだが、ペーパードライバーなので公共交通に頼るしかない。悲しい。)

しかもこの投入堂、雨だと危険で入山禁止になってしまうため、逐一公式HPの入山可否情報を確認しなければいけない。私が訪問した際は更新日が3日前のままだったのでめちゃくちゃ不安なまま訪問したが、晴れていたので無事入山することができた。ただし、入山可能時間は午前8時〜15時で、下山リミットが16時半。バスに乗って三徳山駐車場に着いたのが14時すぎくらいだったので2時間で帰ってこねばならないというプレッシャーがすごかった。

ただ色々心配していてもしょうがない。せっかくここまできたのだからと、いよいよ入山。私は初めからわらじ体験をする気満々できたので、履き物は普段履いているスニーカー。案の定靴底がギザギザになっているタイプのスニーカーでないと靴裏チェックが通らないそうで、課金をして初わらじに履き替え(ただしわらじ入山の人はほとんどいなかった。恥ずかしい///)、参拝のための輪袈裟を下げる。ちなみに現地で山口晃さんの書き下ろしイラストが貼ってあるので、これからとんでもない地獄が待ち構えていることも忘れて一人で大盛り上がりした。

初草鞋!これを履きたくてここまできた。
山口晃さんの書き下ろしイラスト。現地に来た感があって、一人で盛り上がる。

勇気が試される、難所の数々を超える修行の登山

もともとこの三徳山は山伏たちの修業の聖地だったようで一般の観光地のような舗装された綺麗な登山道はない。階段…とかそういう概念はない。自然の木の根を、石のほんの窪みを踏み場に登っていくのだ。なので先に断っておくが、登山中危険すぎてほとんど写真を撮れていない。どれだけ危険な雰囲気なのかはYAMAPに数々の登山者が写真をあげているのでそちらを気になる方はご参考までに。

現世とあの世を分けるかのような赤い橋。この先から地獄が始まる。

標高900mのそこまで高くない山ではあるものの、どれだけハードルが高いかというと、大きく迂回するのではなく断崖絶壁を結構ストレートでまっすぐ上がっていく。なので、写真のようななかなかの傾斜の岩を登る必要が出てくる。それも一度や二度ではない。何箇所もだ。

また、これは果たして順路???という謎の巨石を超えていくシーンもある。帰り道にすれ違った方で結構途中で断念してきた道を戻られる方も3組くらい見た。それくらい崖を目の前にすると、若干立ち尽くしてしまうような恐怖感を感じる難易度の場所がある。

引き返そうか一瞬悩む鎖場。待機場所からしてそもそも危ない。

ただし、この傾斜を超えたものだけが見られる景色がある。投入堂までの道中、巨大な岩場を越えると「文殊堂」というお堂があり、そこからは下記写真のような大パノラマを拝むことができる。ただしここは道幅が大人1人分くらいしかないのと、もちろん柵なんて概念がない。なので、高所が割と得意な人でも背筋にサッと冷たいものが走るようなスリルを感じることができる。「文殊堂」のような大パノラマが楽しめる経由地点はもう1箇所あるので、ここで諦めた方ももう一度トライできるようになっている(ちなみにもう1箇所もここと同じくらい怖い)

文殊堂の大パノラマ!写真を撮るのもヒヤヒヤする。

怖いと言えば、もう一つ。こちら投入堂の少し手前にはまっているお堂。実は、順路としてこのお堂の裏側を通って表に出てこないといけない胎内潜りスポットなのだが、この裏が結構暗くて何も見えない。ここまでくると投入堂はもう目と鼻の先なので、諦めないで進ことが大事。

こちらは鎌倉時代建造。投入堂に触発されたのだろうか。

そして胎内くぐりを終えるともう3、4分くらいで投入堂に到達できる。
数々の試練をくぐり抜け、到達した投入堂は想像の何倍も美しい!!!!
ものすごい傾斜の崖にまっすぐ立ち上がるお堂は本当に投げ入れたとしか思えない場所に存在する。写真で見ると遠く感じるのだが、実際は想像より近くでお堂を鑑賞することができる。雨の日で入山NGの日は下界の望遠鏡から覗くことができる(下山後見に行った)のだが、やはり生の投入堂は何にも変え難い圧倒的な迫力があった。平安時代にできたというのだから、その技術力の高さと信仰心になんだか神聖な気持ちになる。

崖の上にポーンと投げ入れられたのでは!?ということから、投入堂。ネーミング可愛い。

ということで、合計2時間の大修行は無事終了。結果として、行きで1時間20分、帰りで40分くらいで帰ってくることができた。帰りは一部行きとは異なるルートを経由して帰るものの、知っている道なのでやや気持ち的には楽に感じた。

行ってみてわかったこととしては、軍手、大きめの水、大きめのタオルは必須。そして、意外とスニーカーよりわらじの方が滑らないので初心者は恥ずかしいのを堪えて裸足にわらじが安全であること。あと帰ってくると洋服が絞れるくらい滝汗を吸い込んでいるので、着替えを持ってくるのは非常に大事だということがわかった。

無事帰還し、御朱印をいただく。本当に生きて帰ってこれてよかった。

ということで結論、投入堂修行の旅、本当に本当に行くことができてよかった。登山初心者的には、やはり行きがとんでもなくつらい。とにかく山登りしたことのない人からすると、ここ人間が登れるん?とひよってしまうようなとんでもない順路が多い。ひよって何度もやめようかと道中思ったし、怖いという気持ちは上りがらも消えなかった。ただし、そこを1つずつ確実に踏み締めて超えることができるとなんだか少し成長した気がする。そしてゴールの投入堂はやはり映像では伝えられない感動があった。

人生に一度は投入堂登山、挑戦してみてはいかがだろうか。

#鳥取県 #一人旅 #投入堂 #登山 #国宝 #旅行 #旅

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