娘の相談を受けたら子どもになってた
「先生、娘の相談を聞いてほしいんだけど」
仕事の昼休み、同僚の女性から声をかけられた。
ぼくの仕事は先生と呼ばれる職種ではない。社内SEだ。
でも時々「先生」と呼ばれることがある。
社内で先生と声をかけられて聞かれることといえば…
「パソコンでも買うんですか?」
「なんで何も言ってないのにわかるの!?」
数えきれないほど聞かれた質問なので、話の流れは決めている。
パソコンの相談を受けたら
パソコンでなにをしたいか聞く。
↓
たいていはネット、メール、今ならZoomをしたいといったところ。
↓
会社で使っているパソコンの性能と値段を伝えて、それを参考に自分で探してもらう。内容によっては「スマホでいけますよ」と伝えることもある。
というのも、上に挙げた用途であれば世に出ているパソコンかスマホで十分まかなえるからだ。
社内だと仕事との線引きがむずかしくなるため、業務上で相談者との関係に影響しないところで話を止めている。
経験上、親身になり過ぎると面倒なことがあった。
会社の人ではないが、ひどかったのは「言う通りのパソコンを買ったけど、もみもみ100分っていうポップアップが出てきた。すぐに消したけど、不安。大丈夫か?」という質問。
そりゃあんたのせいでしょや。
今回の相談者の同僚は、
「娘が大学生になるからパソコンを買うんだけど、建築の学部だからCADが必要らしくて。どんなパソコンを買ったらいい?」
とのこと。
利用用途が少し特殊。
自分も娘がいるので、娘と言われると弱い。
相談者の人となり
先にこの相談者の人となりを話しておく。
相談者は少し勢いのある天然要素を持っている。
例えば、
使い終わった書類のホチキスの針をひとつひとつ外し、プラスチックケースに入れて保管している。
万が一不審者が来たときに投げつけて武器にするらしい。
ある時は、
「飛行機が飛んでる音がすると飛行機見たくならない?わくわくしない?」
といい、時々窓に駆け寄り飛行機を見に行く。注意するけど。
またある時は、
酔っぱらってお店近くに置かれていた固定されてない観葉植物に寄りかかって倒し、倒れた観葉植物がぼくに見事激突した。本人はまったく覚えてなかったけど。
まだまだエピソードはあるが、話がそれたので戻す。
パソコンのお話
まずはパソコンの基本的なことを紙に書きながら伝えた。
「CPUってなに?」
「SSDって、またアルファベット3文字。ストレージって?」
「メモリって思い出?」
前半にたたみかけるな。待て待て。
まずは話を聞いてくれ。
「パソコンを机で作業している人に例えると、CPUは作業している人のこと、ハードディスクは机の引き出し、メモリは机の広さのこと。」
「グラフィックボードって?」
「絵を描く力をアップさせる部品ですね。例えると絵の具とか、色えんぴつ。CADならクアドロ(Quadro)というグラフィックボードと一番相性が良いので、クアドロを選んでくださいね。」
一通り説明したところでふと思い返すと、パソコンに興味のない人がパソコンを買うってなかなかハードモードだ。
世に浸透したパソコンだが、これだけ身近だけどよくわからない電化製品はないだろう。パソコンの寿命はだいたい5年。他の電化製品より寿命が比較的短いのに値段が高い。
動画編集やゲーム、音楽制作など、パソコンでできることが多いから、パソコンの種類が多種になる。
その人にピッタリなパソコンを教えてくれる「パソコン選定AI」が早く出てきてほしい。
どうにかこうにか伝えて、数日後。
「この間は相談にのってくれてありがとう!娘がお礼にお菓子をつくったの」
「そんなお気遣いはいいのに。せっかくなのでお言葉に甘えていただきます」
パクっ
「お。食べたね!食べたんだからもうちょっとパソコンでわからないとこ教えてください」
やられた。
ぼくが甘い物好きなことを知っていたか。
一瞬でもゴルゴ13を自分に憑依させれば防げたのに。
Word、ExcelのOffice製品は大学を通して買った方が安い、アンチウィルスは…と疑問を解消した。
後日談
娘さんが大学のCADの課題をするたびに、パソコンが快適に動いて上機嫌らしい。
気に入り過ぎた娘さんは、パソコンに『おおやま』という名前をつけたらしく、
「うちの子のおおやまは優秀で~」
と家族に話しているとのこと。
光栄です。もっとほめてくれ。
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