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数年ぶりに「何かができた」と思った

2022年6月26日(日) 🌘 26.6 ☀️ 4:27-19:01
24:夏至  72:菖蒲華(あやめはなさく)

 梅雨の概念があいまいになっているのだと思う。今日の空は完全に夏のそれだった。春も梅雨のような天気だったのだから、これで帳尻があったのではないか。たった2週間くらいの短い梅雨だった。

 私の人生は、うまくいかないことだらけだと思えば、ほとんどのことがうまくいっていない。

 何か職業につこうと思っていたのに、45歳にもなって何にもなれなかった。30代で病気になって、社会人生活の半分以上が年金、健保「3号」のまま過ぎ、おそらく最後までこのまま続こうとしている。

 猫は私が横を通るとまだビクッとして逃げるし、買ったねこハウスにはいっこうに入らない。爪研ぎを置いてもずっとヨガマットで爪を研がれる。友達はどんどん減っていく。電車にもまともに乗れないのに、車の運転もできない。練習してもしてもできない。身体はいつもどこか痛くて、家事とバイトと身体のケアをしていると1日が終わる。創作などやりたいことは何もできない。しかし子供がいなくてパート勤めなので、世間からはヒマで優雅だと思われる。夫と仲の良い自立した夫婦でいたいのに、毎日イライラしている。

 インスタもツイッターもフォロワーは増えない。毎度新月の日にアファメーションを書いているが、大小ほとんどのことは何年たっても叶わない。にもかかわらず書き続けることをやめられない。瞑想したって、高いカウンセリングを受けたって、地下鉄が駅間で止まりそうになると死にかける。山手線の内側に行けない。通勤電車に乗れないまま13年。ありとあらゆる治療が効かない。慢性的に長く重く不安障害の人は何人も知っているが、こんなに特定の恐怖症がしつこく、かつ調子の良し悪しにかかわらずずっと悪いままの人をほかに知らない。

 おなかの調子がわるい。いっそのこと下痢すればいいのにできない。髪の毛はてっぺんはパサパサに浮き、下のほうはどれだけアイロンでのばしてもうねりまくっていっこうにまっすぐにならない。本棚は夫が一人暮らしの時に使っていた安い無印のパルプボード。かっこいい木製のものにしたいが、お金と労力を考えると踏み切れないまま15年がたった。食品ストッカーに使っているワゴンも、ちゃんとしたものを買いたいと思いながら、高さで希望と一致するものが見つからず、夫が一人暮らしの頃から使っていたポリプロピレン製のものに布をかけて使っている。ああ、もういやだ。

 大小さまざまの、何年たっても解決しない問題が山積みの日々のなかで、実はきのう、ひとつだけ「うまくいった」ことがあった。
  台所のレンジ台兼、食器と食材入れに、帆布の引き出しがついた無印のラックを長年使っている。ラック自体はスチールと板を組み合わせたもので特に劣化はしていないのだが、なにせ生成りの帆布、電子レンジからのもろもろの出し入れの時にこぼれたものがかかりやすく、茶色い汚れだらけになっていた。買い換えようとも思うが、だめなのは帆布部分だけなのでもったいないし、たとえ別のものに買い換えるとして、適当なものが見つけられない。見つけられるはずがないと探す前からあきらめてしてしまう。

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 帆布部分だけ何かを塗って染められないか? と思いついた。なにせ引き出しなので、普通の布のように浸して「染め」をすることは難しい。では、筆やペンで染められないか? そういった細かいハンドメイド用の染料はあるが、引き出しは4段あってけっこうな面積がある。きれいに塗り切れる気がしない。茶や紺など濃い色で塗っても汚れだけ浮き出したり、ムラになったりして、今の状態よりももっと見ているのが苦痛な仕上がりになるような気しかしない。

 どのように思いついたのか思い出せないのだが、ふと、刷毛でペンキを塗ってはどうだ? と思った。ホームセンターへ行くか? 面倒くさい。近くにない。マスキングしたりなどは大ごとだし、飛び散ったりしたらまた夫に何か言われる。無理か。いや、もしかして100円ショップに気が利いたものがあるのではないか? ネットで調べたところあった! 水性の、ちょっとした刷毛やスポンジでも塗れるペンキが。白や生成りのそれが。

 仕事帰りにダイソーへ行く。種類は少ないが小さなサプリメントくらいのボトルに入ったペンキはあった。生成りはなかったので白を買った。刷毛も売っていたので買った。これでなんとなかなってくれ。

 夕飯後の隙間時間に、一番下の段の目立たないところに塗ってみる。色はすっとなじんだし、汚れは隠れた! 明るい時間に見ると違うかもしれないが、もしかしてこれはうまくいくかもしれない。一番下の段だけ、全体をざっ、ざっとラフに塗ってみる。見事に茶色い汚れが隠れて白くなっていく。しかもその白さが不自然ではない。乾けば手にもつかない。やった、やった、「うまくいった」!

 少しずつ塗り進め、翌日の朝、4段分の引き出しすべてを塗れた。ラフに塗ったので近寄れば刷毛の跡は見えるが、それはそれで味わいの範疇だ。あまりべったり重くしたくはない。かくして、どこへ出しても恥ずかしくないくらい、きれいな帆布の引き出しが蘇った。

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 自分で調べて、買って、試して、うまくいった。これだけの経験が、いったい何年ぶりか。過去に私は「台所のレンジ台をなんとかする」と、アファメーションもしていた。私は、手帳のその部分に赤いペンで丸をつけた。願い事がかなったことなど、もう何年も、何年もなかった気がする。

 そして自分をしばりつけていた大きな部分が、実は、「夫にどう思われるか」「一人で決める勇気がない」だったことにも気がついた。

 強引でも反対されなければ、やってみよう。キッチンワゴンのほうも新しいものを探してみようか。たぶん数千円。「私にもできた」の実感を得られるなら安いものだ。

 そして、「私にもできた」ことが本当にこの人生にはなかったのか、毎日丹念に探してみようと思う。 

 

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